記事

日本維新の会はどこを憲法改正するのですか?

1/2
ノンフィクション作家 塩田潮=文

橋下さんは思想的にはかなりリベラル

【塩田潮】在任中の憲法改正に強い意欲を示している安倍晋三首相は日本維新の会を「改憲の友党」と位置づけて頼りにしています。維新の会は憲法問題をどうお考えですか。

画像を見る
小沢鋭仁氏(衆議院議員・元環境相・現日本維新の会憲法改正推進委員会会長)

【小沢鋭仁・日本維新の会憲法改正推進委員会会長】時代の変化に合わせて憲法改正を行うというのが維新の会の基本的な立場です。憲法9条の話にはこだわらない。戦後の憲法改正の議論は、保守は改憲で、革新は護憲というようなイデオロギー的な対立の構図の中で行われてきましたが、われわれは脱イデオロギーです。あくまでも時代の変化に合わせて社会や経済や政治の仕組みを変えていくという意味で憲法改正を考えています。

安倍さんが憲法改正を訴えているのは歓迎です。自民党の改正の中身については、具体的な協議が始まっていませんので、よくわかりません。ですが、安倍さんの場合、今まではイデオロギーをベースにした改憲論がちらほら感じられました。ただ、2回目の政権では大変、成熟し、慎重な言い回しをしていますね。上手に進めているのかなというのが感想です。

【塩田】維新の会の憲法問題への基本姿勢は、「自主憲法制定論」や「占領憲法打破論」ではなく、現憲法の基本原則を認めた上で、時代に適合しなくなった部分や、現憲法成立時からの不備や矛盾点、欠陥などを直すといった憲法修正的な考えですか。

【小沢】その通りです。橋下徹さん(前大阪市長・元党代表)を始め、主流の考え方は修正論だと私は認識しています。橋下さんは、どちらかというと、憲法に価値観は入れない。憲法は権力を縛るものだという考え方が強いです。「家族を大事にするとか、そういう話は憲法には必要ない。そういう価値判断は入れるべきではない」というのが橋下さんの意見ですね。そういう意味では、思想的にはかなりリベラルですよ。

【塩田】これから国会で衆参の憲法審査会を中心に、憲法問題について各党協議が本格化すると思われますが、協議の進行と展開をどう展望していますか。

【小沢】今、開会中の臨時国会で憲法改正案の取りまとめまで進めばベストですが、それはあり得ないと思っています。ですが、改正のテーマの議論が始まり、それを絞り込むところまでは、ぜひ目指したいですね。ただ、憲法審査会はこれまで17年、やっていますが、ずっと勉強ばかりでして、アウトプットがあったのは、国民投票法だけなんです。国民投票法の改正は、維新が提案して最終的に各党の相乗りで成立しました。それが唯一のアウトプットです。憲法自体に関するアウトプットは何もないんです。やってきたのは、国会議員の意見表明だけです。意見を詰める議論は1回もなされず、みんな言いっ放しでした。

【塩田】どうしてそういう議論ばかりだったのですか。

【小沢】共産党は憲法改正に反対だけど、憲法審査会には出る。要するに足を引っ張るわけですよ。公明党は「加憲」が基本方針だけど、改正に踏み込もうとしない。自民党は公明党にものすごく気を遣います。民進党はご承知のとおり党内は改憲派と護憲派が半々です。改正の方向で引っ張っていこうとしているのは、自民党の半分と維新だけです。

統治機構改革はわれわれの「一丁目一番地」

【塩田】維新の会はおおさか維新時代の3月26日に独自の改憲案を発表しました。地方自治の章の全面改正を含む統治機構改革、保育園・幼稚園から大学までの全教育の無償化、憲法裁判所の新設が柱ですね。

