記事

こうなったらダム建設ルネサンスだ

太陽光、強引商法…玄関居座り・即日契約強要(読売新聞)
 東京電力福島第一原子力発電所の事故や中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止で再生可能エネルギーが注目を集める中、訪問販売業者による住宅用太陽光発電システムの強引な営業が相次いでいる。

 この間、国民生活センターと地元の消費生活センターに愛知、岐阜、三重、静岡の東海4県から寄せられた相談件数は前年同期の約1・9倍に上った。即日契約を強要するなど悪質なケースもあり、国民生活センターは注意を呼びかけている。
 求人の多さを見る限り、やっぱり押し売り業界の二本柱はマンション投資と通信回線のようですけれど、ソーラーパネルの押し売りもまた昔から根強く生き残っていますね。昨今の電力危機に加えて、太陽光発電に妙な期待が寄せられていることを鑑みれば、まぁ将来有望な世界なのかも知れません。あまり良心に悖る仕事はしたくありませんけれど、あまり仕事を選んでもいられない身としては視野に入れておかねばならない分野でしょうか。ともあれ強引な営業は元より、営業の売り文句通りの性能を発揮しない、実際の発電量が事前の説明と大きく異なるなどと震災前から消費者センターに苦情が寄せられることも少なくなかったのが家庭向け太陽光発電というものです。消費者センターや国民生活センターの仕事も増えそうですね。

 家庭向け太陽光発電もさることながら、もっと規模の大きい風力発電でも期待通りの結果が出ることは稀なようで、これまた「事前の説明と違う!」と訴訟に発展することもありました(参考)。適度な日照が得られるか、適度な風が吹くかは原子炉と違って人間がコントロールできるものではありませんので、ほとんど運任せにならざるを得ないところもあるわけです。まぁ不安定な発電手段でも、これまでの常識を覆すような革新を期待して投資を続けるのは悪いことではないのかも知れません。ただ将来に期待ができるかどうかと、「今」の段階でアテに出来るかどうか、その辺は分けて考えてほしいと思います。

 一年中を通して同じような風が吹いていれば、もうちょっと具合は良くなるのでしょうけれど残念ながら日本の気候は変動が激しいです。あるいは多国間で送電網を共有することで「風が吹いている地域」と「風が止んでいる地域」をトータルで扱うことができるのなら安定性は格段に増すはずですが、困ったことに日本は東日本と西日本ですら電力の融通が難しい地産地消型となっています。最後の手段として隣の原発大国から電力を送ってもらうことで不安定な発電をカバーするという手がありますけれど、日本の隣の原発大国とは海によって隔てられています。結局のところ、お天気任せの発電手段は日本には向かないと考えざるを得ません。

 そもそも、風力や太陽光などの「再生可能エネルギー」は不安定さの故に必然的にバックアップとなるべき安定した発電手段を要求するため、化石燃料発電を減らす役には立っていないとの指摘もあります。「再生可能エネルギー」はビジネスチャンスにはなっても化石燃料発電の代替にはならない、風が止んで日も射さなくなったときでも電力を賄うためには、結局のところ火力や原子力などの安定したエネルギー源を残さなければならないわけです。輸出向けの「商品」として電力を扱うなら、発電できたときに売却して利益が上がれば良しということにもなるのかも知れませんが、国内の住民や産業にとってのインフラとして電力を見るのなら「常に必要量を賄えること」が求められます。そのためにはどうしても、安定したエネルギー源を選ぶ他ないのです。

 俄に太陽光や風力が持ち上げられている昨今ですが、むしろ思い出されるべきは水力発電ではないでしょうか。何も「新エネルギー」に拘る必要はありません。むしろ従来からある確立された技術を再評価してみるべきです。水力であれば、大規模かつ安定した電力が得られますし、水資源が豊富で河川の落差も大きい日本の地域特性にもバッチリ適合します。もう開発され尽くして水力発電所を建てる余地は少ないとの意見もありますが、その辺は石油やレアメタルと同じで、投入可能なコストに応じて開発の余地は増えるはずです。ちょっと掘るだけで出てくる石油資源が枯渇して石油価格が上昇すると今度は地中や海底深くから汲み上げた石油が市場に現れたように、たとえ低コストな水力発電所の立地が開発され尽くしていたとしても、原子力発電「以外」の発電手段であれば高めでもコストをかけることが許されるようになれば、水力発電所に使える用地は増えることでしょう。

 そんなわけで、原子力ルネサンスがダメというなら今度はダム建設ルネサンスを提唱したいところです。少しばかり高コストでも(太陽光発電のコストを考えれば何だって安いものです)脱原発のため、新たにダムを造って水力発電所を建てましょう。今後ますます争奪戦が激しくなるであろう化石燃料への依存度を減らし、かつCO2排出量も減らし、加えて原発まで減らすというのなら水力発電の増強は避けて通れません。これからは、ダム開発ルネサンスです。

 でもまぁ、ダム開発みたいな大型公共事業を伴う政治は今なお国民の最も嫌うところだとしたら、先行きはなおさら難しく思えます。「(古い)自民党をぶっ壊す」と称して小泉が喝采を集め、その後に台頭した民主党もまた「古い自民党」を敵視することで支持を得てきた、そういう時代にダム開発を進めて古い自民党の象徴とも言える大型公共事業・土建型再分配を再開しようなどとあらば、どの政党であれ次の選挙で惨敗を喫するであろうことは想像に難くありません。まぁ土建型の再分配だって非効率であったり、不平等な部分もある、批判の余地は相応にありましたけれど、かといって「不十分な分配」を批判した結果として「再分配の否定」みたいな状況に陥っているのが現在ではないでしょうか。それに比べれば「不十分な分配」に立ち戻るだけでも少しはマシになるように思うのですが……

 加えて八ッ場ダム建設でも原発の誘致でも、今は反対派に譲渡してもらう対価として補助金などの「旨み」を持たせてやるようなやり方が「札束で頬をひっぱたくやり方だ!」と言って声高に糾弾される時代でもあります。その代わりに、反対の立場を抵抗勢力だの利権を守ろうとしているだのとレッテルを貼り、相手の意見には一切耳を傾けないような振る舞いが好まれてはいないでしょうか。反対派を悪玉として一蹴する、ある意味で「正義の拳を振りかざす」手法が近年の主流だとすれば、まぁダム開発を進めるにしても近隣住民との軋轢は過去のそれと比しても大きなものになりそうです。もうちょっと上手に利害調整しようと、そういう志向を持った政治に転換してくれないと可能なものも不可能になってしまいます。もっとも反対派にも旨みを持たせるような、そういうやり方に対する反動勢力が政権を握って久しいだけに、今さら望みを抱くのすら贅沢なのかも知れません。

トピックス

ランキング

  1. 1

    仏再封鎖 医師「PCR数凄いのに」

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    陰性の「安心感」に尾身氏がクギ

    BLOGOS しらべる部

  3. 3

    ペイパルの衝撃 仮想通貨新時代

    ヒロ

  4. 4

    民家に犬164頭「最悪のケース」

    清水駿貴

  5. 5

    安倍待望論も? 菅首相は裏方向き

    早川忠孝

  6. 6

    伊藤と交際報道の山本舞香は号泣

    女性自身

  7. 7

    女子陸上盗撮 複数人が被害相談

    NEWSポストセブン

  8. 8

    橋下徹氏 都構想で命を狙われた

    PRESIDENT Online

  9. 9

    パワハラ原因?オスカー崩壊危機

    渡邉裕二

  10. 10

    鬼滅効果でも厳しい消費氷河期に

    新潮社フォーサイト

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。