- 2016年11月06日 11:13
19歳が開発した「スマートガン」の可能性
2/2銃シンポジウムから半年
筆者はバイオファイアの本社(クラファー氏の両親のガレージ横にある1室)でクラファー氏に2度目の取材をした。19歳の彼は連邦法上、まだ拳銃を買うことができないが、18歳の誕生日に母親が「グロック22」を買ってくれた。こちらは完全に合法だ。クラファー氏はいずれバイオファイアでゼロから銃を設計・生産しようと思っている。だが最初の本格的な模型はもともと母親が登録していた拳銃を改造したものだ。
試作品は右側から見るとグロックのように見える。だがひっくり返すと、グリップを握ったユーザーの中指が当たるところに10セント硬貨大の指紋センサーがある。センサーはグリップ内部の回路基板とバッテリーにつながっている。

クラファー氏がスマートガンの設計に使う自宅のパソコン
Photo: Matt Nager for The Wall Street Journal
指紋認証にかかる時間は約1秒半だ。クラファー氏は、ソフトウエアの働きを増やすことで0.5秒未満に短縮できると話す。指紋が一致すると、内部にある引き金のロックが解除される。中指が所定の位置にとどまっていれば、発射の準備ができている状態だ。
最悪のシナリオ
自衛手段として銃を持つ人は、起こりうる最悪の瞬間に複雑な技術が機能しないという最悪のシナリオを考えがちだ。クラファー氏はこれを承知しており、筆者の質問に以下のように答えた。
・指がぬれていたら? センサーは指紋を読み取れない。だが、クラファー氏がズボンで指を拭いてからセンサーを押すと、色が白から青、そして赤に変わった。
・手袋をしていたり手が汚れていたりしたら? バイオファイアの最初のモデルが想定しているホームユーザーは、これらの問題にあまり遭遇しない。
・妻あるいは夫が銃を使う場合は? センサーは最大10種類の指紋を登録できる。
・バッテリー駆動時間は? 約1時間のフル充電で1年超もつ。
・拳銃がハッキングされたら? クラファー氏の銃に使われている技術にアクセスするには分解する以外に方法がない。
銃業界のテスラへ
試作品を標準的な銃と同じくらい信頼できるスマートガンに仕上げるには、100万ドルかかるとクラファー氏は試算している。私が8月に訪ねた時には、コンウェイ氏の奨励金など、合わせて12万5000ドルを調達していた。
コンウェイ氏はバイオファイアに5万ドルを追加出資し、シリコンバレーからの資金調達を支援すると約束している。試作品を見て、「これは可能だ。ただ大量生産が必要なだけだ」と述べた。
‘銃会社にやる気がないのなら、私のところにその意欲と能力のある若いイノベーターがいる’
—著名エンジェル投資家のロン・コンウェイ氏
だが市場がバイオファイアを受け入れる態勢にあるかどうかは別の問題だ。
銃業界が資金提供して行われた3年前の調査では、スマートガン購入を検討すると答えた銃保有者はわずか14%だった。一方、ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学校が今年発表した調査では、銃保有者の10人に4人がスマートガン購入に好意的だった。
クラファー氏は、市場を担うのは自身によく似た世代のオーナーだとみている。銃の暴力とテクノロジーの両方がどこにでもある世界で育ち、銃を買う時に「スマホを買う時と同じものを探す」世代だ。同氏は自身の製品が従来製品より250ドル前後高くなると試算。同世代の銃オーナーはこの価格差を気にしないと考えている。
大手銃メーカーはスマートガンに乗り気ではない。クラファー氏は銃業界について、「(1900年代初頭にフォードが発売した)『モデルT』がテスラ車と競合する世界だ」と述べた。
だが銃業界におけるテスラは少なくとも今のところはない。そこに必要とされる着眼点や物の考え方からすると、最適なのは10代の若者かもしれない。
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
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