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イタリアの「解雇規制緩和」は焼け石に水だった? 経済状態は改善せず、若年層の失業率は依然40%近くに

小泉進次郎議員がトップを務める自民党の小委員会が「企業への解雇規制を緩和し、成長産業への労働移動を後押しする」改革案を発表するそうです。大企業の「働かないオジサン」が社会の生産性を下げているという批判を受けたものでしょう。

そこで昨年8月にキャリコネニュースで「解雇規制を緩和したら正社員が増えた!」と報じられたイタリアではどうなっているのか、その後を追ってみました。結論から言うと、残念ながら現状は必ずしも好調とはいえないようです。(文:夢野響子)

国内に仕事はなく、若年層は「他国へ働きに出たりしている」

ロイターによると米国のオバマ大統領は10月18日、イタリアのラリパブリカ紙のインタビューで、レンツィ伊首相について「成長と雇用を維持し、機会を増やすための投資が必要だと理解している」と称賛しています。

実際、イタリアでは昨年3月の労働市場改革「jobs ACT」で解雇問題を賠償金で解決できるように規制を緩和したところ、2015年上半期の新規正規雇用者数が前年同期比で36%も増加し、非正規雇用者数が減少したなどの効果が上がったとされていました。

しかし、その1年後の今年9月現在、正規雇用の一時的な増加が経済状況を押し上げたというニュースは見当たりません。2015年9月からの1年間で雇用者数は16万人増えて0.7%上昇しているものの、失業率は11.5%前後と横ばいです。

失業率で特に深刻なのは、若年層(15-24歳)の求職者の失業率が38.8%と高いこと。職を得るために長時間労働もいとわないと答える若者が65%を占めるという調査もあります。ミラノ・カトリック大学のアレッサンドロ・ロジーナ教授は次のように懸念を示します。

「経済危機は悪化しており、若者が仕事を見つける希望を打ち砕いています。職を得るために若者は労働条件を下げたり、他国へ働きに出たりせざるを得ない状況です」

伝統的にイタリアの若者の多くは親と長く同居しており、仕事が見つからない時は親から経済援助も得ています。しかし30歳になっても仕事がないのは非常にイライラする状況に違いありません。

イタリアでも既得権益層は「老人のことばかり考えている」

彼らが家で甘やかされているのは事実ですが、若者への国からの援助が少ないのも事実です。欧州諸国の中でもイタリアはこの点で後れをとっています。その一方で、老人医療や年金には多くの予算が費やされているとされ、多額の国家債務が新世代の重い負担になっています。前出のロジーナ教授はこう訴えます。

「主導権を握っている階級は、老人のことばかりを考えています。これは、目の前のことしか考えていない政策だといえます。出産率の低下で、若者の数も減っています。過去の年代か未来の年代のどちらに投資すべきかというとき、政府はいつも過去に投資するんです。若者にもっと投資すべきですよ。未来への不確実さから、彼らは正しい判断ができないでいるんですから」

教授が指摘するイタリアの状況はあまりにも日本に似ていますが、イタリアの解雇規制緩和は今のところ小泉改革案の成功事例にはなっていません。とはいえ、政策は失敗だったと位置づけるのも早計でしょう。2014年10月時点での若年層の失業率は43.3%でしたから、そこから4.5ポイント改善してはいます。

なによりも、あのまま無策を続けていれば、いまの状況はもっと悪化していたのかもしれません。経済改革をも含めたレンツィ首相の政策の是非は、イタリア憲法改正に関する彼の提案への12月4日の国民投票で明らかになる模様です。

あわせて読みたい:解雇規制を緩和したら正社員が増えた!

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