- 2016年11月08日 08:30
【読書感想】期待はずれのドラフト1位――逆境からのそれぞれのリベンジ
1/2- 作者: 元永知宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/10/21
- メディア: 新書
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内容(「BOOK」データベースより)
高校や大学、社会人野球で華々しく活躍し期待されてプロの道に進んでも、誰もが思い通りの成績を残せるわけではない。ケガに苦しみ、伸び悩み、やがてひっそりとユニフォームを脱ぐ…。しかしそれは人生のゲームセットではない。真価を問われるのはその後だ。新たな道を歩む元ドラフト1位選手たちのそれぞれの生き方をたどる。
水尾嘉孝、的場寛一、多田野数人、江尻慎太郎、河原純一、藪恵壹、中根仁。
これらの「ドラフト1位で指名された選手たち」の名前(中根さんは1位じゃないのですが)、贔屓のチームの選手であれば「もちろん覚えている」でしょうし、プロ野球ファンなら、「名前くらいは知っている」のではないでしょうか。
なんのかんの言っても「ドラフト1位」というのは、それだけで、下位指名の選手よりも、話題になることは多いですし。
ドラフトで指名される選手には「どこの球団でも構わないから、プロになりたい」から、「3位以上じゃないと大学や社会人へ行く」「特定の球団の、しかも、ドラフト1位でなければ入団拒否」など、さまざまなグラデーションがあるのです。
基本的に「自分の希望を言える選手」のほうが少数派なんですけどね。
この本、「ドラフト1位で指名されたものの、その期待ほどの活躍はできなかった選手たち」が採りあげられています。
藪投手は「1位にふさわしいレベルの活躍」をしているのですが、35歳でメジャーリーグに移籍してからの野球人生が長かった。
傍からみれば「ずっと阪神にいれば、もっと成績は残せただろうし、お金にもなり、引退後の仕事にも、もっと恵まれていたのではないか」と思うのだけれど、本人はその「メジャー移籍後の苦闘」を自分の野球人生には必要だったもの、と認識しているのです。
この本で紹介されている「イマイチだったドラフト1位」の選手たちは、周囲の期待にこたえられるほどの大活躍はできなかったけれど、「期待されるほどの活躍ができない自分」をしっかり見つめ直して、自分にできることをやって、現場で生き残った人たちでもあるのです。
そして、彼らのその「生き延びるために工夫する姿勢」は、第二の人生においても、確実にプラスになっているんですよね。
プロ2年目の1996年は開幕からローテーションに入ったものの、すぐに右ひじを痛めて戦列を離れ、わずか9試合の登板に終わりました。そのオフに右ひじの手術を行い、1997年は中継ぎに回りました(25試合に登板して2勝1敗1セーブ、防御率2.60)。オフにハワイのウインターリーグで投げ、万全を期して臨んだ1998年シーズン。開幕前に選手生命を脅かす故障に見舞われてしまいました。
「肩にもひじにも痛みを感じることがなく、「今年こそ」と思っていたのですが、シーズン直前の練習で肩を痛めてしまいました。試合形式でバッターと対戦するシートバッティングで、カーブを投げた瞬間に右肩が飛びました。「痛っ」と思ったときにはもう遅かった。練習が終わって風呂で肩を温めて、しばらくしてもまだ痛い。次の日に起きたときには腕が上がらない状態でした。4、5日経っても痛みは取れません。それ以降、万全の状態で投げたことは一度もありません。調子のいいときで70くらいだったと思います」
しかし、故障に苦しんだことで得たものもあります。
「肩を痛めたことでベストの状態で投げることはできなくなりましたが、別のことで補って戦うことができました。スピードが出ないのならボールのキレで、ボールのキレが悪いのなら配球で。それでもダメなら、気迫で勝負すればいい。100パーセントではない状態でどう戦うか、メンタルの鍛え方、コンディションの整え方など学ぶことが多かったので、これからの指導に役に立つと思います」
河原さんは「どうすればいいのかについて、私にはいくつも引き出しがありますので、それを子どもたちに教えてあげたいと思っています。習慣と心構えは本当にすごく大切です」とも仰っています。
ごく一部の抜きん出た能力を持つ選手を除けば、プロ野球にまで来るような選手のあいだには、そこまでの大きな差はない、と多くの選手が語っています。
だからこそ、その中で生きていくには、「自分で考えて、工夫していくこと」や「つねに万全とは限らないコンディションのなかで、安定した成績を積み重ねていくこと」が大事なのです。
第二の人生で、一から料理を修業した水尾投手やIT企業に就職した江尻投手などは、プロ野球選手としての栄光にこだわらず、新しい世界で、この「適応する能力」を活かしているのです。
体力が衰え、怪我をしても、「考える力と姿勢」は受け継がれていく。
この本を読んでいて痛感したのは、「良い指導者に巡り合うことの重要性」と「指導を受ける側の心構え」の大切さでした。
どんな仕事でも、自分を指導する人や上司は、こちらからは選べないことが多いのです。



