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 8日に行われた米国大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ氏が次期大統領に選出されました。まずは同氏の当選に祝意を表します。また、初の女性大統領をめざしたヒラリー・クリントン候補の健闘にも敬意を表します。

 新政権になっても日米関係の重要性は不変ですが、トランプ氏の選挙期間中の政策は必ずしも明確ではなく、新政権の具体的政策を注意深く見守る必要があります。しかし、安倍政権が前のめりになっているTPP協定承認については、同氏は繰り返し明確に否定しています。

 しかし、安倍政権は4日のTPP特別委員会の強行採決に続いて、トランプ氏が勝利宣言をした翌日の10日、衆院本会議においても強行採決という暴挙に出ました。TPPが米議会で早期に承認される可能性がゼロに近いのですから、茶番としか言いようがありません。そして、「来年1月20日の大統領就任日にTPP脱退を宣言する」とまで言い切っているトランプ氏に、いきなり喧嘩を売っているようなものです。TPPについては、衆院で「継続審議」にとどめ、来年の通常国会で対応を決めるべきだったのではないでしょうか。

 7日、長時間労働の問題で、大手広告代理店・電通に厚生労働省の強制捜査が入りました。その発端は、昨年のクリスマスの早朝、新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺し、長時間労働による精神障害が原因と労災認定されたことでした。発症前の1か月間の時間外労働は約105時間とされ、彼女の「今週は10時間しか寝ていない」「体も心もズタズタ」「眠りたい以外の感情を失った」などのSNSの書き込みを見ると、胸が痛みます。

 厚労省が強制捜査に踏み切ったのは、高橋さんだけでなく、複数の社員が違法な長時間労働を強いられていた可能性が高いと判断したためとみられます。また、勤務記録の改ざんによる残業時間の過少申告を上司が指示していた疑いが強いこと、度重なる是正勧告でも改善が進まなかったことなども、書類送検の対象となる「重大・悪質」なケースとみなされたのでしょう。

 政府も長時間労働の解消を政権の重要課題として挙げていますが、その取り組みはあまりにも遅いと言わざるをえません。今国会に政府が提出している「残業代ゼロ法案」は、逆に長時間労働を助長する法案です。

 一方、民進党を中心に野党4党が共同提出した仕事と家庭生活が両立できる環境を整えるための「長時間労働規制法案」は、①過労死ゼロ、②ワークライフバランスの実現、③労働生産性向上の3つを目的としています。労働時間の延長の上限規制、休息時間(インターバル)の付与の義務化、労働時間管理簿の義務付けなど、実効性のある労働時間の規制策を盛り込んでいます。

 高橋さんのような悲劇を2度と起こさないためにも、同法案を速やかに審議すべきです。一方、発効の見込みのないTPP協定を参院で審議するのは、全く意味がありません。安倍政権は限られた会期内で有効に審議する知恵がありません。優先順位が間違っています。 

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