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日本サッカーの強化法とソフトバンクの世界戦略の共通点 - 桂木麻也

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ソフトバンクの世界戦略

 さて、タイトルにあるソフトバンクの世界戦略である。この企業に関してコメントするのは2回目である。最初は月間Wedgeの2015年3月号で、米・Tモバイルを買収する大胆な戦略について述べた。ソフトバンクは、日本においては契約者数で万年第3位の携帯通信会社である。かつては通信カバレッジも狭く、地下に入ると通じないなどという苦情もよく聞いた。弱小ゆえに、CMやプロモーションはいきおい奇を衒ったものが多く、話題作りに腐心していた感がある。アイフォーンをいち早く導入した行動力も、弱小ゆえの必然の動きであったのだ。

 現在の日本の携帯市場は完全に飽和し、契約数の純増は他社からの乗り換えでないと実現できない。業界は、まさにThroat Cuttingの苛烈な競争状態の中にある。日本の人口は高々1億2000万人、しかもこれから人口減少が予測されている。ソフトバンクは、そんな市場での順位争いに見切りをつけ、米・Tモバイルの買収によっていきなりグローバル市場でのメジャープレーヤーになろうと企てた。正にゲームのルールを変えようという試みだ。独禁法の関係で、残念ながらディールはクローズしていないが、日本の人口減少を所与に、大きく外に打って出た孫社長の大胆な経営観には度肝を抜かされた。

 そして本年3月、ソフトバンクは英国の半導体製造メーカーARM社を、何と3.3兆円で買収した。またその興奮も冷めやらぬ10月に、サウジアラビア政府と組んで、テクノロジー分野に投資をする10兆円規模のファンドを立ち上げることを発表した。

 携帯電話会社が半導体? と多くの人が首を傾げたに違いない。ITの技術革新は、過去30年間に劇的に進んだ。インターネットやスマホなどは、30年前には想像すらできなかったし、当時の感覚ではまさにドラえもんの道具のようなものだ。また、これからの30年で、全てのものがネットにつながるIoT社会の到来が予測されている。その社会で実現される便益は、現在のスマホどころではないはずだ。

 孫社長は、現在をIoT社会の実現に向けたパラダイムシフトの入り口と位置付け、かつARM社の持つ技術がIoT時代のゲームを支配するために必須との認識の下、巨額の買収に踏み切ったのである。またサウジアラビア政府と組んだファンドでは、IoT社会の実現・発展に寄与するテクノロジー企業を探索し、資金を提供することでその成長に関与しようとしている。それらのテクノロジー企業がもたらす果実は、IoT社会の実現・発展に大きく寄与するであろうし、ソフトバンクはそれらを独占的に享受できるはずなのだ。

 確かにソフトバンクは、日本の携帯市場では万年3位である。CMやプロモーションも奇を衒ってユニークだ。しかし、IoT時代の本質を理解し、将来そこでのゲームのルールをグローバルに支配するべく、今やるべき投資を地道に実現しているのである。この動きは、携帯通信業社というカテゴリーを遥かに超えて、何か巨大なものへのTransformationを志向するための正に「正しい努力」なのであろう。

指導者は教育者たれ

 浜田さんの講演で、もう一つ興味深い話があった。それは「指導者は教育者たれ」ということだ。負けている試合のハーフタイム、日本のコーチは往々にして怒鳴り、ダメ出しして、沢山の指示を出す。これに対してスペインのコーチはまず前半の良いところを褒め、修正ポイントを一つだけ伝え、後半はきっとできるよとモチベーションを上げてピッチに送り出すという。パフォーマンスの向上にどちらが効果があるか言うまでもない。

 このような形で育った子供逹は、また同じようにして次の世代に接していける。その場その場の指導ではなく、ジェネレーションを超えて受け継がれるスタイルは正に教育であるし、文化にまで昇華するものであろう。企業のリーダーにも同じことが言えると思う。慧眼の指導者も、いつかは次世代にバトンを渡す時が来るし、それをスムーズに行うためにも、若い世代の教育に労を惜しんではいけない。そういう努力の中から、今以上のリーダーが必ず出てくるはずであるから。

 その意味で、リーダーによる誤った指導で、若き才能が開花することがなく、むしろ成長が阻害されたりするようなことがあれば、それはなんとも切ないことだ。親としてもいたたまれないであろう。また日本企業では仕事の質よりも、勤務時間の長さを問う風潮があるが、それも「正しい努力」の観点からは大いに問題であろう。加えて、指導的立場を悪用して権力を乱用的に行使することで、若き才能を疲弊させ、あまっさえ自らの命を絶つような事態を惹起させてしまうことなど言語道断である。親御さんの無念と怒りの大きさは想像だにできない。厳しく指弾されるべきであろう。

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