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イエレン議長の心境

イエレン議長が11月17日の議会証言で12月13-14日に開催されるFOMCで利上げするスタンスを見せました。市場ではすでに95%程度の確率で利上げされるとみており、この証言は目先の動きをある程度確定させる形となりました。

インフレ率については11月17日に発表された10月度CPIで年率1.6%、コアが2.1%と比較的しっかりした足取りとなっており、12月の利上げをサポートする形となります。11月の雇用統計があとは確認材料となるはずですが、例年、11月はサンクスギビング、クリスマスといった特殊事情に伴う配達や販売要員確保で雇用が増えるのが確実でありますのでそちらもほぼ心配することはないとみています。

ハト派と言われたイエレン議長もようやく利上げを心置きなく行える環境が整ったわけで議会証言でも何やらすっきりした顔をしていた気がします。また、今後のことですが、トランプ新政権が具体的にどういう政策を引き出してくるのか次第であります。政策総論は聞こえてくるものの1月20日の就任演説でどう具体的に展開してくるのか、確認したいところでありましょう。

既に言われているように減税と移民政策の制限強化、インフラ整備(主に補修)が大々的に行われるとなればインフレバイアスがかかることはほぼ確実であります。故に17年度には複数回の利上げが継続的に行われる可能性も心しておく必要があるかもしれません。

但し、ドルが基軸通貨である限りに於いてアメリカ国内事情のみを金融政策の判断材料とできないことも事実です。新興国からのマネーの流出が起きても新興国の輸出が回復するなどの相殺させるだけのメリットが広がらないと不都合が生じます。ところがトランプ氏の政策はアメリカの「独歩的強者」を目指しているようにも思え、(それが可能かどうかという議論も含め)ここがもう少し検討の余地がある気がします。

ところで、ドル高に対して意外と頑張ったのがカナダドルであります。トランプ氏のNAFTA見直し論があり、不利かと思われたのですが、カナダからメキシコ湾につながる懸案のキーストーンパイプラインが認可される可能性が高まり、また、米国経済を足元から支えているのがカナダでありますので思った以上にベネフィットが転がり込むことを織り込みつつあるように見えます。

さて、「イエレン議長の心境」と題した本日の趣旨は氏の今日までの気持ち、明日からの気持ちであります。揺れ動く乙女の心を探る趣味はないのですが、トランプ氏とどこまで波長を合わせることができるのか、ここを探っておくことは極めて重要だと感じています。

その中で12月の利上げについては自身がリーダーシップを取る中で金融政策をきっちりこなし、雇用が順調に回復し、インフレ率も改善に向かっていることで合格点をつけられる運営だったというニンマリした気持ちがあるのではないかとみています。つまり利上げはイエレン議長の自分へのクリスマスプレゼントであります。

他方、17年からはまったく色が変わる気配があり、トランプ政権という予想が立てにくい世界が繰り広げられる中、自身の任期が残り1年と迫る中、今日までに作り上げた金融政策から生み出した米国経済の好調ぶりをどれだけ維持できるか、身が引き締まる思いでの挑戦になるとみています。

また、金融規制法案ではオバマ大統領の目玉の一つであったドットフランク法をトランプ氏が撤廃すると主張していますが、イエレン議長はこれに対して強く懸念を表明しております。ドットフランク法はリーマンショックを通じて政府(=国民の税金)が民間企業救済の為に資金を投じるベイルアウトが起きないようにする仕組みでもあります。しかし、この法案は成立以前から功罪議論を呼んでおり、トランプ氏は「中小銀行に負担をかけ、経済に悪影響」と断じています。

このところ金融機関の株価が好調な理由の一つはこの規制枠が外れればメリットがあると考えられるからです。個人的にはドットフランク法は残しておいた方がよいと思っています。アメリカ企業は常にアグレッシブで短期決戦志向が強く、リスクテークが大きくなる傾向があります。よって仮にトランプ政権の時に何も起きなくてもその後に何か起きる可能性がないとは言えないわけで長期的な安定感という意味ではトランプ氏の政策は踏み込みすぎだと思います。但し、イエレン議長が反対しても権限はないと思われますのでそれを金融政策にどう反映するか、そのお手並みが試されることになるかもしれません。

あとはトランプ氏がイエレン議長に「お前は首だ!」と言わなければとりあえずは安泰と思っております。さてさて、どうなることやら。

では今日はこのぐらいで。

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