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池上彰さん、就職・転職ネタは他の方に任せていいんじゃないですか。

世界は混迷の渦と化している。連日のように各国の財政問題が取りだたされ、新聞やネットを賑わしている。各国政府はG20や首脳会談を開き、経済問題について協議を重ねているが、順調に進行しているようには見えない。そして、それを見透かしたように世界的に株安は進行し、人々に暗い影を落としている。若者は就職活動に明け暮れ、老人達は日本の多額の借金による年金不払いを心配している。また多くの人が、グローバル資本主義に向おうとしているこの国に不安を抱え、迷走を続ける政治に不満を募らせている。そうした不満を煽るように、イギリスでも暴動が起き、世界を震撼させた。

こうした僕らの不安や不満が渦巻いている実態を「分かりやすく」説明し、道標を示してくれるのが池上彰だ。彼は94年に始まった『週刊こどもニュース』で「お父さん」役を務め、丁寧で分かりやすいをモットーとして、子供から大人まで人気を博した。僕自身もたまに当番組を鑑賞していて、少ない脳内メモリに必死に知識を叩き込んでいたのを覚えている。また、多くの著書も出版されていて、とりわけ『45分でわかる! 14歳からの世界金融危機
』は大変素晴らしく、小中学生の教科書として使用しても良いのではないかと思えるほどだ。それは日本は他の先進諸国と比較して、子供達の「マネー」に対する知識が不足しているという評判を払拭することにも繋がるのではないだろうか。

このように池上彰は多くの日本人に知識と英知を養うことに貢献してきたと言える。某女史が「やれば出来る」を合言葉に自己啓発ブームを引き起こし、カリスマまで登りつめたこととは一線を画すだろう。彼女の影響により、どれほどの人が救われ、成功したのかは知らないが、少なくとも彼女の広範囲な活動を見る限り、彼女が「やれば出来る」を証明したことだけは確かなようだ。

さてそんな輝かしい実績を残した池上彰が、最近方向性が変わったのではないかと思うのだ。出演していた朝の番組の特集で、彼は学生に対し、就職活動についてアドバイスをしていた。僕はこの時初めて彼の意見に対し、疑問を感じた。さらに『池上彰の就職読本―就職難もまたチャンス
』を出したことが、その疑問を巨大なモノに変えたのだ。画像を見る そこで本書を使い、その疑問点を述べていこうではないか。最初に断っておくけれど、僕は池上彰を尊敬しているし、彼には多くの番組でこれからも活躍してほしいと願っている。ではなぜ、ここで取上げるかと言えば、どんなに才能がある人でも、「あまりに活動領域を広げすぎるのは難しいのではないか」ということを考える機会になると思うからだ。

僕が本書で疑問に思ったことは大きくわけて2つある。それをこれから順に挙げて説明していこう。

1.常識力をつけるためのアドバイスは正しいか?



彼は本書「必要な力をつけるために〜常識力・情報収集力・コミュ力」のコーナーで3つのアドバイスをしている。それは「アルバイトで目上の人と接する」、「読書で語彙、敬語を身につける」、「就活までに取りたい資格として、英語以外にもう1つ何か言語の資格を取れていると有利」である。果たしてこれは学生に対する有用なアドバイスなのだろうか。もちろん間違いではないだろうし、全く意味をなさないことはないだろうが、企業が求める人材に的確にマッチするとは言えないのではないか。

僕であればこれに変えて2つのアドバイスをする。「留学をする」、「企業のインターンシップに出来るだけ参加する」の2点である。大学生の新卒市場は年々厳しさを増し、恐らくこれからもしばらく厳しい状況が継続することになるだろう。しかし、転職市場はどうかと言うと、当然好景気と比較すれば、困難を極めるが、3年程度の企業での勤務経験を保有する「第二新卒」と呼ばれる人達のマーケットは、それなりに活気があるのが現状である。この理由は単純で「社会人としての教育費用が掛からない」、「職歴を持っているので、実務能力を判断材料に出来るので、面接時における話と実際の仕事力のギャップが小さい」ということである。

