記事

本当に日本人は金融業に向いていないのだろうか

08年の金融危機以降、世界中で金融界に対するバッシングは厳しい。日本でも東京の国際金融センター化に反対する人が数多く存在するに違いないし、東日本大震災も影響して、停滞と貧困が日本社会に暗い影を落としていることもまた事実だ。

そんな中、先日興味深い記事を読んだ。ちきりん氏の「金融業なんてむいてないし、東証もいらない」という記事だ。彼女はこの記事で主に2点のことを主張している。それは「日本人は金融業に向いてない」、「日本に証券取引所なんていらない」というものだ。僕はこの記事を読んで、僕のノミのように小さい心臓は激しく鼓動を鳴らし、握りつぶされるように酷く胸が痛み、さびしい気持ちがした。なぜなら彼女は、およそ僕なんかとは比べ物にならないくらい素晴らしい経歴と経験を金融界で積んでこられた方だと思うからだ。

僕はこの胸の痛みを抱えきることが出来ないので、彼女の掲げる2点について検証していきたいと思う。

まず一点目の「日本人は金融業に向いてない」ということについて、彼女はいくつかの理由をあげながら説明されているので、僕もそれにそって検証していこうと思う。

1)リスクとるのが嫌い



金融ってリスクに応じたリターンを得るビジネスなんだから、リスクとるの嫌いな日本人には向いてない。それってイコール「リターン得るのが嫌い」と言ってるのと同じなんだから。

僕はこの「日本人はリスクを取るのが嫌い」という悶々は、かなり時代遅れの言葉でないかと感じている。なぜならこれは転職に対して冷ややかな目線で見られていた時代によく使われた用語だからだ。確かに不況ということもあり、安定的な公務員を目指す学生も多くいるかもしれないが、ベンチャー企業の勃興や外資系企業への応募者数増加を考えればリスクをテイクする人も間違いなく増加していると言えるだろう。

2)英語が苦手



金融って、最も世界共通が進みやすいビジネスでしょ。お金はお金であって、made in Japanのお金という概念もないし、ニーズの違いもないです。どこの国の人も運用するなら10%の利子の方が5%の利子よりいいと思ってる。世界共通の商売は英語で行われるようになるのが必然。英語が苦手な日本人には向いてない。

そもそも日本が英語が苦手な理由は、日常的に使う必要性がないからであろう。ちきりん氏に「言葉って最も世界共通が進みやすいモノでしょ」と投げかけたいものである。言葉は単なる言語であって、日常的に使用する機会があればあっという間に使えるようになる。それは海外在住経験が全くない日本人が、外資系企業で当たり前のようにインドのムンバイとやりとりし、当たり前のように外国人ブローカーと「ビット・オファー」を取っていることからも明らかであろう。英語が苦手なのではなくて、必要でなかっただけだ。これからの日本企業の世界進出が加速すれば、あっという間に英語を話せる日本人は増加していくだろう。

3)ロジックも苦手



金融商品ってのは計算であり、論理の産物です。最近は“ゆとり”に加えて少子化で、大学受験でさえエッセイと面接で乗り切れてみんな算数できなさすぎ。加えて日本では論理より「みんなが言っていること」が大事なんだから、金融なんて全然向いてない。

「フラット化した世界」の著者トーマス・フリードマンは著書の中でビル・ゲイツの言葉を紹介している。「世界一創造的なテレビゲームはどこのものか?日本だ!丸暗記人間なんてどこにいるのかね…我社の優秀なソフトウェア製作者の何人かは日本人だ。秩序立てて物事を理解していないと、それより進んだ物事を作ることはできない」と。

算数が苦手で論理が苦手というのは果たして本当なのだろうか。仮にこれが事実なのだとすれば、ウォール街やヨーロッパから日本に進出する外資系企業は、社員を全て本国から連れてくるに違いない。少なくとも算数を非常に必要とし、利益の源泉となるトレーダーは全てそうするはずであろう。でも幸か不幸か多くは日本人社員で構成されている。

4)スピードが大事



金融は意思決定のスピードが生死を分けます。「熟考が大事」とか「重箱の隅まで全部、証明されないと信じない」とか「石の上にも3年」な文化には合わないです。

金融で働く日本人の意思決定スピードは本当に遅いのだろうか?これについても僕は「NO」と言わざる得ない。遅々して進まないプロジェクト、いい加減なシステムエンジニア、催促されるまでトレードのブッキングも出来ない海外のバックオフィスなどを見ていると、とてもではないが、意思決定が早く、スピーディであるとは言えないのが現状だ。

5)金融は専門知識がすべて



なのに、この国って未だに「ジェネラリスト」がエリートだとか思ってるんだからお話にならないでしょ。

(6)お金が汚いものだと思ってる・・
しかも一部の人は「モノ作りで稼いだ金は、金融取引で稼いだ金より尊い」と信じてる残念さ。

この2点については個人的感覚で書いておられるようなので意見を差し挟むことはしないが、個人的にはこれも疑問が残る。

さて最後に日本に取引所を置かないという意見であるが、僕はこれについては強く反対である。日本に取引所があることは多くの点でメリットがあると考えるからだ。日本で金融業が栄えれば、世界各国の有力な企業、投資家が集まることになり、それに付随して法律、会計、税務なども栄える。またホテル、飲食、空港、交通、教育機関にもメリットがあるだろう。これにより日本経済、企業が発展するのだ。もしちきりん氏の述べるように、取引所を潰すような暴挙に出れば、逆のスパイラルが掛かり、優良企業は日本から益々退出し、税収は上がらず、日本は廃れることになるだろう。もしそうなれば、残った人は「おちゃらけ社会派ブログ」のような高度な記事を読んでいる暇はなくなるに違いない。また日本を去っていった優良社員は日本の記事なんて読まずに海外の「有名おちゃらけブログ」なるものを英語で楽しんで読んでいるかもしれない。

さて話を戻すと、株式の流通市場が大きいと、必然的に債券の発行市場、M&A市場など投資銀行業務も拡大する。ちきりん氏も言うように日本には「お金を持っている人はたくさんいる」わけだからこそ、英語が苦手な日本人のためにも日本の市場で、効率的に投資収益を増大させる仕組みを作ることに尽力すべきであろう。

さらにこのように東京の国際的な金融サービス機能が強化されれば、金融ビジネスが活性化し、高度な金融商品は開発されるだろうし、リスクを取る事が苦手な日本人もリスクを取らざるを得なくなり、いつしかそんな言葉は消えてなくなるに違いない。そして、それは金融マンに専門知識を強制的に植え付け、個人金融資産運用の活性化をもたらすだろう。こうすれば、日本は世界的金融センターになるに違いない。

こうなれば日本は世界のフラット化にも耐えうるだろうし、何より多くの人がまたちきりん氏の素晴らしいブログを読んでいられる余裕が出来て、WINWINではないか!

参考文献



はじめてのグローバル金融市場論
画像を見る

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    田原氏 野党は安易な反対やめよ

    たかまつなな

  3. 3

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  4. 4

    コロナ巡るデマ報道を医師が指摘

    名月論

  5. 5

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  6. 6

    学術会議に深入りしない河野大臣

    早川忠孝

  7. 7

    感染リスク高い5つの場面に注意

    赤池 まさあき

  8. 8

    数字を捏造 都構想反対派の欺瞞

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    トランプ氏 逆転攻撃はほぼ不発

    WEDGE Infinity

  10. 10

    学生転落 巻き添えの女性が死亡

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。