記事
- 2016年11月05日 20:09
アカウンタビリティとは「命令責任」である
1/2
「RACIチャート」というものをはじめて知ったのは、90年代半ばのことだ。当時使っていたアメリカのERPコンサルタント会社が、要件定義段階での役割分担をRACIチャートの形にまとめてきて、なるほど、こういう整理の仕方があるのかと知った次第だ。ついでにいうと、「サプライチェーン」という言葉も、同じ時にはじめてきいたのだった。まだ日本ではほとんど知る人のいない概念だった。
ACIチャートとは、業務の上での役割分担と責任範囲(Role and Responsibility)を、分かりやすく整理するための表である。ふつう横軸の欄には、関係者や部門の名前が並び、縦の行には業務を構成するアクティビティが続く。そして、どのアクティビティは誰がどのような役割で関わり、責任はどこが持つかを書く。このとき、
ところで、いつもいっていることだが、知ることと分かることは違う。RACIチャートを見たときには「なるほど」と思ったが、自分で書こうとすると、なかなか上手く作れない。それでわたしは、しばらくの間、RACIチャートから遠ざかってしまった。また使うようになったのは、会社の中で多少なりとも組織論に関わる立場になってからである。
RACIチャート作成がなぜ、むずかしいか。それには二つの理由がある。一つ目の理由は、ConsultedとInformedの役割の違いが分かりにくいためだ。「相談される」のと「知らされる」のは、似たようなものではないか? どうやって使い分けるのか。前者は双方向のコミュニケーションだが後者は一方向だ、と解説する人もいる。だがTV放送じゃあるまいし、ビジネスにおいては、文書やメールで伝達したって、相手が意見や質問を返すことが可能だ。本当に一方的な、問答無用な伝達というのは滅多にあり得ない。
じつは両者の違いは、タイミングの違いなのである。
ところでRACIチャートを難しくする二番目の問題は、もう少しシリアスだ。それはR: ResponsibleとA: Accountableに正確に対応する概念が日本語の中にない、という問題である。ConsultやInformには、相談・伝達という訳語があって、その点では迷いはない。しかし、Accountableという英語に対応する訳語が、少なくとも’90年代半ばには、明確でなかった。辞書を引くと、「責任」とある。だがResponsibleとの違いは何なのか? たとえば研究社の「新英和中辞典」には、AccountableもResponsibleも「責任のある」と書かれているのだ。訳語がないとは、つまり日本文化の中にないということだ。
知り合いの米国人にたずねたが、どうやら彼には当たり前すぎるらしくて、かえって説明を聞いてもよく分からなかった。ただ、一つのヒントになったのは、予算権限に関係するときはどうやらAccountableらしい、ということだった。まあ、この言葉は語源的にははcount(勘定)からきているのだから、関係はありそうだ。他方、Responsibleはrespond(応答)から発生している。
さて、ご存じの通り、アカウンタビリティという言葉は、今世紀に入ってから、なぜかメディアで多少の脚光を浴び、その結果「説明責任」という訳語が登場した。苦心の訳語だったろうと想像する。だが、この言葉が流通するに及び、かえって日本文化では奇妙な誤解が広まったように、わたしは感じる。たとえば「説明責任を果たせ!」を他人を指弾したり、攻められた方は「記者会見で説明したから、説明責任を果たした」などと答える、へんてこな事態が生じた。記者会見の席上で30分間、頭を下げて、意地悪な質問にも耐えたから「責任は果たした、あとは無罪放免だろ」という理屈は、明らかに英米のAccountabilityの概念とかけ離れている。
じつは、AccountabilityとResponsibilityとは、「命令責任」と「実行責任」の区別に対応している。前者は命じたことへの責任で、後者は最後までやり遂げることへの責任である。Accountableな人は承認したり、NOといったりする最終権限を持つ。他方、Responsibleな人は、実行に関する権限や判断をある程度、まかされる。こう理解すると、両者の違いはすっと納得できよう。
ACIチャートとは、業務の上での役割分担と責任範囲(Role and Responsibility)を、分かりやすく整理するための表である。ふつう横軸の欄には、関係者や部門の名前が並び、縦の行には業務を構成するアクティビティが続く。そして、どのアクティビティは誰がどのような役割で関わり、責任はどこが持つかを書く。このとき、
R: Responsibleの4種類の関わり方で表すため、頭文字をとってRACIチャートと呼ぶ。
A: Accountable
C: Consulted
I: Informed
ところで、いつもいっていることだが、知ることと分かることは違う。RACIチャートを見たときには「なるほど」と思ったが、自分で書こうとすると、なかなか上手く作れない。それでわたしは、しばらくの間、RACIチャートから遠ざかってしまった。また使うようになったのは、会社の中で多少なりとも組織論に関わる立場になってからである。
RACIチャート作成がなぜ、むずかしいか。それには二つの理由がある。一つ目の理由は、ConsultedとInformedの役割の違いが分かりにくいためだ。「相談される」のと「知らされる」のは、似たようなものではないか? どうやって使い分けるのか。前者は双方向のコミュニケーションだが後者は一方向だ、と解説する人もいる。だがTV放送じゃあるまいし、ビジネスにおいては、文書やメールで伝達したって、相手が意見や質問を返すことが可能だ。本当に一方的な、問答無用な伝達というのは滅多にあり得ない。
じつは両者の違いは、タイミングの違いなのである。
- C: Consulted とは、事前に相談される
- I: Informed とは、事後に知らされる
ところでRACIチャートを難しくする二番目の問題は、もう少しシリアスだ。それはR: ResponsibleとA: Accountableに正確に対応する概念が日本語の中にない、という問題である。ConsultやInformには、相談・伝達という訳語があって、その点では迷いはない。しかし、Accountableという英語に対応する訳語が、少なくとも’90年代半ばには、明確でなかった。辞書を引くと、「責任」とある。だがResponsibleとの違いは何なのか? たとえば研究社の「新英和中辞典」には、AccountableもResponsibleも「責任のある」と書かれているのだ。訳語がないとは、つまり日本文化の中にないということだ。
知り合いの米国人にたずねたが、どうやら彼には当たり前すぎるらしくて、かえって説明を聞いてもよく分からなかった。ただ、一つのヒントになったのは、予算権限に関係するときはどうやらAccountableらしい、ということだった。まあ、この言葉は語源的にははcount(勘定)からきているのだから、関係はありそうだ。他方、Responsibleはrespond(応答)から発生している。
さて、ご存じの通り、アカウンタビリティという言葉は、今世紀に入ってから、なぜかメディアで多少の脚光を浴び、その結果「説明責任」という訳語が登場した。苦心の訳語だったろうと想像する。だが、この言葉が流通するに及び、かえって日本文化では奇妙な誤解が広まったように、わたしは感じる。たとえば「説明責任を果たせ!」を他人を指弾したり、攻められた方は「記者会見で説明したから、説明責任を果たした」などと答える、へんてこな事態が生じた。記者会見の席上で30分間、頭を下げて、意地悪な質問にも耐えたから「責任は果たした、あとは無罪放免だろ」という理屈は、明らかに英米のAccountabilityの概念とかけ離れている。
じつは、AccountabilityとResponsibilityとは、「命令責任」と「実行責任」の区別に対応している。前者は命じたことへの責任で、後者は最後までやり遂げることへの責任である。Accountableな人は承認したり、NOといったりする最終権限を持つ。他方、Responsibleな人は、実行に関する権限や判断をある程度、まかされる。こう理解すると、両者の違いはすっと納得できよう。



