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何かと不経済な話

国保滞納者の差し押さえ急増、4年で5倍 朝日新聞調査(朝日新聞)
 国民健康保険(国保)の保険料を滞納し、財産を差し押さえられる世帯が増えている。朝日新聞社が19の政令指定市と東京23区に聞いたところ、回答があった37市区の差し押さえ件数の合計が、2010年度までの4年間で5倍に増えたことがわかった。差し押さえた財産を換金するケースも急増。雇用悪化を背景に国保料収納率の低下に歯止めがかからず、強制徴収が加速している実態が浮き彫りになった。

 調査は7月、計42市区を対象に06〜10年度の差し押さえ状況を聞いた。仙台、京都両市と東京都渋谷区は10年度分について「未集計」「非公表の段階」と回答。大田、板橋両区は「古いデータが残っていない」と答えた。残る37市区の差し押さえ件数は06年度、計3429件だったが、10年度は4.96倍の計1万7020件に増加。特に指定市の伸びが大きく、増加率は6.6倍に上った。

 10年度でみると、指定市では横浜(2913件)、福岡(1745件)、名古屋(1254件)の順に多く、北九州は99件だった。23区は杉並区の943件が最多。差し押さえた財産の内訳は預貯金が50%で最も多く、保険(22%)、不動産(15%)と続いた。36市区が回答を寄せた差し押さえ金額(滞納額)は総額91億3千万円。4年前に比べて4.6倍となった。
 さて、引用元の記事にもありますように、国民健康保険料を滞納し財産を差し押さえられる世帯が増えているそうです。37市区に限られた調査ではありますが、なんと4年間で5倍にも増えたのだとか。また、差し押さえられた財産の内訳は預貯金が50%で最も多いと伝えられています。何というかまぁ、色々と考えさせられるところの多い話です。

 まず一般論として、差し押さえるなら現金が一番、都合が良いですよね。預貯金があるなら、まずはそこから差し押さえるのが普通かと思いますが、預貯金の差し押さえに至ったケースは全体の50%と半分しかありません。つまり、半分の世帯は差し押さえの対象となるべき預貯金すらもない世帯であったものと推測されます。そんな世帯に対して差し押さえを強行している辺りに、我々の社会の人権感覚は表れているのでしょうか。健康で文化的な最低限度の生活なんて保障されていない世界が、ここにはあります。

 仮に僅かばかりの蓄えがあったとしても、まず生活していくのにお金が必要であって、保険料の支払いに回す余裕などなかった世帯も多いことでしょう。あるいは差し押さえの対象となる不動産があったところで、そう都合良く現金化できるものではない、ことによると住む場所の喪失に繋がるケースも多いはずです。例によって「(企業の)内部留保は現金ではないので、人件費には回せない(キリッ」とか得意気に語っている人ほど、家や車を持っている人に対して「支払い能力はあるはずだ」と断罪に走る傾向があるような気もしますが、持ち家ではあってもお金がない人はいる、保険料の支払いに困窮する人もいるわけです。
 


 まぁ国民健康保険料って、かなり高いですよね。特に低所得層にとっては。独り親世帯の場合、行政による所得再分配の結果として逆に貧困化が進むなんて指摘もありました。国民年金や国民健康保険の負担が、所得の低い世帯の支払い能力に見合ったものではないから、こういう結果にもなるのでしょう。収入の少ない人にはもっと保険料を安くし、その分は累進課税を財源とする税金で補うなどしないと日本の歪な社会補償制度は変われません。なにやら「税と社会保障の一体改革」などと掛け声は聞こえますけれど、この社会保障の逆進性を新しい首相はどう考えているのでしょうか。社会保障の財源として、逆進課税(=消費税)を充てようものなら、それこそ自分で穴を掘ってそれを埋めるが如き不毛な無駄を作ることになりそうですが。

 だいたい、差し押さえ件数の「4年間で5倍」というのは異常な数値です。滞納者が4年で5倍に増えたはずもないのに差し押さえ件数が急上昇する辺り、ある種の「国民感情」が窺われます。結局のところ差し押さえ件数の急騰が意味するのは、「差し押さえに力を入れるようになった」ことです。いったい、差し押さえのためにどれだけの予算が費やされたのか……というのはさておくにしても、とにかく自治体が差し押さえに積極的になった結果として「4年間で5倍」という数字が出てきたわけです。言うなれば警察が取り締まりに重点を置いた結果として自転車関係の「犯罪」が増えるようなもので、その増加の原因は取り締まる側、差し押さえる側の意識の変化にこそあります。
 
