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電通社員の過労死、労働時間より業務内容を見直せ - 坂本幸雄

 新入社員だった電通の女性社員が過労死した。非常に心が痛んだが、私も若かりし頃に3回(25歳、28歳、33歳)倒れて入院した経験がある。

 新卒で入社したテキサス・インスツルメンツ(TI)では、倉庫番を経て25歳で課長に、29歳で部長に昇進した。今でも最年少記録だと思うが、週に1回は徹夜し、月に200時間ほどの残業をすることもざらであった。

 倒れた理由を振り返ると、肉体的より精神的な要因の可能性が高い。月に100時間残業していたとしても、その「中身」が重要だ。経験上、意味のある仕事をしている時間というのは意外と気にならないが、必要のない資料を作成している時間などは苦痛でしかない。

 「とりあえずテープ起こししておいて」、「一応資料つくっておいて」といった結果的に無駄になる可能性が高い作業は精神的にこたえる。今回の報道をみると、長時間労働ばかりに光があたっているが、その「中身」にもう少し注目すべきだと感じている。

 私はTIのあとは、神戸製鋼を経てNECと日立製作所の半導体部門が合併してできたエルピーダメモリで働いたが、日本企業はこういう無駄な労働時間が多い。

 エルピーダメモリのCEO着任後、無駄な労働時間の削減に着手した。社員が週に一度、週報と呼ばれるレポートを提出していたが、不文律で20ページほど書くと決まっていた。こんなに多いと書き手だけでなく読み手も大変で、ほとんど誰も読まない事態に陥っていたため、1枚以内にまとめるよう指示した。

 また、会議の数もやたらと多く、しかも長時間に及んでいたので、真に必要な会議か精査したうえで、会議は必ず1時間以内と決めた。

 上司が残業しているから部下も残るというのは論外だ。仕事が終われば速やかに帰るよう改めた。私は11年間CEOを務めたが、秘書が私に気を遣って、私より遅く退社したことは一度もない(笑)。

 電通社員の自殺を受けて、残業時間をゼロにしようという声が高まっているが、現実的には難しい。経理が決算期に忙しくなるように、多くの仕事は繁忙期と閑散期がある。繁忙期の残業をゼロにするには、その時期だけ人を雇うなどの対応が必要だが、閑散期の度にリストラをしなければならなくなる。雇用の流動化が極端に低い日本ではどだい無理な話である。

 欧米企業でも長時間労働は存在するが、例えばグーグルではシャワー室や仮眠室があり、いつでも食堂を使えるなど、長時間労働でも働きやすい環境が整っている。

 最近はインターネットの発達により、在宅勤務も容易にできる。満員電車に乗らないだけでも精神的、肉体的に楽になるし、閑散期には週休2日にこだわらないようにするなど、働き方を見直すことも、精神的負担の緩和につながる。この事件を機に日本企業がよりよい方向に進むことを願ってやまない。

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