記事

ウォール街占拠デモの愚かな実態

G20財務省・中央銀行総裁会議で、議長国フランスを中心とした欧州諸国は、欧州債務危機の収束に向けた具体案を実施することを世界に公約した。それは、ギリシャ不安解決策、銀行の自己資本増強、欧州内の財政規律の強化へ向けた制度の見直しなどを柱とする包括策である。こうした一連の欧州不安は、90年代後半のバブル崩壊後の日本経済と酷似している。それは当時、日本政府が銀行の自己資本増強のために公的資金を注入し、100兆円規模の不良債権問題解決に乗り出したことだ。日本経済はそれから「失われた10年」と呼ばれる長期的な停滞を余儀なくされた。しかしながら、今回の欧州問題は、リーマンショック解決に向けて多額の資金を失った政府の財政余力が憂慮され、当時の日本よりも状況は悪いかもしれない。また相互連関を背景に多くの国に影響する事から早期の対応が求められる。

こうした混沌とした状況に、若者を中心として『Occupy Wall Street(ウォール街を占拠デモ)』が起きた。これは「アラブの春」と呼ばれるアジア世界で発生した前例のない大規模反政府デモや抗議活動を主とした騒動と同じように、インターネットを通じて、デモ活動が始まったようだ。しかしながら「アラブの春」とは異なり、主張があいまいで、緊張間が全く伝わってこないのが実情である。それは、恐らくリーマンショックが起きた時に公的資金を注入することにより、AIGを始め多くの金融機関を税金で救済したことに憤慨しての行動だと思うが、結局公的資金は返済されたうえに、借入金利が高かった為に政府としても黒字となった。つまりウォール街としては、占拠される理由がないのだ。また、一連の財政問題や金融規制により、金融機関も大きなダメージを負い、ゴールドマン・サックスは、第3四半期に赤字に転落するという驚愕の事態が予想され、また他の大手金融機関も軒並み減収・減益となることが予想され、今後の存続が危ぶまれている機関さえあるのだ。

金融機関は生き残りに必死で、多くの従業員を解雇し、これからも一定のペースで解雇を行なうに違いない。アメリカは、日本のように新卒一括採用制度を行なっているわけではないので、一定年数経て、ある程度景気が回復した段階で就職することも可能だが、大手金融機関において、一定年齢を超えて解雇された従業員は、次の働き口がないかもしれない。また勤務している従業員は、毎日解雇リスクと戦い、利益追求に奔走している。多くの自由な時間を犠牲にして、マーケットと対峙し、顧客満足を考えている。また専門的知識や技能を詰め込むだけでなく、日々同僚と、時に切磋琢磨し、時に蹴落とすような政治を繰り広げているのだ。派手な生活というイメージばかりが先行し、極限状態の緊張感は伝わっていないし、理解していないに違いない。そうして苦労に苦労を重ねた給料から高い税金を払い、国の税収に貢献しているのだ。

こうしたことを考えれば、一連のデモ活動には疑問しか残らない。またアメリカは「格差を許容する国」ということをある種誇りにしていた一面もある。格差は光と影を持っている。影の面は、多くの人が認識しているように、一部の人だけが豊かになり、多くの貧困層が犠牲になっているという構図であろう。光の面は、競争に勝つことが出来れば、いくらでも豊かになることが可能だということである。そしてそれこそが「自由の国アメリカ」のシンボルであったはずだ。まさに今、自由の女神が泣いているように、僕には見える。

さらに、若者達は「税金で儲けた金融業界」を占拠デモの目的として挙げているが、占拠デモに参加している年齢層の大半が20代前半だということを鑑みれば、彼らは「納税をしていない若者達」というカテゴリーになるわけである。これは酷く滑稽に見える。税金を払っていない人達が、「税金を返せ」という主張は、あまりにムチャクチャであろう。こうした主張は世界各国に広がり、イタリアではゴールドマン・サックスのビルを占拠して「Give us money」と訴えかけたようだ。つまり彼らは、キュルケゴールが言う所の富裕層に対するルサンチマン(非難)が根底にあり、同じように豊かになりたいだけなのだ。

また格差が全くない国というのは、果たして幸せなのだろうか。どれだけ技能や知能を研磨しても、意欲のない人達と同じ給料、同じ生活を強いられるのであれば、誰も努力をしなくなるに違いない。まさに共産主義の失敗を繰り返すことになるだろう。

日本にもこうした流れは波及し、『Occupy Tokyo(東京占拠デモ)』が起き、300人ほどの若者が参加したようだ。これも格差是正を求めてのことだと思うが、日本ほど格差がない先進国はないだろう。今後所得税の累進性が上昇することになれば、益々富裕層は多額の税金を払い、デモ活動を行なっている若者達に間接的に資金提供を行なうことになる。

何よりも問題なことは、こうしたデモ活動が、一昔前の活動のように中止させることが難しいということだ。それはSNSツールを活用し、呼びかけに共感した人々の集合体であるから、リーダーが存在しないのだ。つまり烏合の衆であるから、交渉する事が出来ない。恐らくこのデモの呼びかけをしたリーダーが存在すれば、「裕福になりたい」という単純明快な目的であるわけだから、金銭を渡すことによって、簡単に解決できたはずだ。

また、ウォール街占拠デモでは、若者達の公共の場でのフリーセックスや食の配給を目的に集まるホームレスでごった返しているようだ。こうした記事を目にする限り、反自由主義や反体制を掲げるような崇高な目的は微塵も感じることが出来ない。やはり一連の占拠デモをアラブの春と同一視してはいけない。


参考文献
東京でも反社会デモー新宿駅周辺に300人
Students storm Goldman Sachs building in Milan
Occupy Wall Street protesters make love as well as class war with sex and drugs on tap
メディアに情報操作されるウォール街占拠デモ実態
共産主義が見た夢 (クロノス選書)
画像を見る

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    蓮舫議員が炎上 選手応援と五輪運営批判は両立すれど行き過ぎれば非難殺到もまた当然

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    07月25日 21:53

  2. 2

    ファクターX 新型コロナワクチン副反応が日本で少し強いのはこのため? 日本のファクトを!

    中村ゆきつぐ

    07月25日 10:34

  3. 3

    中田敦彦氏、出版社抜きで電子書籍Kindle出版!著者印税は7倍に!出版社スルー時代の契機になる

    かさこ

    07月25日 08:41

  4. 4

    五輪開会式でNHKアナが台湾として紹介したことに波紋 中国国政メディアは抗議せず

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

    07月25日 14:40

  5. 5

    大坂なおみの聖火最終点火に感じた「逆方向の政治的なバイアス」

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    07月25日 08:28

  6. 6

    現職の横浜市長が任期途中に急きょIR誘致を表明 反対する3つの理由

    松沢しげふみ | 参議院議員(神奈川県選挙区)MATSUZAWA Shigefumi

    07月25日 19:48

  7. 7

    新入社員の不自然な3連続「忌引」 相次ぐ親戚の“危篤”に職場困惑

    キャリコネニュース

    07月25日 14:06

  8. 8

    東京都心部の不動産を物色する中国人 入国できなくてもリモート投資を続けるワケ

    NEWSポストセブン

    07月25日 09:04

  9. 9

    五輪応援?五輪反対?も五輪五輪ってうぜえんだよ!っていう五輪無関心派がいること忘れずに

    かさこ

    07月25日 21:12

  10. 10

    バッハ会長“長過ぎスピーチ”で…テレビが映さなかった「たまらずゴロ寝」選手続々

    SmartFLASH

    07月24日 09:20

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。