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野田新内閣への支持率の高さをどう見るか

 マスコミ各社の野田新内閣に対する世論調査の結果が明らかになりました。予想していた以上の「ご祝儀」が寄せられたようです。

 支持率と不支持率は、以下のようになっています(前者が支持率、後者が不支持率)。これをどう見たらよいのでしょうか。

日経新聞:67%  21%
読売新聞:65%  19%
共同通信:62.8% 18.1%
毎日新聞:56%  14%
朝日新聞:53%  18%

 全体の傾向は、菅内閣末期から大きく反転し、内閣支持率がV字回復したことを示しています。発足時の支持率としては、鳩山内閣には及ばないものの菅内閣とほぼ同程度の高さになりました。

 各社の違いでは、相対的に日経新聞と読売新聞では高く、毎日新聞と朝日新聞では低く出ているのも注目されます。共同通信はその中間です。

 野田内閣が、保守的な支持層にも評判が良いということの反映かもしれません。野田首相が盛んに自民党や財界に流し目を送っていますから、それも当然でしょう。

 政党支持率も、軒並み民主党が自民党を逆転しました。これも、自民党に流れていた支持の一部が、野田さんの姿勢を見て民主党に戻ってきたためだと思われます。

 野田政権の党内融和・野党協調の路線が、自民党支持層の引きはがしに功を奏したということかもしれません。野田さんはホッとしていることでしょう。

 自民党にとっては、困ったことになりました。早期の解散・総選挙を要求しづらくなったからです。

 内閣支持率がこのような形で回復したのは、何よりも野田さん自身の目立たない人柄と政治的テクニックのお陰でしょう。とりわけ、演説のうまさと話術の巧みさが際だっています。

 さすがに、松下政権塾と街頭演説で鍛えられただけのことはあります。でも、民主政治の最大の武器は言葉ですから、それが秀でているというのは悪いことではありません。

 党内融和と野党協調を最優先した点も、国民には歓迎されたようです。「政局内閣」ですから、世論対策でポイントを稼いだのも当然かもしれません。

このような野田さんの姿勢は、民主党の党内対立や与野党の不和にウンザリしていた国民に期待感を持たせているようです。一丸となって、震災・原発対策に取り組んでくれるのではないかと……。

 後手後手に回っている復旧・復興対応に、多くの国民はいらだちを覚えていたことでしょう。いつまで経っても見通しがはっきりしない原発の事故や放射能対策についても不安感を募らせていたにちがいありません。

 野田新政権の発足によって、政府と党の団結が回復し、与野党が協調して対策に乗り出してくれるのではないかという期待が、この内閣支持率には込められています。ふがいなく信頼感に欠けた菅前政権に対する反動も大きかったでしょう。

 それに、マスコミの好意的な報道ぶりもあります。「どじょう」演説に幻惑されたマスコミは、揃って野田さんを「ヨイショ」しているように見えます。

 これはいつものことですが、「ハネムーンの100日」という言葉があるように、新政権が発足してから3ヵ月くらいは「お手並み拝見」ということで厳しい批判を控えるのが通例です。つまり、野田さんにとっては、この高支持率を維持できるかどうか、年末までが勝負だということになります。

 マスコミは、天まで持ち上げてひと稼ぎ、それを地獄まで引きずり下ろしてひと稼ぎ、というのが常套手段です。すでに、外国人からの過去の献金や巨額脱税事件で有罪判決を受けた人物の関係企業からの献金などの問題も報道され始めていますが、対応次第では、これらの問題が地獄への入り口を開くことにもなりかねません。

 それに、菅前政権の失敗を招くことになった政治の構造には、何の変化もありません。大震災からの復旧・復興と原発事故と放射被害への対応の困難性、衆参両院のねじれ状況、「三党合意」による縛りとマニフェストからの転換、それに「小沢処分問題」の処理があります。

 これに加わるのが、財務省の後押しで野田さんが悲願としている消費税の増税です。おそらく、TPPへの参加・推進という方向も次第に明確になるでしょう。

 「大連立」への傾斜や原発の再稼働問題も、前途に横たわっています。これらの諸課題への対応次第では、再び国民の失望を招いてマスコミの離反を生み出す可能性があります。

 出発したばかりでの内閣支持率の高さは、野田さんにとっては痛し痒しなのかもしれません。高いに越したことはないでしょうが、低く出発すれば、今後大きく低下する心配はなかったはずなのですから……。

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