記事

痛みを伴わない改革を目指せるか

TPP、180議員が反対署名…大半は民主(読売新聞)
 野田首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について、参加表明の意向を固めたのは産業界の国際競争力強化により、経済成長を促す狙いがあるが、慎重論の根強い政府・与党内に深刻な対立を生む可能性もはらんでいる。

 首相にとっては、意見集約に向け、指導力が問われることになりそうだ。

 TPPを巡っては、反対する民主党議員らで作る議員連盟「TPPを慎重に考える会」(会長=山田正彦前農相)が署名活動を続けている。政府に交渉不参加を表明するよう求める内容で、8日現在で、署名に応じた国会議員の数は180人に上り、大半が民主党議員だという。

 山田氏は署名が200人を超えた段階で、政府に提出する考えだ。また、同議連として近く、大規模なTPP反対決起集会を開くことも検討しており、議連の役員は「不退転の決意で戦っていく」と述べ、推進派の説得には応じない考えを強調している。
TPP交渉参加、異論相次ぐ=意見集約は難航必至―民主(時事通信)
 民主党議員を中心とする「TPPを慎重に考える会」(会長・山田正彦前農林水産相)が同日、国会内で開いた会合には、TPP交渉への参加に否定的な約50人が出席した。山田氏は「(執行部は)早期に結論を出したいようだが、TPPがどういう内容なのか、われわれも国民も分かっていない」とけん制した。
 さて、民主党内閣が参加を表明しているTPPですが、民主党議員を中心に反対派が結成されているようです。民主党は相変わらずですね。執行部が合意形成を軽視するのは小泉政権以降に共通のことであって今の民主党に限ったことではないにせよ、そこに民主党ならではの拙劣な党内抗争が絡むと、下手をすれば当の民主党こそが最も内閣の足を引っ張っているみたいなケースにもなるのでしょう。ともあれ反対派議連は「TPPがどういう内容なのか、われわれも国民も分かっていない」上に、「推進派の説得には応じない考えを強調している」とのこと。わかっていないから説明責任を果たせと迫るのなら筋が通りますが、どうもTPPを批判的に検討しようというのではなく最初に否定ありき、全否定の構えが取られています。これは手強い。
政府は自由貿易協定(FTA)交渉にしても、ちんたらやっているが、それではいけない。米国とも率先してFTAを結ぶべきだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)はじめ農産物の輸出国とのFTA締結は農業分野が障害と言われているが、反対しているのは生産者ではなく、役所と関係団体にすぎない。コメなどの基幹農産物については、不足払いの仕組みをキチンとつくり、所得の補償を担保してやれば生産者は反対しない。米国とFTAを結べば、日本は得るものの方がはるかに大きい。FTAを結ぼうと、日本が本気で提案したら、むしろ米国の方が恐れるだろう。 ―――■小沢一郎ウェブサイト■
 巷のうわさによれば反対派には小沢一郎に近い議員も多いなんて話を聞きますが、言うまでもなく小沢は対米FTAを持論としてきたわけです。小沢シンパだったらむしろTPPには肯定的な方が自然に見えますが、それよりも小沢の仇とばかりに現執行部のやることなすことに反対するみたいな人が多いのかも知れません。まぁ、ある種の「反動」に沿って動いている人も少なくないのではないでしょうか。何かしら自分の嫌いなものに反対するためなら、それがダブルスタンダードになろうと全く気にかけていない様子の人も少なくありませんから。

 TPP参加に踏み切ろうとしているのが自民党内閣であったなら賛成に回る人や、あるいは小沢が民主党のトップであったなら賛成に回る人もいることでしょう。ある種の「党派性」みたいなもので左右されるところもあるはずです。一方、いつでも外国(周辺国)を日本に対する脅威と見なし、防衛手段の増強を訴えているような人がTPPに反対の姿勢を示すとしたら、それはそれで筋が通っているように思えるのですが、こういう人に対して反動的な態度を取っている人の場合はどうなのか、この辺に私は疑問を感じています。

 軍事力の強化に頼らずとも、話し合いで戦争は回避できると説く人もいるわけです。まぁ、私もそう考える1人ですけれど、しかるに外交努力によって軍事的衝突は避けられると主張する一方で、軍事「以外」の衝突に関しては話し合いによる解決の可能性を微塵も考えていないばかりか、むしろ外交関係の破談を自明の真理として論を進めたがる人が多いように思います。経済摩擦しかり、食糧問題しかり。

