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日本でついに空洞化時代が幕開けする

3.11東日本大震災を境に、市場としても、産業立地としても、日本国内の魅力が急激に落ち込んできている。これは原発事故によるレピュテーションの問題でもあるが、何より政府のリーダーシップの欠如による統治能力の低さが浮き彫りになったことが原因とも言えるだろう。また物理的な要因として、深刻な電力不足の問題が挙げられる。浜岡原発を強引に停止させ、定期点検中の原発の運転再開も見込めないばかりか、2012年3月までには、国内にある54基の原発はほとんどが定期点検に入る予定であり、日本全国で電力が足りなくなり、安定供給への信頼が揺らぐ可能性すらあるのだ。

僕は知人にある外資系製造業をマネージメントしている人がいるが、彼は今年の電力使用制限令は非常に厳しく、このようなことが今後継続的に起こることになれば、日本でまともな生産計画や設備投資計画は組めないと言っていた。これはマネージメントする側としては当然の意見であろう。従業員、取引先、ステークホルダーのことを考慮に入れれば、入れるほど生産拠点を日本に置いておくメリットはなくなるからだ。

パナソニックは14日、調達、物流の両本部を12年4月にもシンガポールに移すと発表した。アジアで安価な部材調達を加速するとともに、円高に対してドルでの調達を増やし、世界の取引先企業を1万7000〜1万8000社(10年度)から12年度までに約1万社へと約4割減らすなどの調達改革を進め、年約600億円のコスト削減を狙うことをターゲットとしたようだ。異例とも言えるべき製造業の本社機能の移転はこれから益々加速することになるだろう。

日本は法人税の実行税率が約40%と他国と比較しても非常に高い。シンガポールや台湾では17%、香港に至っては16.5%になっている。これでは原発のレピュテーションリスクを抱えた日本はお話にならないだろう。

さらに企業の海外移転は製造業に留まらない。金融業界においても(とりわけ外資系金融業界かもしれないが)、リーマンショック以降、シンガポールや香港への移転が加速している。震災以降は、そのスピードがさらに上がっている印象だ。特に外国資本は日本に対するホームカントリーバイアスが存在しないので、経費を落とせるのであれば、どこへでも行くだろう。極端なことを言えば、日本人の顧客がついていない商品を扱う部署は全て海外に移転させることも可能なはずだ。

もはや日本という市場は、投資をすればザクザクとマネーが溢れた「黄金の国ジパング」ではなくて、世界市場の中の「ワン・オブ・ゼム」に成り下がってしまったのだ。新聞記事や著名人が数年前から警鐘を鳴らしてきたことが現実になり、ヒト、モノ、カネが国境を越え、自由に移動できるグローバル経済の時代が本格的に幕開けしたといっても過言ではないだろう。

このようなシチュエーションで活躍出来る人材は、日本において輩出されるのだろうか。恐らく、それにはある程度時間を要することになるのではないか。

何より教育システムがグローバル経済に慣れている欧米諸国に比べて、大きく異なっている。欧米諸国では大学時代から長期的な企業インターンシップ制度があったり、ボランティア制度が充実していたりと、社会との結びつきが日本の大学と比較して優れている。また起業家精神を養う場所としても大変優れているだ。だからこそフェイスブック創始者であるマークザッカーバーグのような天才児が次から次へと現れるのだ。

日本においては東大、京大などの難関大学にしても、官僚マンや大企業に活躍する人材を輩出するための巣窟となっている。「大学別人気企業就職ランキング」なるものは、毎年あちこちの雑誌で取上げられているが、そこには進学校が「東大に○○人合格」と誇らしげに実績を掲げることと同じように、「一流企業に○○人輩出」ということが記載されている。また「大企業の社長には○○大学が強い!」なんていうモノまであり、呆れるばかりだ。当然のことながら、「今年は起業家が○○誕生」なんて話はあまり取上げられない。

しかしながら、3.11により、幸か不幸か、空洞化が急加速することになり、こうした現象は一気に変わっていくだろう。欧米大学に進学する人も当然ながら増加するだろうが、アジアに目を向ける人も出てくるだろう。ある意味で格差は進行するだろうが、競争社会としての良い面が出てくるのではないだろうか。

これからは求める人には与えられるが、求めない人には何も与えられないという時代が到来するだろう。テレビ番組などを見ると、「そこそこで…」なんていう目標を掲げる若者を見かけるが、恐らく「そこそこ」なんていうモノは存在しなくなるのではないか。「All or Nothing」という厳しい環境になるはずである。

しかしながら、リーマンショック、3.11の震災を経験した僕達は精神的に逞しくなったのは事実であり、有能な若者の間でも起業家クラスターが出来上がるのも、事実としてあるようだ。これからのグローバル経済をポジティブに受け入れ、邁進していこうではないか。

参考文献
日本経済・今度こそオオカミはやってくる
新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

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