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- 2016年11月02日 16:14
無法地帯と化した沖縄・高江からの報告 ―「反日」に転換した基地反対運動 ― - 篠原章
2/2住民不在の反対運動という現実
土人問題で紛糾する東村高江の問題だが、そもそも反対派グループによるこうした非合法活動が、高江区や東村の住民の意を受けて行われているものではない、という点は繰り返し強調しておきたい。彼らの活動は、東村の民意でもなければ、高江区の民意でもない。ましてや、ヘリパッド移設工事が進められている隣村の国頭村或いは国頭村安波地区の民意でもないのである。高江区の属する東村の伊集盛久村長は、ヘリパッド建設を容認する立場だ。そして連日非合法活動が行われている高江区も、2006年に二度目の「ヘリパッド建設反対決議」を行って以来、区としての総意を示していない。工事が始まってからは事実上静観している状態である。
仲嶺久美子高江区長は、「住民の間でヘリパッドが話題になることは滅多にありませんが、誰もヘリパッドを歓迎していないことは確かです。だからといって、皆が抗議活動を支持しているわけでもありません。ストレスのない平和な村を取り戻したい、というのが私たちの本音です」と語る。
その仲嶺区長は、伊集東村長と共に沖縄を訪れた稲田朋美防衛大臣と会談し(9月24日)、国からの直接交付金を求めている。ヘリパッドの賛否そのものに拘泥するのではなく、騒音被害などに対する「迷惑料」を政府に望む姿勢だ。反対派グループとは一線を画した現実的な対応である。
実際、ヘリパッド反対の抗議運動に積極的に関わる高江区の住民は、昨年村議に選出された家具職人の伊佐真次氏など数名である。高江区側のヘリパッドが既に完成し、運用されている現在、高江区或いは東村としてできることは、オスプレイを含むヘリコプターの騒音や飛行経路に抗議し、改善策を要求することでしかない。ヘリパッドの工事が進む国頭村安波区側には、抗議運動らしきものが殆ど見られないのだから、安波区或いは国頭村と連携した活動も難しい。現在の抗議運動が、東村・国頭村以外の県内他地域や県外からやって来た活動家と支援者によって進められている現状は、高江区民の思いを汲み取ったものとは言いにくい。
村外・区外からやって来た活動家と支援者には、沖縄県内外の、特に自治労や教員組合に属する組合員或いはそのOBが多いことは知られているが、驚いたことに逮捕者のうち2名が外国籍だったという。以下は、9月29日に開かれた県議会で、花城大輔県議(自民党)の質問に答える池田克史県警本部長の答弁である。
池田県警本部長「7月22日以降に北部訓練場の関連で逮捕した者について申し上げますと、5名でありまして、公務執行妨害罪で3名、往来妨害罪で2名であります。その内訳を県内県外で言いますと、県内3名、県外2名で、国籍で言いますと日本が3名、韓国が2名となっております。男女別では男性が3名、女性が2名となっております」
新聞などの報道からこの数字を補うと、韓国籍2名の逮捕者の内訳は男女各1である。答弁の行われた日から、本稿が執筆された10月28日までの間に更に3名の逮捕者が出ているが、山城議長を除く2名はいずれも県外出身者である。
詳細は不明だが、これまでの逮捕者8名の内訳を見ると、県内出身の逮捕者が3名〜4名、県外出身の逮捕者が3名〜4名という構成である。そこから類推すれば、かなりの数の県外出身者が高江(或いは辺野古)で活動していることになる。逮捕者のうち2名が韓国籍であるということにも驚かされる。
「反差別」にシフトした反対運動
