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- 2011年10月31日 22:31
「安全な食べもの」ってなんだろう
先週、食品安全委員会より「放射性物質の食品健康影響評価」が発表されました。
放射性物質の食品健康影響評価について
この内容は7月末に出された、評価書案と概ね同じです。私は7月に評価書案を読んで、次のようなことを考えました。「健康影響があるのはわかったが、他の健康影響があるような食のリスク、例えばカドミウムなどに比べてどうなのだろうか?」と。この想いは福島産のコメについて不検出のもののみを販売するというニュースをきいた際にさらに強くなりました。
食品安全情報Blogの畝山さんの著書を読んだ際に、食品のリスクの比較手法として、暴露マージン(MOE)や損失余命(DALYs)というものがあることを知りました。私はこれらの指標を食品による内部被曝にも当てはめたらどのようになるのかを知りたいと考えました。現在の暫定規制値やそれより規制値を増減させた場合に、他の食品のリスクと比べてどの程度影響が考えられるのか?それ抜きで100mSv以上で健康影響の可能性があると言われてもどうしようもないのではないか?というのが正直な感想でした。
ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)
実際、カドミウムやヒ素は通常私たちが食べる食品にも含まれています。特にコメはカドミウムの汚染が気になる食品であり、人によっては基準値を超過したり、実際に健康影響が出ている場合があると考えられています。*1そして、ちょうどそれらについて調べようとしていた矢先に、畝山さんの新著がでました。
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「安全な食べもの」ってなんだろう? 放射線と食品のリスクを考える
この本は長年にわたり、地道に「発がん物質」と向き合ってきた著者が放射性物質(だけに限らないが)による発がんの影響をどう考えれば良いのか丁寧に解説した本です。それだけに留まらず、食品の安全基準の決め方やリスク比較の考え方、現在流行の某「健康」食への警鐘。喫煙の影響やEBMについてなどにも触れられています。もちろん、私が最初に疑問に抱いていたコメとの比較も実例としてあげられていました。
また、解説が丁寧なだけではありません。リスク比較について、非常に慎重な言い回しや注記によって誤解を避けるような配慮がなされています。例えば、食品ごとのリスクを比較したコラムが数ヶ所ありますが、それぞれに「注意:過程の計算なので現実にがんになる確率だとは考えないこと」と注意書きがあります。私はそれらを見て誠実な本であるという印象を強く持ちました。
最後に、私はこの本を次のような方々に読んでいただきたいと思います。
もしかしたら、思っていたことと違うことや意外なことも書かれているかもしれません。また、読むのには多少の労力を要する本です。ですが、この本はきっと皆さんの食生活を考える上での参考になるはずです。
参考 畝山さんご自身による紹介
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20111029#p1
*1:もともと食品に含まれるカドミウムやヒ素と、原発事故で飛散したセシウムなどとを比べるべきではないという意見も耳にします。ですが、カドミウムの汚染原因には過去の鉱山開発によるものもあり、人間の活動によってもたらされたという意味では同一と見なせる部分もあります
放射性物質の食品健康影響評価について
※ 放射性物質の食品健康影響評価については、7月26日の第9回「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ」において、評価書案がとりまとめられ、同日の食品安全委員会へ報告されました。その後、パブリックコメント(7月29日〜8月27日)を経て、本日(10月27日)の食品安全委員会において評価書を確定し、厚生労働省へ評価結果を通知しました。その概要は次のようなものでした。
- 生涯における累積の実効線量がおおよそ100mSv以上で放射線による健康影響の可能性
- 100mSv未満の健康影響について言及することは現在得られている知見からは困難
この内容は7月末に出された、評価書案と概ね同じです。私は7月に評価書案を読んで、次のようなことを考えました。「健康影響があるのはわかったが、他の健康影響があるような食のリスク、例えばカドミウムなどに比べてどうなのだろうか?」と。この想いは福島産のコメについて不検出のもののみを販売するというニュースをきいた際にさらに強くなりました。
食品安全情報Blogの畝山さんの著書を読んだ際に、食品のリスクの比較手法として、暴露マージン(MOE)や損失余命(DALYs)というものがあることを知りました。私はこれらの指標を食品による内部被曝にも当てはめたらどのようになるのかを知りたいと考えました。現在の暫定規制値やそれより規制値を増減させた場合に、他の食品のリスクと比べてどの程度影響が考えられるのか?それ抜きで100mSv以上で健康影響の可能性があると言われてもどうしようもないのではないか?というのが正直な感想でした。
ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)
実際、カドミウムやヒ素は通常私たちが食べる食品にも含まれています。特にコメはカドミウムの汚染が気になる食品であり、人によっては基準値を超過したり、実際に健康影響が出ている場合があると考えられています。*1そして、ちょうどそれらについて調べようとしていた矢先に、畝山さんの新著がでました。
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「安全な食べもの」ってなんだろう? 放射線と食品のリスクを考える
この本は長年にわたり、地道に「発がん物質」と向き合ってきた著者が放射性物質(だけに限らないが)による発がんの影響をどう考えれば良いのか丁寧に解説した本です。それだけに留まらず、食品の安全基準の決め方やリスク比較の考え方、現在流行の某「健康」食への警鐘。喫煙の影響やEBMについてなどにも触れられています。もちろん、私が最初に疑問に抱いていたコメとの比較も実例としてあげられていました。
また、解説が丁寧なだけではありません。リスク比較について、非常に慎重な言い回しや注記によって誤解を避けるような配慮がなされています。例えば、食品ごとのリスクを比較したコラムが数ヶ所ありますが、それぞれに「注意:過程の計算なので現実にがんになる確率だとは考えないこと」と注意書きがあります。私はそれらを見て誠実な本であるという印象を強く持ちました。
最後に、私はこの本を次のような方々に読んでいただきたいと思います。
- 食のリスクに興味を持っている方々(特に前著の読者)
- 地域で除染や被曝防止について活動しておられる方々
- 安全な食品を食べたいと願っている方々
もしかしたら、思っていたことと違うことや意外なことも書かれているかもしれません。また、読むのには多少の労力を要する本です。ですが、この本はきっと皆さんの食生活を考える上での参考になるはずです。
参考 畝山さんご自身による紹介
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20111029#p1
*1:もともと食品に含まれるカドミウムやヒ素と、原発事故で飛散したセシウムなどとを比べるべきではないという意見も耳にします。ですが、カドミウムの汚染原因には過去の鉱山開発によるものもあり、人間の活動によってもたらされたという意味では同一と見なせる部分もあります