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ロシア、トルコをつなぐ新パイプラインの意味 - 岡崎研究所

 フィナンシャル・タイムズ紙エネルギー担当編集長のウォードと、トルコ在住ジャーナリストのパイテルが、10月11日付同紙にて、10月10日にプーチン・エルドアン首脳会談でトルコ・ストリーム・パイプライン建設が合意されたことはトルコ・ロシア関係の強化になると論じ、トルコ・ロシアの接近について警鐘を鳴らしています。要旨は次の通りです。

ロシアとトルコをつなぐ新パイプライン

 ロシアとトルコは、シリアをめぐる緊張を脇に置き、ロシアのエネルギーの西欧への新たなルートを開くガスパイプラインに合意した。10月10日、イスタンブールでプーチンとエルドアンはトルコ・ストリーム・パイプライン建設に合意した。この合意により、ロシアがウクライナを経由せずに、ガスを欧州に送れることになる。

 3カ月前のクーデターの試み後、トルコと西側との間の不信が高まる中、この合意はロシアとトルコの関係を強化することになろう。10日の合意では、黒海のトルコ領海海底を通る2本のパイプライン(合わせて年間300億立方メートルの容量)を建設するとしている。1本はトルコ市場向け、もう1本は欧州向けである。

 トルコストリームは、ロシア国営のガスプロムにより操業される予定で、2年前プーチンが、ロシアとEU諸国が共同操業するサウスストリームの代わりに提案していた。

 交渉は、2015年のシリア国境でのトルコによるロシアのSu-24撃墜で引き起こされた危機を受けて中断していたが、6月にエルドアンがその撃墜に遺憾の意を表明して以来、急速に関係が改善している。10日、プーチンとエルドアンは軍事・諜報協力を緊密化するとした。

 エルドアンは7月のクーデター未遂後、欧米が冷淡であるとして、トルコと米欧の関係は緊張している。トルコは、クーデターを計画したと非難しているギュレン師の即時引き渡しを米国が拒否していることに反発、反乱後の弾圧の規模(10万人以上が解雇)についての西側の警告にも憤慨している。

 イスタンブールでの会談は、エルドアンとプーチンの3か月で3回目となる会談である。西側では、NATO加盟国であるトルコと伝統的同盟国間の緊張をロシアが利用しようとしているとの危惧が高まっている。

 トルコ大統領府の外交責任者は、「トルコの西側との同盟もNATOとの関係もトルコのEU加盟問題も議題に上っていない。新たな同盟の可能性は見られない」とした。しかし同氏は「トルコが外交政策の選択肢を多様化させないということではない」とも付け加えた。

 プーチンとエルドアンのデタントにも拘わらず、シリアをめぐる対立は続いている。トルコはアサドの即時退陣の要求を弱めてはいるが、依然としてシリアの反政府軍の重要な支援者であり、一方ロシアはアサドの最も忠実な同盟者である。

 10日、プーチンは、トルコとロシアは人道物資供給のため可能なすべてのことをなすべきとの「共通の立場」を見出したとして、アレッポへの支援物資供給の重要性につき両国が合意したと言った。しかし、先月の国連の援助部隊への爆撃でロシアが非難される中、これが実際には何を意味するのかはまだよく分からない。

出典:Andrew Ward & Laura Pitel,‘Russia and Turkey agree gas pipeline deal’(Financial Times, October 11, 2016)
https://www.ft.com/content/52c05b6e-8f1f-11e6-a72e-b428cb934b78

 トルコがクーデター事件後の非常事態宣言を延長、大規模な「弾圧」をする中、欧米はトルコへの批判を強めています。そういう中でロシアはトルコへの接近を図っています。今回の首脳会談でプーチンは、トルコによるロシアの戦闘機撃墜以来トルコに課していた経済制裁を撤廃しました。両国はトルコ・ストリーム・パイプラインの建設にも合意しました。このトルコ・ロシアの接近についてどう評価すべきでしょうか。

トルコがNATOから離れていく

 両国間の軍事・諜報面での協力も合意されたというのが気になりますが、新しい同盟の可能性はないとトルコ側は説明しています。西側がトルコ・ロシアの接近を過大評価し、「トルコがNATOから離れていく」などと警戒心をもって対応することは逆効果になるように思われます。ロシアによる経済制裁解除は経済関係の正常化であり、トルコ・ストリーム・パイプラインは両者の利害が合致したものと冷静に受け止めるのが正しい対応であると思われます。

 エルドアンもプーチンも権威主義的政権の長です。外交政策の展開において、民主主義国の指導者よりもずっと自由に決めることができます。戦闘機撃墜後プーチンは、「エルドアンに後悔させてやる」など、ひどい言辞を弄していましたが、今やエルドアンは盟友扱いです。ただ、権威主義国同士の関係は、指導者の決定による面が強く、振幅が大きいものになります。プーチン・エルドアン関係はその象徴のようにも見えます。トルコは伝統的にロシア不信が強いものです。あまりロシア・トルコ接近を心配する必要はないでしょう。

 なお、シリアについては、アサド・ロシアと停戦協定など結んでも意味がないことは証明済みです。安全地帯設置や飛行禁止区域を設定し、実力でその担保をすることが人命の尊重につながるでしょう。軍事力でバックアップされない外交は成果を上げ得ないのがシリアの現状ではないかと思われます。ただ、オバマ政権はシリアでの軍事力行使に否定的であり、アサド、プーチンはその間に現地の状況を有利にしようとしていると思われます。プーチンの人道援助を届ける努力に関する発言は、今後のロシアの行動を見てその内容を判断すればよいと思われます。

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