記事

「ボブ・ディラン」ノーベル賞に盛り上がらない英国 - 林信吾

ボブ・ディランにノーベル文学賞――。

 このニュースが世界を駆け巡ったのは、10月13日のことであった。日本では連日ワイドショーや報道番組で紹介され、数多くの音楽関係者がコメントするなど、まさしくビッグニュースと受け取られた。だがしかし、地球の反対側では、まるで状況が違う。

 私の30代の従弟(父親はイタリア人)が今もロンドンで暮らしているが、「そもそも、ボブ・ディランって誰?」というのが、問い合わせに対する彼の第一声であった。英BBC放送のニュースで通り一遍の報道がなされた以外、目立った論説さえもないという。やはり、大英帝国にあっては、米国のポップカルチャーなど、まともに相手にされていないのだろうか。

 「それは年代にもよると思いますが」そう答えてくれたのは、私の旧知の英国人ジャーナリストである。彼は日本風に言うと間もなく還暦を迎える。

 今や英国では、どこの大学のキャンパスでも、上から下まで米国発のアイテム(GAPのトレーナー、リーバイスのジーンズ、コンバースのスニーカーなど)を身につけた学生が闊歩している。そんな彼らにとって、ボブディランの歌にみられるベトナム反戦運動は歴史上の出来事でしかない。なにしろ冷戦終結以降に生まれているのだから。

英国で60年代といえばビートルズ

 一方、わが国でいう団塊の世代に相当する60代以上の英国人にとっては、2つの理由から、ボブ・ディランを高く評価するには、はばかられる空気があるのだそうだ。

 第一に、純粋に音楽面の評価から言うと、1960年代といえば、全世界の音楽シーンの頂点にいたのは英国が産んだビートルズであった。当時の米国の学生運動を描いた『いちご白書』という映画でも、ラストシーンで合唱されるのはジョン・レノンが作った反戦歌である。

 第二に、ベトナム反戦運動が与えた影響の大きさがある。要するに、英国においてボブ・ディランが好きだなどと公言するのは、「私はベトナム反戦運動についてもよく知っています」といった、一種のスノッブだと受け取られかねないのである。

 同じ英語圏なのに、いや、それだけに複雑な感情が横たわっていることは間違いない。

あわせて読みたい

「ノーベル賞」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    グレタさんを中年男性が嫌うワケ

    木村正人

  2. 2

    ネットを楽しむバカと勝ち組たち

    BLOGOS編集部

  3. 3

    元SMAP干されるテレビ業界の実態

    笹川陽平

  4. 4

    八ッ場ダムが氾濫防いだは本当か

    NEWSポストセブン

  5. 5

    災害に弱いタワマン なぜ建てる?

    かさこ

  6. 6

    消えた日本人観光客 箱根の現在

    BLOGOS しらべる部

  7. 7

    「札幌も十分暑い」地元民が回答

    常見陽平

  8. 8

    違和感? ユニクロ社長の日本喝破

    文春オンライン

  9. 9

    スーパーの犬小屋 日本は5年後?

    後藤文俊

  10. 10

    いじめ教師の謝罪文に非難相次ぐ

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。