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- 2016年10月21日 10:17
2020年東京オリパラ選手村を、スマート・シティーのショールームに!
2/2今こそTRON・OSの復活を!
ここで少しインターネットとコンピューター技術の専門的な分野に目を向けてみましょう。かつて起こったインターネット革命は、本来であればここ日本から発信されるべきものでした。東京大学の坂村健教授が開発した「TRON・OS」と、東北大学の総長も務めた工学者・西澤潤一氏が開発に携わった「光ファイバー」という技術。
それら2つの技術があれば、日本発のインターネット、またNTTによる情報ハイウェイ構想、IT革命は日本主導で進めることが可能だったのです。しかし残念ながら、実際にIT革命を主導したのはアメリカであり、今は、WindowsとiOSが主流となっています。
今さら終わった話を、と思われるかもしれません。しかしながら、私はこのAI/IoT技術が導く社会の自動化を迎えるにあたって、再度、この分野で日本が世界をリードすることは不可能ではないと考えています。
その理由は、TRON・OSが持つ最大の特徴である「リアル・タイム・OS」という特性にあります。つい最近もGoogleが、Androidに代わるIoT専用の新しいOSの開発をリークしていました。Androidはその名のとおり、ロボティクスのことを構想したOSであったわけですが、実際にはIoTでは重たすぎ、その軽量化が進められているということのようです。
TRONも軽量化という点では課題を抱えていると言えますが、それよりも一番大事なこの国産OSの優位性は、その「リアル・タイム」という点にあります。
ご存知のように、WindowsにしてもiOSにしても、あるいは、Linuxにしても、いずれも、「リアル・タイム」OSではありません。いわゆる、命令を実行するためのタイムラグ、バッファリングという時間が常に必要となります。
それは、今後社会の自動化を進める上では大きな障害となり、人間にとっては一瞬のバッファリングと感じられたとしても、機械と機械の通信においては、非常に長い(遅い)待ち時間となってしまい、その場で起きていることに即応することが難しくなると言われています。
また、命令実行のためのバッファリングをしている間に、その場の状況が変化してしまうと、バッッファー後の命令実行は、意味のないものとなりかねないのです。繰り返しになりますが、社会の自動化を実現するAI/IoT技術においては、この「リアル・タイム」という特性が極めて重要な要素であり、その点で、このTRON・OSがこれからの時代に最も適したOSなのです。
日本にとって千載一遇のチャンスを逃すな
20年以上にわたり、組込み型OSとして生き残ってきたこの国産OSを、今こそ日本政府は支援すべきではないでしょうか。またLinux同様、オープンソースとなっている特性も活かして、ちょうどiOSがWindowsに対してiOSの中でのWindowsの実装を可能にしたように、TRONによって「すべてのOSが機能する環境」を構築するべきです。
それができれば、日本発のAI/IoT技術による「第4の産業革命」の日本からの発信と、次世代成長産業のリーダーとして世界でイニシアチブをとることは不可能ではないでしょう。
また、日本のOSは次のような理由から、他のOSにはない優位性を持っていると言えます。
日本は幸か不幸か、国として諜報機関というものを公式には持っていない国です。このインテリジェンスのなさは、それはそれで国を危うくするくらいの脆弱性ではありますが、一方では、「情報を取るためのセキュリティー・ホールを意図しない」と捉えることもできます。
どういうことかというと、「情報を抜き取る」という国家的意思がない日本の基幹OSが、今後、社会の事実上のインフラとなっていく「IoT技術における安全性」を担保するからです。つまり、「安心・安全の社会基盤としてのOS」の日本からの発信は、商業ベースの他のOSを超える社会と世界のニーズとなっていく可能性があるのです。
今グローバルでは、日本人のいわば「平和ボケ」とも言える一見お人よしで、やられっぱなしにも見える特徴が、今後は社会の基盤を支える“安心と信頼の技術”として世界に広まっていくかもしれないのです。
いずれにせよここまで述べてきたことは、日本が2020年の東京オリパラの後にも経済成長の軌道に乗り、より豊かで安心・安全な国としてあり続けるためにも、さらには、この先4年で(4年では短か過ぎるかもしれないが)まったく新しい産業分野で日本がイニシアチブをとるためにも、必要な施策であると言えます。
こうした考えに基づく施策は、本来であれば東京都、あるいは国が主導して実践されるべきプロジェクトであると思いますが、どこに耳を傾けても、従来型の街づくり、従来型の都市開発の声しか聞こえてきません。
関係者の方にはぜひ、ここまで述べてきた私たちスマート・インクルージョン研究会の考えを取り入れていただき、各種施策を実行・実現していく度量を持っていただきたいと、切に願っています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック選手村を、日本のAI/IoT技術の集積による「スマート・シティー」「スマート・コミュニティー」のモデルルーム(showcase)として打ち出すことは、技術立国としての日本の世界でのプレゼンスと経済成長を手に入れる千載一遇のチャンスです。
そして私たちスマート・インクルージョン研究会は、そのチャンスを活かして、よりよい日本社会、真のインクルーシブ社会を形成するために活動していく所存です。
次回は、2020年の日本にとってもう一つの大切な課題である「インクルージョン」について考えます。
(次回へ続く)
この記事の話し手:竹村和浩さん
●スマート・インクルージョン研究会 http://www.smartinclusion.net/
スマートインクルージョン研究会



