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「ポスト真実」と感情化社会 どうして嘘つきがまかり通るのか(2)

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「ポスト事実」と「感情化社会」をどう生きるか

(1)「事実のチェック Fact-Check」と「事実の拠点」は大事

膨大な量の情報があふれ、まことしやかな言葉が出回る時代です。まずやはり、「事実を確かめられるたしかな拠点」は必ず必要です。ここに見に行けばほぼ大丈夫、という「事実の拠点」は、今後ますます需要が高まるでしょう。

公的機関やメディア、研究機関、専門家は、感情に流されず、政治的な対立に左右されない事実を公表し続けるべきです。アメリカの大統領選のときにはFact-Checkのサイトがいくつもできました。こういうものも、日本でもっと増えた方がいいと思います。

(2)「普通の人びと」を説得のターゲットにする

ターゲットを、政治信条の強固な人に置くと、説得は失敗するでしょう。「ポスト真実」の政治のプロパガンダや、「反事実」の世界に生きるメディアや人びとの言説を浴びせられ、その影響を被る「普通の人びと」こそが、説得のターゲットです。

嘘は信じないまでも、感情の影響を被ってしまうということがあります。そこが怖いと思います。感情の漏れ出しや集合化を、食い止める努力が必要です。

(3)反既得権益層、反権威の時代の難しさ

ただし、問題は「ポスト真実」の時代が、反既得権益層、反権威の時代という側面も合わせてもっているということです。具体的にいえば、政治家やメディア、学者・専門家などへの反感です。トランプ氏も、演説の中で繰り返し「メディアは真実を述べていない、隠している」と主張していました。

日本でも、とくにメディアや専門家への逆風は強いと感じます。権威を笠に着たような姿勢では、意見や事実の浸透を図るのは難しい時代です。

おわりに

感情と選挙というのは、もしかしたらものすごく相性がいいのではないかと思います。選挙の判断は瞬間的でよく、しかも選択の方法は概してとても単純です。アメリカの大統領選の投票用紙はマークシート方式ですし、日本でも単なる記名です。

感情をめぐる政治や市場の技術は、今後もどんどんと洗練されていくだろうと予想されます。難しい時代が待っているのかもしれません。

そういう中で、たしかな事実を根拠に、よりまっとうな議論をしていくために、どうしたらよいのか。「嘘」と「真実」、あるいは「感情」と「理性」を二項対立的に考えるような、古い枠組みのままでは進行しつつある現実に対応できないのではないかと思います。

事実・真実の見せ方、語り方、示し方の工夫です。「データの視覚化」の重要性が言われていますが、
business.nikkeibp.co.jp

パソコンよりも携帯デバイスで情報に接触することが多い時代に、どのように事実――ときにそれは複雑で、入り組んでいる――を届けるか。

また、技術だけに目を向けるのも正しくはないでしょう。「保育園落ちた日本死ね」で火が付いた待機児童の問題は、ついに政府が保育士の給料を底上げすることを表明するまでになっています。
mainichi.jp

なかなか前に進まない保育施設の問題を、前に進めたのは、「保育園落ちた日本死ね」ブログ記事が持っていた強力な「感情」の喚起力にあったのはたしかです。がしかし、それだけでは現実は動かない。

感情+ネット+既存メディア+地道な活動をしてきた人たちの努力+政治家の動き、これらがリエゾンして、はじめて現実が動き出すのでしょう。

おまけ──「事実」「真実」とリベラル

もともと、既得権益層への反抗はリベラルの旗印だった。いまやリベラルは既得権益層──とまでは言わないまでも、弱者の位置にはいないとみなされて、攻撃を受ける側に回っている。歴史=物語への疑義も、左派的な解放の理念に支えられて出発したが、新自由主義史観が利用する方向へスライドし、拡大した。

そして「事実」「真実」の確かさへの懐疑も、リベラルな思想家たちが取り組んできたものともいえる。真実を語る言葉の内部に矛盾を見い出す脱構築や、立場やパラダイムによって「真実」のあり方が変わるとする相対主義や知の考古学、「真実」のつくられ方を問う構築主義など、ポスト構造主義の思想は、「事実」や「真実」と思われるものを問い直す努力をしてきた。

だからリベラルは、理論的であればあるほど、「事実」や「真実」を真顔では主張しにくい。

念のためいえば、私は「保守」=「反・事実」、「リベラル」=「事実」のような図式を考えているわけではない。「ポスト真実」の世界は、政治的な対立を越えた、より幅広い世の中の傾向だと考えている。「保守」とみなされる側にも事実を重んじる人はいるし、「リベラル」を掲げる人にも都合の良い「事実」だけつまみ食いする人はいる。

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