 「○○が攻めてきたらどうする」と我が国の先軍主義者は説きますが、ハト派は「そうならないように外交に力を入れなければならないのだ」と応えます。戦争が起こることを前提として軍事的手段による解決を目指すのではなく、まず戦争を起こさせないための努力をする、軍隊ではなく話し合いで物事を解決しようと考えるわけです。ところが、これが非軍事的な問題となるとどうでしょうか。とりわけ食糧問題では「○○が売ってもらえなくなったらどうする」と、軍拡論者のそれと酷似した前提に沿って話が進められがちです。私に言わせれば、そうならないように国際協調関係を構築していかねばならないのですが、どういう訳かハト派もしくは左派と目される人の大半は、外交関係が破綻した後に来る事態への防衛策を訴えるばかりで、衝突が起こる前に話し合いで解決しようという姿勢を垣間見せすらしません。どうやら外交努力によって回避できるのは戦争のみ、と信じられているようです。

 軍事的な面では諸外国を敵と見なす姿勢に反対の立場を取る人も、というより反対の立場を取っている人ほど、貿易や食糧問題に関しては諸外国を日本に対する侵略者として考える傾向が強いような気もします。そして戦争は話し合いで避けられると語るその口で、貿易や食糧問題に関しては正反対の態度を取るわけです。たぶん、軍隊好きの排外主義者に対する反動で動いているだけで、心の底では外交努力による問題解決の可能性など信じてはいないのでしょう。こういう人たちには率直に失望しますし、むしろ反グローバリズムを掲げたナショナリズムという形で排外主義に結びついていくところもあるように思います。

 国内に目を転ずれば、今さら栄光ある孤立を気取って門戸を閉ざしたところで、何も解決するものはありません。好むと好まざると世界の波の訪れは避けられない、その中でいかに上手く立ち回るかを考えるべきでしょう。現内閣が説くほどに急ぐ必要があるのかはさておき(ただ、受け身であるより主体的に関与していった方が日本の居場所は確保しやすいものと思われます)、いつまでも現状維持ではいられません。何を変革するにしても普通は「痛み」を伴うもので、その「痛み」を脅しに使って変革を止めようとするのが近年の政財界では標準的な振る舞いみたいなフシがないでもありませんが(派遣法改正や最低賃金引き上げ等々)、ともあれ日本だけが旧態依然としたままではいられないのです。

 時代の趨勢が不可避的に変化していく中で利益を得る人も出れば、不利益を被る人も当然ながら出てくるものです。利益を得る人にはしかるべく課税し、不利益を被る人にはしかるべく保障していくことで対応していくほかありません。しかるに、この変革に伴う「痛み」を金銭的に保障していくと、左派は「札束で頬をひっぱたくやり方だ」みたいに詰り(この傾向は原発事故後は目立って強まったように思います)、右派は「既得権益保護だ」と叫ぶわけです。変化に伴う不利益を被る人に保障をしていくのは、往々にして国民の幅広い層から反発を買うものとすら言えます。

 では、どうすれば反発を買わないのか。最大公約数的な支持を得た回答が「痛みに耐えよ」というものでした。金銭的な保障をしていくのではなく「(これは正しいことのためなのだから)痛みに耐えよ」と説く、こういうやり方を採った首相が最も国民の賛同を集めたわけです(もっとも、行われた改革はグローバル化に適応するためというより、ガラパゴス化を深めるためのものでしたが)。もちろん私はこうしたやり方に反対なのですが、世間はどれほどのものでしょう。口先では小泉政権のやり方に批判的であるかのごとく振る舞う人もいますけれど、一方で変化に伴う「痛み」を保障することに、やれ「札束で頬をひっぱたくやり方だ」、やれ「既得権益保護だ」と憤るとすれば、結局のところ「痛みに耐えよ」に行き着くしかないわけです。こうなると、不利益を被る人を切り捨てて世界の変化に付いていくのか、それとも「痛み」を脅しにして世界の変化に背を向けるのか、絶望的な二択になってしまうものなのかも知れません。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。