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性表現規制を語る前段階として

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 さて、今日は性表現規制を語る前段階として、性犯罪統計の見方を考えてみようと思います。まず性表現規制を訴える側は、さも純粋な創作を含む「非実在」のポルノまでもが「現実の」性犯罪に影響しているかのごとく語りがちです。これに対する至極当然の反論として、現代の日本における性犯罪の少なさが挙げられます。一部の規制論者が語るように日本が児童ポルノ大国であり、それが現実の性犯罪にも影響を与えるのであれば、もうちょっと性犯罪が多くなければおかしいはずですが、少なくとも統計を見る限り現代日本における強姦の認知件数は非常に少ないわけです。

 ただ、この認知件数の「少なさ」を語る際には、一つ注意してもらいたい点があります。日本国内における時系列的な推移を提示するのは適切なのですが、国際比較を持ち出すのは墓穴を掘るだけだから止めていただきたいのです。というのも性犯罪には刑事事件として認知されない「暗数」が大きく、その基準は国によって異なります。国際比較を持ち出して日本の性犯罪件数は少ないと言っても、それは暗数の度合いが不明確である以上、客観性を欠いた主張を連呼するだけになってしまうのです。原発を批判するのにECRRや上杉隆の説を引用すれば知識人から見放されるべきであるように(必ずしもそうなっていないところに日本の知的貧困が現れているのかも知れませんが)、性犯罪を語るのに国際比較を持ち出せば、それは知的に誠実であろうとする人々の離反を招くだけでしょう。

 そもそも統計上で日本よりも強姦認知件数が小さい国というものも多々ありまして、データのあるものを少ない方から挙げていくとエジプト、アルメニア、アゼルバイジャン、シリア、レバノンと、アルメニアを除いてイスラム教国が並びます(2003−2008年の国連調査による)。同時期のデータがないので除外しましたが、少し古い資料ではイランの強姦認知件数も極小です。統計上の強姦認知件数の少なさを持ち出して「日本は性犯罪が少ない」と主張してしまうと、究極的にはイスラム社会の性文化を理想とすることになってしまいそうなのですが、これはいかがなものでしょうか。意外にネット世論とイスラム的な性文化、とりわけ女性の性に対する考え方は相通じるところがあるような気がしないでもありませんが、私は御免です。

 じゃぁコーランは性犯罪を抑制する効果があるのかと言えば、そんなことを真顔で信じられる人はいないと思います。そうではなく、抑制しているのは「認知件数」の方ですよね。国の社会情勢や文化によって、「認知」するかどうかの基準は大きく異なります。むしろ強姦認知件数の統計が指し示すのは、性犯罪の多寡であるより、「認知されやすさ」「性犯罪に対する感度」といったものではないでしょうか。そこで性犯罪と違って、概ねどこの国でも定義が揺らぎにくい犯罪として「殺人」を比較対象にした視点から考えてみたいと思います。

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データ引用元、国際日本データランキング明治大学国際日本学部 鈴木研究室

 さて、全ての国を列挙すると数が多すぎますので、OECD諸国に加えて各地域から同時期のデータがある国で人口が多い順に数カ国をピックアップしてあります。右端の「レート」は「強姦認知件数」を「殺人認知件数」で除算した数値です。このレートの順に並べてあるわけですが、レートが高い=「殺人が少ない割には強姦認知件数が多い」ことを意味し、レートが低い=「殺人が多い割には強姦認知件数が少ない」ことを意味します。そして我らが日本は中位ですが――OECD諸国で考えると下の方でもありますね。ともあれ、この「レート」が意味するところは何なのでしょう。

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