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桁外れ中国テレビ事情

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白髪三千丈。という例えがある。中国における広大さ壮大さを表す表現である。
「愁いのため、白髪が三千丈(9キロメートル)になった。」という詩人・李白の言葉である。それにしても中国はスケールがでかい。
先日まで仕事で中国に行ってきた。ミッションは中国のテレビ制作会社に「ドキュメント・バラエティー」の作り方を教えに行くというものである。元IVSテレビ制作の愛弟子K君を伴っての旅である。
北京訪問は4回目、25年前が最初である。確か中国の民主化運動が激化したあの1989年の「天安門」事件の1年後である。オンボロの北京空港から北京の中心部へは2車線の街路樹がある細い道を行く。街には大量の自転車とわずかな公用車とタクシーのみ。道には物乞いもいた。改革・開放を唱えた鄧小平が顕在だったが、まだまだ貧しかった。「世界まる見え!テレビ特捜部」では中国中央電視台(CCTV)の番組を沢山使わせていただいた。当時中国の番組など買い付ける人間は世界中で我々だけだったのでCCTV本社で朝から晩まで色んな映像を見た。異常なカンフー一家。中国のゲテモノ料理。人民解放軍が日焼けに耐える訓練等。・・・他の日本のテレビ局はいっさいここに来なかった。CCTVのおかげで北朝鮮中央テレビの映像も日本で初めて放送ができた。

CCTVの張さんが言う。「吉川さんが言ってくれたらなんでもCCTVのスタッフに撮らせますよ。CCTVで放送してから、買ってくれればよいですから。」・・・そういう素朴な時代だった。しかし、地方の上海・大連・四川などにもいったが、中国の番組はほとんど質が悪く貧弱だった。上手く見つけたら最高に面白いが針の山から特定の一本の針を探す様なものだった。全国のテレビもレベルはまだ後進国レベルだった。

そして今回10年ぶりの北京。巨大な空港から北京中心部への道が、両側8車線になっている。経済が沸騰しているのがひしひしと感じられる。間もなくGDPで世界一になる可能性があるという。しかし、フェイスブック・ツィッター・グーグル、LINEは全く使用不可能だ。完全に情報規制されている。それぞれの機能をパクッた持つ中国版のサイトを利用するしかない。情報統制と外資に金を取られるのを防ぐ役割があると推測する。
というわけで北京到着後、軽く夕食を食べて中国の代表的なテレビ制作会社に行く。そして会長兼総監督から概要を聞いてド胆を抜かれた。

まず番組はゴールデンタイムの放送で予算は70分のゴールデンタイムで一本日本の6倍以上。これでも中国では中の上クラスだという。14億人の人口がいるので視聴率2%でもビッグビジネスになる。この番組は3か月間毎週放送するが、各回違う国、オーストラリア、ドバイ、オランダ、バヌアツなど12か国を巡る。8人のキャストを含む総勢100人のスタッフを毎回、各国に送る。16台のカメラ。ドローン(軍事用に開発された空撮専門の無人撮影機)使いますくり。日本の名テレビカメラマンも呼んでいる。私とK君はバラエティーの巨匠という触れ込みで演出指導にやってきたのだ。中国では「ランニングマン」という番組が日本の「鉄腕ダッシュ」を韓国がパクッて視聴率NO1になり、中国のテレビ局と韓国の制作会社が膨大な利益を得ている。韓国は中国に沢山の現地法人まで作り、韓国人スタッフそのものを大量に送り込んでいる。韓国は文化面から巨人化する中国に接近しようとしている。政府が完全にバックにいる。韓国ドラマはすべて、著作権処理され、高額で買い取られるし、韓国人俳優も中国に派遣される場合は政府から高額なお手当てが付く。国土が狭い韓国は商機を求めて中国進出を図っているのだ。(しかし、最近ミサイル配備の件で中韓関係の悪化で中国はあれほど隆盛を誇った韓国製エンターテイメントの排斥をしているのだから、この国でのビジネスは難しい。)

まさにバブル経済の中、中国ではこんなことが起こっている。そして驚くべきことに、人気テレビ芸能人になると70分1本の出演料が3000万円(!)という気の遠くなるほどのギャラが支払われる。そして各国のテレビ屋がここで金儲けを考えている。英国がフォーマット(番組企画・制作手法)を売るだけで半年で30億円稼いだよとか、そういう話は中国ではざらにある。
ちなみに日本のドラマは良く見られている、キムタクとか堺雅人とか柴崎コウが人気だ。しかし全て違法DVDで視聴されている。かつては日本で放送した2時間後には中国字幕付きで全土で見れた。日本の芸能界はイライラしているだろうが、日本は国内だけである程度ビジネスが成立してしまうので「危ない・見えない中国」でビジネスするつもりはないらしい。しかし中国政府も最近この違法ダウンロード・DVD問題に手を付けようとしているので、日本のテレビ界・映画界・芸能界もこのビッグビジネスのチャンスを検討し始めた方が良いと思うのだが。

まあこんな様子で、あの素朴だった中国も経済沸騰で内容を政府に規制されながらも14億人がテレビエンターテイメントに目覚めてしまったから大変だ。我々の招聘にも私は知らないがある程度のお金が動いたと思う。結局、着いた日の午前2時まで、第一回目のパイロット版を見せられた私は、番組を全面否定し無茶苦茶に直した。
「進め!電波少年」「鉄腕DASH」「笑ってコラえて」「イッテQ」などのドキュメントバラエティーは世界のテレビを変えてしまった。実は英国・韓国・オランダなどが秘かに巧妙に日本をパクッている。中国はそのドキュバラの本家本元に教えを乞うてきたのだ。総監督と20人のスタッフの前で言った。
「作為的演出が多すぎる。タレントがジャングルを歩いていると、ヤリを持った原住民が沢山現れる。その後交流して中国の歌を教える。ヤリの所は全部切れ。ウソだとわかる。視聴者に作為を見せない。これがドキュバラの原点だ。
そして画がきれいすぎる。プロモーションVTR作ってるんじゃないんだから、リアルさを追求しなさい。我々は良いカットなら懐中電灯で照らされた映像も放送するし、真っ暗闇の中で呻いているタレントが小さい声もスーパーを入れて使用する。タレントたちが結構大変な思いしているのだからそれをリアルに出せば良い番組になるから。」
彼らは私とK君の発する一言一言を全てコンピューターに入力し、真剣に耳を傾けている。本当に解っているのだろうか?挙句の果て翌日、K君は朝まで超大規模予算の番組を編集させられていた。「吉川先生、来週も北京に来れるか?」と聞かれたが、彼らの真剣さが伝わってくるので検討すると伝えた。

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