自民党東京都連はいったい何がしたいのか。
今年7月の東京都知事選において、自民党は先に出馬を表明した小池百合子氏ではなく、元岩手県知事の増田寛也氏を推薦した。この時、自民党員であるにもかかわらず、党の方針に反して小池氏を応援した人達がいる。
当時は自民党衆議院議員(東京比例)という立場だった若狭勝氏と、豊島と練馬の区議7人だ。小池氏の地盤であった東京10区は豊島と練馬区の一部が選挙区である。選挙戦中、小池氏はこの7人の区議を「7人の侍」と呼んで英雄視し、各地での街頭演説でも党の方針に反して応援を続けるこの7人に感謝していた。
いま、この7人の処遇をめぐる問題が佳境を迎えている。それというのも自民党東京都連が7人の区議に対して離党勧告をし、「10月30日までに離党届を提出しない場合は除名処分」と告げているからだ。
都知事選では小池氏が自民党推薦候補を破って勝利した。その結果、当選直後に小池氏と会談した二階俊博自民党幹事長は「撃ち方止めだ」と語り、小池氏はお咎めなしで済んだ。小池氏を応援した若狭勝衆議院議員も口頭での厳重注意処分というきわめて軽い処分に終わった。
それどころか、若狭氏は小池氏の知事転身にともない行なわれた東京10区補欠選挙では自民党の公認を得て選挙を戦って当選。先の都知事選で増田氏を全力で応援していた自民党議員たちも、補欠選では若狭氏の選挙戦を手伝った。こうした状況があるにも関わらず、自民党東京都連は7人の区議に対して、いまだに厳しい処分で臨もうとしているのだ。
都知事選で7人の区議と同じように小池氏を応援していた若狭氏は、9月27日付けの公式ブログ( http://amba.to/2f9TwiU )でこう書いていた。【若狭勝ブログ・2016年9月27日(火)より引用】
今や、自民党東京都連の区議7人に対する処分は、憲法の理念に抵触しかねない暴挙。都連は処分を撤回すべき!
(中略)
私は仮に補欠選挙において当選できたとしても、7人の区議が除名処分となるのであれば、自民党の衆議院議員にあり続けることは、私の人生観、正義感に照らし、そして政治家としても、到底できないところです。その場合には私も離党せざるを得ません。
【引用以上】
筆者は東京10区補欠選挙において若狭氏を取材してきたが、若狭氏は10月11日の告示日、練馬での第一声となる街頭演説でこう訴えていた。
「私が正論を言えなくなったら、正論を言い続けることができなくなったら、私はもう政治家をやっている意味がないというふうに思っています。それは正論を言い続けることが、区民、都民、国民、そして国のためだと思ってやまないからです」
この演説を聞く限り、7人の区議が除名となれば若狭氏は離党するように思える。しかし、本当に離党はあるのだろうか。そこで筆者は選挙戦中の10月14日、街頭演説を終えて支援者に挨拶をしていた若狭氏に直接聞いてみた。
──若狭さん、フリーライターの畠山です。自民党を離党する可能性はあるんでしょうか?
「いやあ、ないんじゃないですかね。うん」
若狭氏は筆者の問いかけに、あっさりそう答えた。7人の区議の処遇について心配している様子は感じられない。若狭氏には7人の区議が処分されない自信があるのだろうか。
──離党の可能性はないですか。じゃあ、(7人の区議は)処分はされないということでしょうか?
「されないと僕は期待しています」
若狭氏はにこやかにそう答えると、支援者からの写真撮影に応じるために筆者の元を離れていったのだった。
(取材時の動画をアップしました→ https://youtu.be/FCeYc2Q8vT8 )
補欠選挙で勝利した若狭氏は当選後の24日、二階幹事長と会談し、7人の処遇についても話をしたという。二階氏は若狭氏と並んでのぶら下がり会見で、
「時が解決するという流れもあるだろう。ごちゃごちゃしたことを一挙に解決するのは無理だ」
と発言した。
しかし、期限である10月30日はすぐそこだ。奇しくもその日は小池氏が主催する小池百合子政経塾「希望の塾」の開塾式がある。
自民党東京都連、7人の区議、小池氏、若狭氏は、それぞれどんな動きを見せるのだろうか。