裏を返せば、大学生を採用することのリスクは、職歴がないため、教育費も掛かるし、実際にどれほどの仕事力を秘めているか分からないということだ。この企業側のリスクを軽減する為に「インターンシップに参加する」のである。近年は多くの企業がインターンシップ制度を採用していることも、こうしたギャップを埋めるための戦略であろう。これを有効に活用したほうが、アルバイトで目上の人と接したり、読書で語彙、敬語を身につけるよりも、遥かに実用的である。

またインターンシップのメリットは多くの企業が力をいれていることから、筆記試験や面接も本番の就職試験と大差がない。つまりインターンシップ経験をすることによって、小さな職歴として機能するだけでなく、特定企業の面接に突破した証明になるということだ。

留学についても同じようなことが言えるが、英語を母国語していない日本人が英語習得にさえ時間が掛かるのに、大学生活を送りながら、他の言語を習得する事は不可能に近い。そんな時間とお金があるならば、1ヶ月等の短期でもいいから留学を行い、英語力を身につけ、且つ社会経験につながる本当の「コミュ力」を身につけたほうがよほど有用なのではないだろうか。

2.「社会人はネットをそれほど見ていない」は本当か?



池上彰は本書で「ネットをいつも見ている人は、ネットの世論やネットの情報が世間を代表していると思ってしまいがちです。ところが実際には、世間の大人の多くは、ネットなどほとんど、あるいは全く見ていないのです。…(略)…学生は、ネットで情報を調べます。するとネットに上がっている情報をみんなの常識だと思い込んでしまいがちです。これは怖いことです。会社の人達は、そんなことは全然知りません。仕事で忙しい人は、つまりリア充(バーチャルでなくリアルな生活が充実している)な人達は、バーチャルなネットなど見ている暇がないのです。」と述べ、さらにツイッターでの炎上事件を例示して、ネットの落とし穴を説明している。

確かにある側面では、彼の指摘は正しい。1日中ネットと対峙し、リアルな世界と距離を置いていたのでは、就職活動どころか、一社会人として問題があるだろう。しかしながら、僕は逆に学生にネットに適切に接するべきであるとアドバイスしたい。なぜなら池上さんのご意見とは裏腹に、多くの社会人がネットを見ているからだ。金融機関には投資銀行部門という激務の代名詞とも言うべき部門がある。彼らは特定の案件に取り掛かっている時は特に忙しく、朝から深夜2時程度まで当たり前のように働く。そんな彼らですら、定期的にブログを書いたり、フェイスブックを更新したり、ツイッターに参加したりしている。

ネットの情報量は莫大で、全てを把握することは当然不可能であるし、中には有用でないものもあるかもしれない(僕のブログのようにOrz)。しかしながら、適切に使えば、OB訪問やら説明会には参加する必要がないほどの情報収集をすることは可能であろう。社会人の中には、忙しい合間をぬって現場でしか知りえない貴重な体験や考えを、ブログという形で無料で提供してくれる人達がいる。さらにツイッターでは、価値ある情報を流してくれるだけでなく、それに対する彼らの意見まで添えられている。ある程度の期間を持って、こうしたモノに触れると、その人がどういう思考プロセスをしていて、どういう考えもって、どういう結論を導き出す人なのかは、何となく理解しえるだろう。さらに彼らの読んでいる本や文献まで知りえることが出来るかもしれない。

こうしたことは僕の時代では考えられなかったことであるし、素晴らしい機会であるように感じる。僕自身、ツイッターは学ぶ機会として使用している。だからこそ、池上さんに言いたいのだ。社会人はネットを見ているし、ネットに参加している。それは情報収集ツールとして有用であるからだ。

3.まとめ



最初に断っていた通り、僕は池上さんのことを心から尊敬しているし、これからも著書を購入する1人であることには変わりはない。だけど、NHKという国営放送を行なう組織に所属経験を持ち、現在はフリージャーナリストという立場の人が、民間企業に対する就職活動について、提案を行なうことは少々無理があるのではないかと思ったのだ。当然、ここでの僕の提案が正しいと言い切るつもりも全くないし、池上さんの意見が全て間違っているというつもりもない。このブログを読んで、これから就職・転職しようとしている人が、少しでも「考える」きっかけになれば、これほど嬉しいことはない。情報は多量に溢れ、選択するのはあなた自身なのだから。


参考文献
雇用の常識「本当に見えるウソ」
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