勿論、逮捕者の県外比率が活動参加者全体の県外比率と同じではないことは承知しているが、東村民でもなく沖縄県民でもない県外出身者が沖縄における基地反対闘争の「コア」を形成していることは間違いない。逮捕者の中には韓国籍の者もいるが、高江の反対派テントに常駐するパク・ホンギュン事務局長も、関西出身の在日韓国人と言われている。「闘争」の最前線に見られるこうした現実を突き付けられると、「沖縄の声を聴け」「沖縄の民意を無視するな」という彼らのスローガンが虚しく響いてくる。沖縄の新聞は好んで「住民」という言葉を使って辺野古や高江の抗議運動をサポートするが、この場合の「住民」には地元住民は殆ど含まれていない。沖縄県民を「住民」と見做すには無理があるが、例えその主張を認めたとしても、本土から駆けつけた相当数の応援団まで「住民」に含めることはできない。こうした「住民」が、非合法活動に平然と手を染めていることも併せて考えると、この運動の性格を、県民による純粋な平和運動・基地反対運動とは見做せないことは明らかだ。
外国籍の活動家の存在も無視できない。以前から在日朝鮮人や韓国籍の一時滞在者が、辺野古や高江の活動に積極的に関わっていることは指摘されていたが、ある在日関係者によれば、在日韓国人・朝鮮人の団体が、組織的に沖縄での活動を支援しているという。その関係者によれば、彼らの間でこうした活動は「離日運動」と呼ばれているらしい。日本から離れる運動ではなく、国際社会における日本の品位を落とすための活動だという。
もしこうした情報が事実であれば、一連の活動は、沖縄の米軍基地負担を軽減するためのものなどではなく、既に別次元の領域に足を踏み入れつつあると言わざるを得ない。「反差別運動」と言えば聞こえはいいが、先の安冨教授のコラムにも如実に表れているように、その差別は、日本という国のシステムを全否定するための「虚構の差別」である。そうであるなら、これは住民運動でも平和運動でもなく、単なる「反日運動」だ。「土人発言」を前面に出して、「沖縄140万県民は、差別と抑圧の中で辛うじて生きる少数民族であり、日本政府と日本人は植民者・抑圧者だ」と主張する反日運動は、日本の安全保障とは何の関係もない。実体のない「差別」が、基地問題に強引に結び付けられているだけだ。
高江のヘリパッド移設工事は年内にも終わり、北部訓練場の半分は速やかに返還されることになる。そうなれば反対派グループは、潮が引くように高江から撤退し、再び辺野古に集結して活動を継続するだろう。「反日」に転換した運動が、今後どのような「新手」を繰り出してくるのか、現段階では想像もつかないが、もはや「基地負担」など単なるお題目に過ぎないことは歴然としている。
翁長雄志沖縄県知事は、運動側のこうした転換を十分認識しているはずだが、その流れを食い止めるのではなく、逆に加速する政治姿勢を採っている。知事が願う沖縄の幸福とは何なのだろうか。知事は県民の命と暮らしを守る意思があるのだろうか。来年(2017年)1月にも下される辺野古埋め立てを巡る最高裁の判断を受けて、知事がどう行動するか、今まで以上に厳しく注視したい。
篠原 章(しのはら あきら)
1956(昭和31)年、山梨県生れ。成城大学卒業後、成城大学大学院博士課程修了(経済学博士)。財界系シンクタンク、千葉商科大学助教授、大東文化大学教授(駒澤大学大学院客員教授も兼任)を歴任。現在は、音楽文化、沖縄、社会経済一般などをフィールドとした評論活動を展開。大学教員時代は主として財政学を担当。日本財政学会元理事・日本地方財政学会元理事。最新刊は『報道されない沖縄基地問題の真実』(別冊宝島)。編著書にベストセラー『沖縄の不都合な真実』(共著、新潮新書)、『日本ロック雑誌クロニクル』(太田出版)、『沖縄ナンクル読本』(共編著、講談社)、『ハイサイ沖縄読本』(編著、宝島社)、『J-ROCKベスト123』(講談社文庫)等多数。
- 一般社団法人日本戦略研究フォーラム
- 外交安全保障を主軸としたシンクタンク