 では何故、行政は差し押さえに力を入れるのでしょうか。行政サイドにとって、差し押さえは結構な負担にもなるはずです。それでも敢えて差し押さえに踏み切るのは、滞納者を許すまいとする世論を感じ取ってのことかも知れません。給食費でも学費でも、とかく我々の社会は何らかの負担から個人的に免れている人に対して厳しいもの、そして滞納者が放置されている状況をこそ不公平と感じている人も多いように思います。ならば世間の滞納者に対する懲罰感情の高まりを受けて、差し押さえを積極化させている自治体があったとしても、何ら不思議に感じるところはありません。
 
正社員以外の労働者、過去最高の38・7%(読売新聞)
 昨年10月の時点で、全労働者のうち契約社員やパート、出向社員などの正社員以外の労働者が占める割合が、2007年調査から0・9ポイント増の38・7%と、過去最高になったことが厚生労働省の調べで分かった。
 同省は増加の理由について、「正社員の団塊の世代が定年を迎え、嘱託社員などになる傾向がある」と分析。また経営側は賃金の節約を理由に挙げたところが多く、経営環境の厳しさも背景にありそうだ。
 調査は、1987年から不定期に行われている就業形態に関するもので、今回で6回目。5人以上の労働者が働く全国の1万414の事業所のほか、そこで働く労働者3万3087人からも回答を得た。
 それによると、就業形態別では正社員が61・3%(前回調査比0・9ポイント減)、パートが22・9%(同0・4ポイント増)、契約社員が3・5%(同0・7ポイント増)などだった。正社員以外の労働者を雇う理由を複数回答で尋ねたところ、「賃金の節約のため」が43・8%(同3・0ポイント増)で最も多く、「仕事の繁閑に対応するため」が33・9%(同2・1ポイント増)で続いた。
 差し押さえの急増は、「滞納者を許さない」という意識の高まりによるところが多いとは書きましたが、一方で滞納そのものの増加と密接に関わるであろう貧困化を窺わせる報道も多々あります。たとえばこちら、労働者の内、非正規の占める割合が過去最高となったそうです。理由の最多は言うまでもなく、「賃金の節約のため」です。その分だけ、働く人の収入は減っていきますし、非正規雇用の中には保険に入れてもらえない人も少なからずいるはずで、そういった人は一般に収入も少ないですから保険料の滞納が増えるのは必然的な結果と言えます。

 例によってコンサルの類は、非正規への置き換えは正社員を守るためなどと寝言を繰り返すものですが、実際のところは正社員が減らされ、その分が非正規で置き換えられているわけです。そして当の経営側は「賃金の節約のため」と、はっきりと口にしているのですから、実態は推して知るべしです。「派遣は安くない」と言い張るコンサルもいますが(時給に換算するとバイト以下の賃金で社員を働かせているブラック企業にとっては当てはまるのでしょうけれど)、往々にして派遣などの人材紹介業者はコスト削減効果を唄って派遣先企業に営業をかけていたりするのですから世話はありませんよね。

 でも、その派遣は減っていたりします。人員削減の対象になるのは、まず非正規が先ですから。つまり不況下では、非正規雇用を減らす方向にも圧力が掛かるわけです。だから派遣は減りました。にも関わらず、非正規雇用が過去最大にまで増加しています。業績悪化で非正規雇用の人を次々とクビにしている会社も多い中で、それでも非正規雇用ばかりが増えている、まぁ我が国の経済がどこに向かっているかを端的に示していると言えるでしょうか。
 
現金給与、2カ月連続で減 7月の毎月勤労統計調査(共同通信)
 厚生労働省が31日発表した毎月勤労統計調査(7月速報)によると、すべての給与を合わせた現金給与総額(1人平均)は、前年同月比0・1%減の36万7738円と2カ月連続で減少した。前年同月に比べ平日が少なく、基本給などの所定内給与が減少したことが主な要因。

 所定内給与は0・1%減の24万4959円。残業代など所定外給与は、0・8%増の1万8350円と4カ月ぶりに増えた。就業形態別では、パートタイム労働者の給与総額が0・6%減の10万55円となり、減少幅が大きかった。平日の少なさに加え、企業の節電や輪番休業で労働時間が短縮されたことも影響したもようだ。
 もう一つ追加で、こんなニュースもありました。現金給与総額の平均が、2カ月連続で減少したそうです。「残業代など所定外給与は0・8%増」であるにもかかわらず、給与総額は減ったわけです。「平日の少なさに加え、企業の節電や輪番休業で労働時間が短縮されたことも影響したもよう」とも記事は伝えています。残業代は増えているのに、ですよ。それだけ正規の労働時間での取り分が減ったということです。結局のところ、節電や輪番休業で労働時間が短縮されパートタイムなどの時給で働く人の給与が大きく減った(これもまた節電の弊害の一つとして記憶に止められるべきです)、しかるに時給で働く人が収入を得る機会を減らした分だけ、残った人は残業してカバーしなければならなくなったのでしょうか。何ともまぁ、不毛な話、不経済な話です。

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