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ニートは死語

■「ニート」を覚えているか

みなさんは「ニート」という言葉を覚えているだろうか。

僕はなんとか覚えている。というのも僕は、最近は貧困や虐待支援をしているものの、元々は青少年支援者で、不登校・ひきこもり、そしてニートの人々をここ20年ずっと支援してきたからだ。

それがさっき電車のなかでこの記事(「パラサイト・シングルの子」に介護される親の“悲劇”)を読んでいて、ここに出てくる「ニート」の響きがなんとなく懐かしいことに自分でも気づき、Facebookにそんなメモをしてみた。

すると、Facebook「友達」の人々に、「ニートは流行語、ニートは死語だ」的書き込みをしていただき、それが自分でもすっと腑に落ちてしまった。

そういえばニートって、僕は仕事でずいぶん長く使っていなかった。

まだ「ひきこもり」は生き残っている。当然「不登校」も生き残っていて、後者はその派生語である「無登校」などが話題に登るほど、まだまだ現在進行系の用語だ。

が、ニートはいつのまにか消えてしまった。ついでにいうと、その発案者である玄田有史さんの名前も最近はすっかり聞かない。「ひきこもり」の発案者である斎藤環さんの名前は毎日のようにメディアに現れるが、玄田さんの名前はこの頃はあまり聞かなくなった。

最近はすっかりご無沙汰になってしまったが、僕は玄田さんが「ニート」を唱え始めてすぐの頃、小さな勉強会でお会いしている。あれは2003年か4年だった。僕はその頃ひきこもり支援NPOの代表で、従来の「ひきこもり」だけでは、その頃現れていた就労できない20代の若者を捉えきれないと感じていた。

そこに登場したのが「ニート」で、それはまたたく間にメディアの流行語になった。

■ニートのおかげてサポステが制度化できた

学校に属していない、働いていない、職業訓練も受けていないという言葉の頭文字をとったニートは、発祥地のイギリスのあり方を超えて、日本で独自発展した。

それは、「ひきこもり」と「フリーター」の間をつなぐ、社会参加は少しできるが就労まで固定しない何十万人もいる若者のあり方を一言で示す言葉として流通していった。

このニートという言葉のおかげで、現在160ヶ所にも広がった「地域若者サポートステーション」が制度化できたといっても過言ではない。ひきこもりから少し脱出したもののアルバイトには遠い若者たちが利用できる支援施設として「サポステ」は存在しており、それが日本に定着したのは、「ニート」という概念のおかげだと僕は思っている。

それがいつのまにか消えてしまった、

これは、最近の僕が貧困や虐待支援に仕事の中心を移動したため、若者の就労支援の中心概念であるニートから離れてしまったせいだろうか。

それであれぱ何の問題もない。むしろそれが原因だろうとさっきまで思っていた。

が、Facebookお友達が言うには、ニートは「死語」らしい。あるいは流行語らしい。

■「広義の非正規雇用」

そう思ってふりかえると、ニートという言葉をこの頃すっかり聞かなくなった。

これは、わざわざその言葉を使わなくとも、就労しない若者を注目する必要はないほどその存在が当たり前になったのか、あるいはひきこもりと非正規雇用の中間体としてのニートという概念は必要なくなったのか、ということか。

非正規雇用未満ひきこもり以上という存在を、わざわざ定義する必要がないほど、その流動的なあり方が「若者の生き方」のひとつとしてあるということだろうか。

言い換えると、非正規雇用の定義の幅広いバリエーションのひとつとして、「一時的な就労からの離脱=ニート」があるということか。

たぶん、非正規雇用が全就労者の4割になった今、時々就労から離れる形態をわざわざ(ニートとして)定義化する必要はなくなったのだと思う。

つまり、ニートは、「広義の非正規雇用」の一部として取り込まれてしまったのではないか。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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