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ガラパゴス化する食の安全、農産品輸出を阻む規格 - 井上久男 (ジャーナリスト)

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ミラノ万博で大人気の和食要の鰹節が輸入禁止の危機に

 加工食品でも農産物と同じ課題を抱える。その象徴的な出来事が15年に開催された「食料の安全や食文化」をテーマとするミラノ万博で起こった。和食の出汁の材料となる日本製鰹節を、EUが発がん性物質が含まれるとして輸入を認めなかったのだ。そして政府間交渉で特例として万博期間だけ輸入が認められた。この遠因は、鰹節などを生産する日本の水産工場の多くが、食品製造の工程でGFSIが認める安全管理のグローバルスタンダードの認証を保有していないことにある、とされる。そうした認証を取得している日本の水産工場数は中国やベトナムの10分の1以下だという。この結果、欧州では中国産やベトナム産の鰹節が出回って、日本産は「禁輸」という事態になっている。

 また、欧米諸国からは「東京五輪での選手村の食事の食材はグローバルGAPなど国際的に認められた認証規格を持つものを使って欲しい」といった要望も出ているという。しかし、現状の日本の農家のグローバルGAP取得状況では供給能力は足りない。

安倍政権は日本の農林水産物・食品の輸出拡大を目論んでいる。15年10月1日付で農林水産省に輸出促進課を新設。水産物、加工食品、コメ・コメ加工食品、青果物、牛肉、茶などを「戦略8品目」と位置づけ、12年に農林水産物の輸出額が約4500億円だったのを20年までに1兆円に拡大する方針だ。

 しかし、農産物や加工食品でグローバルに通じる認証取得がこの現状では、輸出拡大計画は「画餅」に終わるリスクも孕む。和食(日本人の伝統的な食文化)が3年前にユネスコの無形文化遺産に登録されたことなどによって、日本の「食」に対する注目が世界でも高まりつつある一方で、日本の農産物、加工食品の安全性が世界市場では通用しない「ガラパゴス化」の危機に直面している。

 こうした現状に危機感を感じた農水省や業界団体もやっと動き始めた。たとえば、「JGAP」を運用する日本GAP協会の荻野宏事務局長は「JGAPを刷新してGFSIへ認定してもらうように働きかけを強めていく」と語る。農水省から補助金を受け、今年9月1日付で「JGAP」を「ベーシック/アドバンス」の2つに分けた。「アドバンス」を輸出GAPと位置づけ、第三者認証を強化した。

世界標準の日本規格を立ち上げ「強い農家」にも変化の兆し

 また、今年1月には、主に加工食品を対象に、日本初の国際的認証を目指す「食品安全マネジメント協会」が発足した。設立者は、味の素、イオン、ローソン、セブン&アイ・ホールディングスなど大手流通企業が中心となった。認証規格の詳細は7月に公表されたばかりだ。GFSIからの認定に向けて今後、積極的にロビー活動をしていく方針だ。

 亀山嘉和事務局長は言う。「日本の食文化を反映させた世界に通じる認証がいる。ミラノ万博で鰹節が受け入れてもらえなかったことを教訓に、日本固有の食品の安全管理のガイドラインも作って、それらを世界に訴えていきたい」

 さらに東京海上日動火災保険でも今年7月から、GFSIが認める認証規格を持った農産物や食品のPL(生産物賠償責任)保険料を一部値下げした。

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JAくるめサラダ菜部会の池田仁部会長。将来の輸出を見据え、グローバルGAPの取得を目指す(写真・HISAO INOUE)

 意識が希薄と言われた農家にも変化の兆しがある。国内市場の縮小を想定して海外市場の獲得を狙う若手農家の動きだ。JAくるめ(福岡県久留米市)サラダ菜部会長の池田仁(40)氏は現在、部会のメンバー13人と協力し合ってグローバルGAP取得に向けて準備中だ。「グローバルGAP取得を取引条件にしてくる流通は今後増えると思う。将来的には東南アジアを中心に輸出をしていきたいので、規模拡大のためには取得は不可欠と考えた」と話す。

 世界市場で勝負するなら、科学的な根拠が必要で、「日本産は安全」というイメージだけでは戦えない。「強い農家」「輸出1兆円」を実現させるためにも、したたかな戦略は欠かせない。

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