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消費税の転嫁拒否はパワハラだ。弱い者いじめは会社組織や上司だけではない。 - 浅野千晴 税理士

近くのスーパーマーケットに行って買い物をして「消費税はおまけしてよ。」というお客さんはいるでしょうか?消費税を支払う義務が定着している現在には、そういった人はさすがにいないでしょう。

しかし仕事をしている会社と会社の間にはこのような圧力がかかった提案は驚くほど多く存在します。

■消費税のおまけは小さな事業者の負担になっている


平成元年4月に消費税法が導入されて28年。導入当初は税率3%と比較的軽い負担のもとに施行されました。そのため、消費税は軽微なディスカウントの対象としてみられていました。「当店では消費税は一切頂きません。」税の導入当初は消費者の味方をすることをアピールする店舗も多く、このような張り紙をしている店を見かけたほどです。

ただし、お店が消費税取らないといっても、その店舗は実際のところ消費税を納税しています。通常なら100円の消費税は8円ですが、100円そのものを「税込み」と捉えると92円が本体価格、7円が消費税となります。そのため消費税を税込価格にすると、100円で売れるものが97円で売ることになったしまうため、利益が少なくなってしまうのです。

今の税率は8%ですから、もしこのように税金部分をおまけしていると、税率があがるごとに値引きを要求され、正当な商売ができずに利益を得ることができなくなってしまいます。

■消費税はきちんと上乗せしなければならない法律がある


経済産業省は10月21日、消費税転嫁対策特別措置法が施行された平成25年10月1日から平成28年9月末までの主な転嫁対策の取り組み状況を取りまとめて公表しました。
この「消費税転嫁対策特別措置法」とは、消費税の上乗せを取引先に拒否されたり、嫌がらせを受けたりすることを防止するための法律です。

大きな会社は、小さな会社よりも発言力が大きいものです。大企業は自分たちの優位的な立場を利用して小さな取引先や個人事業者に対し、消費税の値上げがあってもその分の負担をせずに値上げ前の金額を支払ったり、値段の据え置きを強制したりします。

また、大手企業は消費税率が高くなっても正当な理由として正規の税額を上乗せすることができますが、小さな企業にとっての値上げは会社の死活問題です。自分のところの利益を削ってまでお得意先の要望に応えようします。消費税の税率上昇をきっかけにそのようなトラブルが後を絶たない状況が多く、消費税率が変わって2年半経過した今現在でもそういった問題が発生しています。

■消費税の「買いたたき」をしている有名企業が続々


このような不当な転嫁拒否を防ぐために、中小企業庁では事前調査としてのアンケート等を送付して、得られた情報をもとに立ち入り調査等の指導を行います。「勧告」の処分になると公正取引委員会から社名と内容が公表されることになります。

経済産業省のホームページには消費税を取引先に不当に支払わなかったとして、勧告を受けた名だたる企業が掲載されています。

中でも消費税の上乗せ分を支払わないという「買いたたき」に該当するケースが86%と最も多く、スポーツ施設の運営の㈱ルネサンスや東映アニメーション㈱、家庭教師の㈱トライグループなどは取引の中で業務を委託している個人事業主に対して、税率が上昇前の据え置いて支払ったという行為が掲載されています。

会社員のパワハラやセクハラなどもそうですが、社内でも上司がその立場を利用して部下を不当に扱うことがあります。しかし強者と弱者の関係は社内だけにとどまらず、関係する会社にも影響を及ぼします。個人事業主が会社と取引しているケースなどは組織に直接属していないだけであって、その主従関係は会社員と同じです。

さらに会社員は法律上すぐクビには出来ませんが、個人事業主は単なる外注先であることから、取引先の機嫌を損ねれば、即取引停止もありえます。このような調査で発覚した実例は氷山の一角であって、物を言わずにただ不当な条件に従うだけの小さな会社は数えきれないほどあるのです。弱いものだけが沈んでいくような社会にしてはいけません。国も消費税を導入したことによる責任があるのではないでしょうか。

■不当な値下げの要求に対処するためにできることは何か


値下げを要求することは、どんな時代も商売上あり得る行為です。しかし消費税というツールで買いたたきや嫌がらせをすると、この先税率が上がるたびに余計に小さい会社にしわ寄せがいってしまうことになります。

税理士はそういった中小企業の顧問先を多く抱え、そのような経営者の悩みを聞く機会も多くあります。中小企業庁や公正取引委員会の調査やその調査官Gメンの独自の取り締まりもいいのですが、税理士というネットワークを生かせば、さらに効率的に消費税の転嫁拒否に苦しむ零細企業や個人事業主の情報を聞くことができるのではないでしょうか?

また事業者も泣き寝入りせず、きちんと報告する勇気を持ってほしいものです。

【参考文献】
■配偶者控除見直し論議。そもそもパート労働者は労働を調整して節税しているのか。(浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/49590772-20160920.html
■スポーツ選手は見た目より厳しい?ご褒美には税金が待っている (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/49318448-20160816.html
■自営業だと保育園に入れないって本当? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/49152786-20160724.html
■消費税増税延期でもバラマキ?給付金もらえます。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/48884963-20160619.html
■災害の発生時の税金の申告はいつまでにすればいいのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/48455599-20160426.html

浅野千晴 税理士

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