画像を見る

【小沢】この案は基本的に橋下さんのアイデアです。われわれはこの3つだけで進めたいと思っています。道州制実現を含む統治機構改革はわれわれの「一丁目一番地」の話です。時代の変化に合わせた改革が必要です。教育の無償化は今の格差の時代にとって重要で、生活に直結する話です。憲法裁判所も、安保法制が違憲か合憲かという議論などで、どこかの時点で結論を出さなければ、という意味で実務的に必要な話です。国民の皆様に理解していただけると思います。一般的に、一番、議論に上っているのが、危機管理の非常事態条項でしょう。

【塩田】維新が唱える改憲構想と、安倍首相や自民党の改憲プランとの間には、大きな距離があるように思えます。維新の改憲の3つの柱に、安倍首相や自民党が関心を寄せるとは思えません。霞が関の中央省庁の強い抵抗も予想されます。自民党が一緒になって維新の改憲案に反対する可能性もあります。各党協議がまとまらない事態も考えられます。

【小沢】それはそれでいいと思います。テーマの議論に入れるかどうかが重要です。われわれは今、他のテーマにはいっさい言及しないで、このテーマですと言う。各党がそれぞれテーマを出して、それを土俵に乗せる形に持ち込みたい。

【塩田】土俵に乗って、維新の案が一つも取り上げられないといった展開となった場合、土俵から降りたりはしませんか。

【小沢】しません。われわれは必要と思うことは賛成するし、駄目と思うことは反対する。土俵から降りることはしません。

【塩田】公明党は「加憲」を唱えていますが、土俵に上がると思いますか。

【小沢】私が今まで衆議院の憲法審査会でやってきた感覚で言うと、加憲に関しても、それほど切迫性を感じていませんね。「加憲」の事項で、最初は環境権を言っていたんですが、憲法審査会でヨーロッパ視察を行って、環境権を入れると、難しい問題があるとわかって、公明党は、慎重にやりたいという言い方になった。強いメッセージはないですね。

【塩田】民進党の対応も気になります。党としてまとまって行動ができるかどうか。党内がばらばらでも、国会での改憲案発議の議決のときは、党議拘束をかけるのでは。

【小沢】それはそうでしょうね。民進党には、憲法について、一つは「蟻の一穴論」があるわけです。緊急事態条項でもいいけど、憲法改正を1回やれば、一気に話が拡大していくから、指一本触れさせるなという議論で、旧社会党系の人たちに多い。一方、野田佳彦幹事長が衆議院の本会議場で、時代の変化に合わせて必要なら憲法改正もと思っていると言っていましたけど、われわれと同じことを言っているとつくづく思いました。両方の意見がありますが、一つにまとめられるかどうかは、わからない。

あわせて読みたい

「日本維新の会」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    中等症めぐり政府の揚げ足を取る毎日新聞 いい加減な記事を出すのは許されるのか

    中村ゆきつぐ

    08月04日 08:26

  2. 2

    強行放送!緊急事態宣言下の24時間テレビは「ジャニーズ祭り」

    渡邉裕二

    08月04日 08:04

  3. 3

    患者対応をめぐる行政と開業医の役割分担 国会議員がルール化する必要性を橋下氏指摘

    橋下徹

    08月04日 12:14

  4. 4

    環境省がエアコンのサブスクを検討 背景に熱中症死亡者の8割超える高齢者

    BLOGOS しらべる部

    08月04日 18:05

  5. 5

    東京都心に住むコストをケチってはいけない

    内藤忍

    08月04日 11:37

  6. 6

    菅政権の自宅療養方針に与党議員が批判?? 無責任な姿勢は最低なパフォーマンス

    猪野 亨

    08月04日 14:17

  7. 7

    オリ・パラ後の新国立は誰のためのスタジアム? - 上林功 (追手門学院大学准教授)

    WEDGE Infinity

    08月04日 09:49

  8. 8

    東京都で新たに4166人の感染確認 過去最多 重症者は3人増の115人

    ABEMA TIMES

    08月04日 17:04

  9. 9

    有害な言論はどこまで警戒すべきか?

    元官庁エコノミスト

    08月04日 15:07

  10. 10

    五輪マラソンで札幌は再び医療崩壊の危機

    田中龍作

    08月04日 19:18

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。