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生前退位、女性天皇問題 幅広い国民の議論こそ必要

(リベラルタイム 2016年12月号掲載)
日本財団 理事長 尾形 武寿

手話言語条例を全国で初めて制定した鳥取県の倉吉市で9月25日、「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」が開かれ、筆者も出席した。日本財団は誰もが参加し、安心して暮らせる“インクルーシブな社会”を目指して手話言語法の制定などに取り組んでおり、2014年に始まった、この催しも初回から支援している。

3回目となる今年は全国30都道府県から61チームが参加、予選のビデオ審査を通過した20チームが熱戦を繰り広げ、4月の熊本地震体験、さらに全国から寄せられた励ましを「手話語り」の形で披露した熊本聾学校・手話落語部の4人が優勝した。

秋篠宮さまの次女佳子さまには、毎回、ご出席いただき、特に今回は「全国の高校生が熱意をもって舞台を作り上げていく姿に深い感銘を受けています」と約3分間、最後まで手話を交えてあいさつされ、凛々しい立ち居振る舞いに会場も感動に包まれた。

逞しいお姿を拝見しながら、過去に国会でも議論となった「女性天皇」が何故難しいのか、さらには天皇陛下が8月、国民向けのビデオメッセージで示された「生前退位」のご意向に改めて思いをめぐらせた。

1889(明治22)年に大日本帝国憲法と共に定められた皇室典範は、戦後のGHQ(連合国軍総司令部)による改訂で大嘗祭など神事・祭事に関する規定などが削除されたものの、天皇の「終身在位」や「男系維持」など骨格はそのまま維持された。

しかし歴史を振り返れば、明治以前は天皇の意思で自由に譲位ができ歴代天皇のうち半数近くは生前退位しており、計8人十代の女性天皇も存在した。皇室典範が定められた1世紀以上前と現在では日本社会も皇室に対する国民の目線も大きく様変わりし、40歳前後だった平均寿命も、男女ともに80歳を超えている。

長い歴史の中で我国は、権威と権力を分離する世界でも稀な国体を維持してきた。しかし明治になって、本来、権威だけの象徴だった天皇に3軍の統帥権を付保したことから軍部の暴走を許す結果となった。

陛下はこうした反省も踏まえ、日本国憲法で日本国、日本国民統合の「象徴」と位置付けられた天皇の「望ましい在り方」を追及してこられた。メッセージでは「体力の低下を覚える中、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」とされている。

生前退位を認めれば、皇太子が天皇に即位され、秋篠宮さまが皇位継承順位1位になられるが、皇太子であられるわけではなく、皇太子の事務を司る東宮職は宙に浮く。退位された天皇をどう呼称するのかも決まっていないーなど様々な問題もある。

皇位の継承方法について憲法2条は皇室典範で定めると規定しており、政府は皇室典範の特例法を制定して、現天皇陛下に限って退位を可能にする方向で対応を検討中とも聞くが、社会の変化に合わせ皇室典範の改正を含めた抜本的な対応こそ、今後の皇室の安定にも必要ではないか。

女性天皇に関しても、男系天皇に皇位継承を定めた皇室典範を女性差別の象徴と非難、国際世論を天皇制批判に誘導しようとする国連の女子差別撤廃委員会の動きなどは論外としても、国民の側に「天皇は男子」と思い込む安易な傾向があるのも否定できない。

我国には古来、大事なことは議論を尽くし衆議一致で解決するDNAがある。今こそ国民がこぞって、あるべき皇室像を考える時との思いを強くする。

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