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- 2016年10月31日 05:00
キャリアコンサルタントが自身のキャリアを描けない、という笑えない話について。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
2/2■キャリアコンサルタント資格取得は「魔法の杖」ではない
そもそも、キャリアコンサルタントの資格は、キャリアコンサルタント的な仕事をしている人が先にいて、後付けにその技能等を認定する、というものであった。そのため、国家資格化された後も「業務独占」資格位置づけにはなっていない。分かりやすく言えば、医師や看護師等は、それらの資格を保有していなければ医療行為や看護に従事できない。業務につくためには資格がマストである「業務独占」資格ということだ。
一方キャリアコンサルタントは、相談の腕が良ければ資格の有無は問わない。腕さえ良ければ、あなたも今日から「エクゼグティブ・キャリア・コンシュルジュ」等と名乗って業務を開始することは可能だ(ただし、「名称独占」資格のため、「キャリアコンサルタント」と紛らわしい資格名称を名乗ってはいけない)。
資格認定前から、キャリアコンサルタント業務を行う実務家がいたため、既得権は侵せないのだ。もちろん、資格の有無に限らず、すばらしいキャリアコンサルタントは大勢おり、今さら資格を取得しない人も多い。転職支援会社の求人を見ても、キャリアコンサルタントの資格は必ずしも求められていないようだ。まだまだ「資格より腕」の世界なのである。
キャリアコンサルタント養成講座を主催する団体の多くは、資格取得が就・転職や独立開業につながる、と謳っている。もちろんそれが過大広告である、というつもりまではないのだが、上述の現状により、例えば新卒者や再就職を希望する人が資格を取得し、即就職や開業につながるかというと、極めて難しいですよ、と言わざるを得ない。
医師が医師免許取得後、インターンや病院勤務を経てようやく独立開業に至るように、資格取得と同時に実務経験や研さんを積む、というプロセスは、当然必須なのである。いまや弁護士ですら資格取得だけでは飯を食うのに困るという。資格取得は魔法の杖ではないのだ。
■キャリアコンサルタントの地位向上を図るのは自身の言動である
問題は「安定した就職先の不足」という問題に改めて立ち帰る。「現職を定年後、第2の職場として若者にキャリアを語りたい」シニアであるとか、「配偶者に十分な収入があり、やりがい重視で手軽に働きたい」人の場合は現状でも良いかもしれないが、「自身や家族の生活を守りながら専門職として働きたい」というキャリアを志向するならば、キャリアコンサルタント資格の取得により誰もが無条件でそのような未来を描けるか、といえば、腕が伴わなければかなり厳しいですよ、ということになるだろう。キャリアコンサルタントが自らのキャリアを描けない、という笑えない現状は、受け皿もつくらずキャリアコンサルタントを量産し続けた政策に端を発した問題だ。少なくとも、キャリアコンサルタント資格取得によって一番利益を得たのは、ほかならぬキャリアコンサルタント養成団体であろう。
そしてこの現状は、博士号取得者、すなわちオーバードクターの雇用不安の問題にも類するものだ。国策として量産された博士たちの多くが非常勤としての身分しか得られず、将来に不安を抱えながら生活している現状は、キャリアコンサルタントの多くがおかれている現状と重なるものがある、と筆者には思えてならない。
フリーターやニートなど雇用不安を抱える若者を支援する、というのもキャリアコンサルタントに期待される使命である。しかしながら、当該キャリアコンサルタントの多くが非正規雇用であるとはなんとも笑えない現状だ。
勿論、「政策が悪かった」「我々を好待遇で雇用せよ」と言ったところで、それは建設的な議論とは言えないだろう。やや理想論であるが、キャリアコンサルタントの社会的な価値や地位を高めるのは、他ならぬキャリアコンサルタント自身の日々の活動そのものなのではないか。
自身がそれぞれのフィールドで、他人には代替不可能な価値ある仕事を成したとすれば、それはその人自身、ひいてはキャリアコンサルタントのキャリア向上につながるはずだ。現状を変えるのは、他ならぬ自分自身の言動なのだ、という気概を持って、筆者も恥をかきながらキャリアコンサルタントとして雑文を発信するのである。
【参考記事】
■電通新入社員自殺、「死ぬくらいなら辞めればよかった」が絶対に誤りである理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/ キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49739049-20161010.html
■公務員の給与引き上げは正しい。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49293753-20160812.html
■男性の育休取得率、過去最高なのにたったの2.65%なのは何故? (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49241912-20160805.html
■サザエさんの視聴率が急降下した本当の理由とは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/49055679-20160711.html
■「圧迫面接」は御社の経営を「圧迫」します!(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
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後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント
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