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【読書感想】トランプ大統領の衝撃

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トランプ大統領の衝撃 (幻冬舎新書)

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トランプ大統領の衝撃 (幻冬舎新書)

内容紹介
在米ジャーナリストが選挙後の最新情勢をもとに分析。

トランプ論の決定版!
ドナルド・トランプが第45代アメリカ大統領に就任する。
ヒラリー・クリントンとの「史上最低の泥仕合」によって国民が大きく分断されたアメリカ社会を、「偉大なアメリカ」に再生できるのか?
屈指のアメリカ・ウォッチャーが、新政権のリスクとチャンスを見極め、日本の取るべき道を示す。

 おお、こんなに早く「トランプ大統領本」が出るのか、以前から「トランプネタ」が書かれていたものはさておき、よくこの短期間で書き上げたものだなあ……

 と思ったのですが、読んでみると、この新書、著者がアメリカ大統領選挙について選挙期間中から定期的にレポートしていたものをまとめて収録したものなのです。

 だからこそ、読んでいると、リアルタイムでの「ドナルド・トランプに対するメディアの見かた、扱いかた」みたいなものがわかって、興味深いところはあるんですよね。

 これ、本来は「アメリカ大統領選挙〜ヒラリー・クリントン新大統領のアメリカ」みたいなタイトルで出版される予定だったのではなかろうか。

 そのくらい、トランプさんはギリギリまで「泡沫候補」「ネタ候補」的な扱いを受けているのです。

 ある意味、マック赤坂さんが大統領になるような「アメリカン・ドリーム」なのかもしれません。

 でもまあ、橋下徹さんや東国原さんにだって、日本の総理大臣になる目もあったわけですから、他人事だとも言いきれないわけで。

 著者は、トランプさんが当選を受けて行なった「勝利宣言演説」について、こんな指摘をしています。

 もう1つ注目すべき点は、就任後に実行する政策について2点だけ指摘していたということだ。1つは「空港や道路など全国のインフラ整備を充実する」ということ、そしてもう1つは「退役軍人へのケアを充実する」というものだった。この場で、この2点だけを述べたということは、極めて興味深い。

 まず、インフラ整備と退役軍人へのケアというのは、アメリカの対立軸の中では、どちらかと言えば民主党の「領分」に属する。そこからは、クラシックな共和党の「小さな政府論」とは一線を画するというニュアンス、自分は自分らしい独自のスタンスで政治を行なうという決意が汲み取れた。

 また、「移民排斥」であるとか「アメリカ・ファーストの超孤立主義」といったイデオロギー的な言辞については、就任後は「比喩」の世界から「現実」の世界への歩み寄りをする用意があることを示したと言ったら、褒め過ぎであろうか。

 興味深いのは、この「インフラ整備」というメッセージに対して、世界のビジネス界が機敏な反応を見せたことだ。パニックを起こして暴落した東京市場とは違って、時差の関係でこれを引き継いだ欧州市場は、1%から2%の下げで済んだし、一夜明けたニューヨーク市場に至っては、「トランプ政権はビジネスにフレンドリー」だとして、反対に上昇しているのである。

 僕もあの演説を聞きながら「メキシコとの国境に壁を!」はやらないのかよ、とか思っていたのですが、この本で流れを追っていくと、選挙戦の終盤では、トランプ候補はかなり「暴言」を控えて、現実路線に転換していたことがわかります。

 あの演説が「当選したから急に現実路線になった」と感じたのは、日本で断片的にしかみていなかったから、なんですね。

 もっとも、会場のちょっと戸惑ったというか、盛り上がりどころを見失ってしまったような反応をみると、多くの支持者にとってもやや肩すかしぎみではあったのかもしれませんが。

 2016年1月の段階で、著者はこう書いています。

 では、そのトランプは仮に共和党ジャックに成功したとして、本選で勝てるのだろうか。私はそれは難しいと思う。「過去の破壊と現在のアメリカへの怒り」という心情は、全国レベルでは決して多数派にはならないからだ。まず、オバマ支持層のように、「緩やかな景気回復と、格差社会の中でのトリクルダウン」で何とかしてゆくのが「成熟国家アメリカの現在」だという層は、相当に多数派として存在する。

 また、保守陣営の中で、「小さな政府論」で財政規律を維持するのがアメリカの将来の繁栄を保証するという立場は、依然として保守本流である。そうした立場から見れば、トランプの支持層というのは、やはり異端であり、そして少数なのだ。

 トランプさんは「もし共和党の候補になれても、どうせ本選ではヒラリーさんには勝てないだろう」と言われていましたし、共和党の主流派とは主張がかなり異なるために、「身内」であるはずの共和党の有力者の多くが支持を拒む、という状況でした。

 土壇場で他の候補を立てようとする動きも共和党のなかではあったようです。

 この新書を読んでいると「オバマ政権に対するアメリカの評価」について考えさせられます。

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