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【書評】若者はなぜ3年で辞めるのか?城繁幸著

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若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
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at 11.10.22 
城 繁幸 光文社

21日の海外市場で円高・ドル安が急激に進み、円相場は約2ヶ月ぶりに最高値を更新した。欧州諸国の財政問題や新興国景気の先行き不透明感などを背景として、比較的安全資産とされる円資産買いに再び動き始めたのだ。またFRBが量的緩和第3弾(QE3)に乗り出すのではないかといった思惑も、円買いの材料になっているはずだ。だけど、日本が安全だとはお世辞にも言えない。年金支給開始年齢引き上げは議論されているし、いわゆる「お国の借金」は11年度末には、ついに1000兆円を突破する見通しとなっている。さすがにこのままだと、日本国債の信用もなくなり、ギリシャのようになるのではないかと焦ったのか、政治家は所得税や消費税の増税を論議し始めている。

また、連日のように新聞、テレビ、ネットでは学生の就職状況の厳しさが伝えられ、卒業を控えた学生のうち半数近くが内定を獲得していない状態にあるとさえ言われている。また、グローバル企業を中心に、日本の円高・高税率・規制などを嫌気して、必死に日本脱出を模索している。もはや毎年給料が上がって、一定年数になれば課長や部長などのようなポストが用意され、退社後は、それなりの退職金を持って悠々自適に生活出来るといった時代は終焉したといっても過言ではないだろう。

さて本書は、昭和時代に成功した年功序列制度を振り返り、疑問を投げかけ、新たな在り方を示唆してくれるという構成になっている。「若者がなぜ3年で辞めるのか?」という理由については、まず「転職市場の成熟」という環境要因を挙げている。これは06年に書かれたモノであるが、若者を中心とした転職市場は、現在も成長産業だと言えるだろう。さらに「本社一括方式から事業ごとのピンポイント採用にシフトする企業が相次いだ」という理由を挙げている。こうした需要する側(企業)の思惑を、若者達は適切に読み取り、明確なキャリアプランを構築し、そのために努力するようになったのだ。そのために「仕事に対する意識」が高くなりすぎたために、希望していた業務と割り振られた業務にギャップが生じ、辞める人が出てきたのではないかと説明している。

そして最大の要因として、若者が「タダ働きさせられる可能性があると察知したこと」を挙げている。年功序列制度は、組織が一定の成長を維持しなければ続けることは難しい。なぜなら毎年給料を上昇させたり、特定のポストにつく人材に対し、高額のボーナスを支給することが出来なくなるからだ。だけど企業は、それを隠すようにして、見せ掛けだけのポストを作って、残業代を払わなくなったり、退職金をカットしたりするのだ。ではこれから企業はどういうシステムを採用するべきなのだろうか。

やはり解雇規制を撤廃して、日本型成果主義システムを構築していくしかないのかもしれない。断っておくけれど、僕は外資系企業の成果主義システムをそのまま日本企業で採用することには反対だ。一部の人にはフィットするシステムかもしれないけど、全ての企業や人にとって、このようなシステムが適合するとは考えないからだ。外資系企業の成果主義システムは非常に冷静に、人の能力や結果を数値化してくれる。これが長所でもあり、短所でもあるのだ。マネージャーレベルになれば、特定の従業員が上位何%にいるのか、下位何%にいるのかを把握しているに違いない。そして、例えば会社のとっても偉い人が「今年は不景気だから、下位20%カットにする」と号令をだせば、機械的に人的整理を行なう事が出来る。この数字は、その時の経済状況に当てはめて決めていけばいいし、上位層の引き抜きに関しても、転職しないようにボーナスを積み増せばいいだけの話だ。

こうしたシステムは文化的な問題からも受け入れられる人と受け入れられない人がいるだろう。米国は19世紀の開拓の時代、フロンティアを求めてひた走ってきた。こうした時代背景から競争システムを取り入れたほうが、成長において効率が良かったのだ。だからこうしたシステムを日本で取り入れたからといって、成功するとは必ずしも言えない。でも、ある程度の成果主義システムを取り入れないといけないことも事実だ。近年のグローバル化は目覚しく、新興国の人口は増え続け、経済は急成長を続けている。新興国の住民と先進国の住民の給料格差が、ものすごいスピードで埋まりつつある。

そんなことも背景としながら、先進国の職は脅かされ、賃金は低下し、米国では「ウォール街占拠デモ」などが起き、格差是正を求め、若者全体に不安が広がっている。だけど、僕達先進諸国に住む人達にとって、このグローバル化の波と戦うことは避けて通れない道なのだ。「格差社会」を批判してみても、これからも益々富める者と貧しい者の差は広がっていく。だから、手遅れになる前に、早いとこ見せ掛けばかりの年功序列制度に見切りをつけて、この厳しくて、残酷な世界に足を踏み入れた方が、生き残る術は身につけられるかもしれない。

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