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トランプ新大統領はリアリストか?

今日の津軽は曇りがちで時折小雪の舞う天候でした。

さて、放送(https://goo.gl/DNywMW)でも取り上げた、ロバート・カプランがワシントン・ポスト紙に寄稿した「トランプはリアリストではない論」の要約です。


対外政策ではリアリストではないトランプ
By ロバート・カプラン

大統領選で当選を果たしたトランプは対外政策では「リアリスト」であると呼ばれているが、信じないほうがいい。たしかに彼は大雑把なリアリスト的な直感をもっているかもしれないが、これはリアリズムにとって悪い知らせとしかならない。

私のようなリアリストにとって、彼が選挙で選ばれたことは非常に心配なことだ

リアリズムというのはひとつの感覚であって、それぞれの危機にどうすべきかを教えるようなものではない。そしてそれは悲劇についての成熟した感覚、つまり対外政策はであらゆることが悪く働くことを知っており、注意深さと歴史についての知識を持っているものであり、これがリアリストの心構えの中には染み付いているはずなのだ。

リアリズムは、ツキュディデスが紀元前5世紀に「ペロポネソス戦争」の中で人間の本性が恐怖(phobos)利益(kerdos)、そして名誉(doxa)によって動かされるものであると定義した時から人類の歴史とともに歩んできたといえる。

リアリストは、そのような原初的な力に対抗するのではなく、それを活用しなければならないことを知っているために、たとえば自由(freedom)の前に秩序(order)があるべきであることや、価値(value)の前に利益(interests)があるべきことを知っているのだ。

結局のところ、秩序なしでは誰にも自由を与えることはできないのであり、利益なしでは国家はその価値を広める動機をもたない、ということだ。

トランプがこのようなことを考えていること示す兆候は何もない。彼は歴史を知らないようであるし、その悲劇についてしっかりとした感覚をもっているとは思えない。

歴史感覚というのは主に読書体験から生まれるものだ。この体験により、われわれは同盟国への義務や西洋の防御者としてのわれわれの役割というものを初めて知ることになる。近代の米国の大統領のすべてが知識人というわけではなかったが、それでもかなり本を読み込んでいたほうだ。

ところがトランプはあまり本を読まない人物であり、詳しい調査もなくウソが蔓延するデジタル時代を、本を読まずにダイレクトに迎えてしまった人物なのだ。

リアリストは真実を信奉するものだが、その理由は「歴史が教えてくれる究極の教訓は、その状況の真実というものが不快なものであることが多い」という点にある。ところが選挙戦を通じたトランプの発言からわかるのは、彼が何度も事実を無視したという点だ。

リアリストたちは勢力均衡(バランス・オブ・パワー)がものごとを解決する万能薬ではないことを知っているが、一般的にはライバル国よりも有利なバランスを維持することが国益にかなうものであることを知っている

ロシア大統領であるウラジーミル・プーチンは中欧から中東までのバランス・オブ・パワーを崩したが、これはわれわれとしてはロシアに対して交渉面で強い立場を維持するためには早急に修正すべきものである。

ところがトランプはこのことについてまるで理解していないようであり、彼のプーチンについての宥和的な発言は、危険なほどナイーブなのだ。

リアリストは「国益が先で価値は後」であり、その逆はないことを知っているために、アジアでの自由貿易協定がわれわれにその地域への関与を与えることになり、それによってますます価値をその地域で広めるインセンティブが生まれることを知っている。

また、同盟国間で自由貿易協定は、中国の横柄な影響力に対抗することにもつながる。もちろんトランプは中国の影響力に対抗したいと主張しているが、彼はリアリストではないために、それをどのように行うべきかについては確固とした考えをもっていないのだ。

リアリズムは「節度」を基本としている。理想主義者たちは現状維持を欠点だとみるが、リアリストたちはそこに価値を見るのだ。したがって、彼らは変化を警戒する。

ところがトランプは国際システムに大変動を求めている。貿易戦争の誘発からメキシコとの緊張を高めること、そしてNATOの弱体化まで示唆しているのだ。

もちろんバルト三国をNATOに加盟させてしまうのは、リアリストの視点から見れば賢明なものとはいえない。だが同盟に入ってしまった今、NATOそのもの(そして西洋諸国)の信頼性は、彼らを守ることができるかどうかにかかっているのだ。トランプとその支持者たちは明らかにこの点を理解できていない。

繰り返すが、リアリズムは戦略ではなく感覚なのであって、これは歴史上におけるアメリカの世界における正確な立ち位置の認識と結合させるべきものなのだ。それは米国内のホロコースト記念博物館の設置された場所によってもうかがい知ることができる。ホロコーストは欧州のユダヤ人に起こったことであるが、米国民の総意によってその国家意識の中に入ることが許されたのである。

もちろんこれはアメリカが世界のどこかで大いなる人権侵害が行われたときには常に介入すべきであるということを意味するわけではない。そもそもそのような介入は非現実的だからだ。

それでもそれが起こった時には気づくべきであり、可能であればそれに対して何かしらの対処をすべきであるということになる。なぜなら第二次世界大戦という激しい闘争の後や、冷戦期に生まれたアメリカの義務というのは、可能な限りにおいて「文明社会」の境界線を世界で拡大するというところにあったからだ。

理想主義者たちはこの義務に執着することになったが、リアリストたちは冷めていた。リアリストたちはいかなる世界的な利益の前に「国益」が来ることを知っているからだ。ところが(少なくとも尊重されている)リアリストは、国際主義者的なビジョンをもっているものだ。

歴史は続いていく。第二次世界大戦と冷戦は過ぎ去った。ところがアメリカは大国の中でも最も恵まれた有利な場所に位置している。この幸運は、国境を越えた責務をわれわれに与えている。それを知るには米海軍の保有する300隻の艦船や空母がいま航行している海域を見てみればよい。

リアリズムはそのようなパワーを、同盟国を捨て去ることではなく、彼らを守るために使うことを教えている。そしてそれを使用する際には、紛争へと拡大させないことが肝要なのだ。トランプがリアリストになることを願うばかりだが、おそらくそれにはまだまだ時間がかかるだろう。


これを読むと、たしかにベーシックなところではカプランはリアリストなのかもしれませんが、その発想はややリベラル寄りに見えますね。

「国境を越えた責務」とか書いてしまうところにブレを感じます。

以下は放送の時の様子です。ご参考まで。

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