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ハロウィンに考えるPRの力と小池政治塾

「関連市場の規模で、ついにバレンタインをハロウィンが抜いた」というニュースが目に飛び込んできた。渋谷などを中心に若者の間で大変な盛り上がりを見せつつあるらしい。

「自分の頭で考える」ことをモットーとする少年だった私は、幼少の折から世間の喧噪に対しては、一貫して「ひねくれ者」であった。従って、詳しくは知らないながら、「ハロウィンとは、秋の収穫を祝い、また、死者の霊を弔ったり悪霊を追い払ったりする機会であって、“変身をする機会”ではないのでは?」などと、今でも思ってしまう。

「抜かれた」バレンタインについても、「女子から男子にチョコを贈って愛を告白するなんてのは、日本だけの珍しい形態で、別にチョコでなくとも、敢えてこの日に告白せずとも良いのでは?」と冷ややかに見続けている。

それでも、やはり雰囲気とは恐ろしいもので、レアケースながら、1度でも2月14日に気持ちのこもったチョコを有難くも拝受したりすると、その後も数年、そわそわと当日を待ってしまった甘酸っぱい思い出もある。今でも、義理チョコを「今年は○個いただいた」とほくそ笑んだり、逆に嘆き悲しんだり、実は気持ちは十分に「染まって」いる。

ハロウィンにしても、主宰しているリーダー育成塾の塾生たちがパーティをするというので「朝比奈さんも必ず仮装してきてください」などと言われたこともあるが、最終的には塾頭としての威厳を保つという大義名分をかざして、普段通りのブレザー姿で参上したものの、比較的真剣に直前まで、「うーむ。やはり戦国武将かな、いやいや、そこは青山社中だし龍馬かな」などと悩んでしまった過去を告白せざるを得ない。

私に限らず、「ハロウィンの仮装騒ぎは、若者を中心とした一過性のもので、世代を超えては広がらないだろう」と見る向きなど、冷めた意見もあるようだが、バレンタインのチョコ儀式も、元々は小学校などの一部での流行が大人にまで広がったと言われている。

本家・本来の意味・意義とは違う「日本での発展形態」についても、「模倣に始まって、本家以上の価値にしてしまう」という製造業・アニメーション技術・ラーメンその他で日本が得意としてきたパターンの繰り返しかもしれない。やはり「クール・ジャパン」は凄いと考えることも出来る。もちろん、その陰には仕掛け人(組織)がいることも少なくない。実際に、バレンタインについては製菓メーカーの影を感じなくもないし、日本発とも言えるコスプレ消費文化を世界に広める上で、ハロウィンを格好の機会と捉えている若い野心家も既にいるようだ。

いずれにしても、ハロウィンやバレンタインを見ていると、本来の中身云々よりも、そのイメージの浸透力、それを支えるPR(public relations)の力、というものの凄さ・迫力を改めて意識せざるを得ないことは確かだ。

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さて、今年のハロウィンに際して、一つの話題を奪ったのが「リボンの騎士」に扮した小池百合子東京都知事だ。その選択は、昨年の「魔法使いサリー」時からの「公約」ではあるようだが、あたかも「都政の闇」を剣で断ち切ることをイメージさせるコスプレは、さすがのPR力を感じさせる。

個人的には、霞が関改革を若手官僚として推進していた際に、当時環境大臣だった小池氏の知遇を得たが、お願いもしていないのに、自分たちの著書の書評を好意的に書いてくださったり、ご多用中にも関わらず主宰していたプロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)のイベントにゲストとして登壇してくださったり、大変お世話になった。その際、大変に印象的だったのが小池氏のPR力である。

環境大臣時に推進した「クールビズ」が典型だが、小池氏の発信力、PR力・浸透力は、普通の政治家や官僚には真似できない凄さがある。昔から、「省エネだ!冷房の設定温度をできるだけ上げよう!」などと言いながら、真夏にネクタイを締め、上着持参で働くことは、どう考えてもオカシイと、霞が関官僚を始め、多くの人が思っていた。かといって夏の軽装は全く普及せず、「服装の乱れは気持ちの乱れ」などと言われる中、例えば総理にもなった羽田孜氏が半袖のスーツを着て軽装を訴えてもまったく浸透しなかったりして、ほんの10年前まで無理なことだと考えられていたことは記憶に新しい。

そこに、小池大臣の仕掛けもあって、格好良い「クールビズ」が登場し、しかも、環境を守ると言う大義も重視されるようになり、ネクタイなしの夏の軽装が大いに浸透した。当時の「チームマイナス6%」などという標語を思い出す方も少なくないと思う。もちろん、PR力には、「PR会社の有効活用」も入るわけだが、つまるところ、メディア出身でもある小池氏は、かつても今も、「発信・PR → 浸透」に長けた政治家であると言えよう。

そんな小池氏の政治塾に、5000人近い応募があり、最終的に、5万円(女性や学生は1~2万円割引)を払って3000人近くが入塾したと言う。資金集め・PRという意味では、これ以上ないスタートを切ったといえ、都議会自民党への牽制としての威力は現時点では十二分に発揮していると思う。さすがは、PRの女王である小池氏の面目躍如だ。

ただ、本来、政治「塾」で重視されるべきは、そのPR力というよりは、どんな内容で何を教え、どんな人材を育成するかだ。おそらくはPR戦術もあって、メディアでは、「政治塾」と言われるが、小池百合子政経塾(希望の塾)が正式名称だそうで、2時間×6回にわたって、経済のことなども学ぶカリキュラムのようだ。(ちなみに、もしかすると意識した知れない松下政経塾の「経」は、経営の意味だとされている。)

資金面・人材面で小池新党をチラつかせ、都議会自民党の譲歩を迫るための「見せ球」としての集団に終わるのか、しっかりとした教育を行い、塾生間のネットワークを構築する基盤に転化するかは、これからの動きが鍵だが、同じく「塾」を運営する者としては、雲散霧消してしまった「維新塾」のようなPRだけでなく、後者も意識していただきたいと心から願う次第だ。

というわけで、小池塾について、ハロウィンやバレンタインを前に違和感を抱いた私の「ひねくれ魂」が再び首をもたげてしまったわけだが、コスプレの騎士ではなく、真の改革の士が、幕末の混乱期同様に、各種の塾から一人でも多く生まれることを願っている。

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