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今後の教育の現場ではICTの導入がカギになる。授業を教員の力量の限界から解き放つ工夫が必要 第25回(後編) 藤原和博氏

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みんなの介護

「ゆとり教育が悪いというより、社会全体が子どもたちを揉んで大人にしようとしていないだけ」と断言する藤原先生。校長を務めた東京都杉並区立の和田中学校時代には、地域住民と学校の職員室とが共同経営する“学校支援地域本部”を創設し、今や導入実績は全国1万校にまで広がっている。未来の日本を背負って立つ子どもたちを育てる人たちへの、藤原先生からの激励とも感じられる言葉に注目。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/中井秀彦

Googleからは“好きオーラ”は出てこない。人間的なものが最後まで残る

みんなの介護 中編「バブル崩壊以降の社会では正解がなくなっていくのに、まだ、正解を当てるのが得意な情報処理力の高い子を増産している」では、生徒の個人スマホを用いた取り組みを伺いました。藤原先生はこれまでも多くの教育改革をされてきましたが、今回お聞きした取り組みもそうなんですね。

藤原 橋下さんが大阪府知事のときに、大阪の柴島(くにじま)高校で人権教育担当の先生と一緒に研究したんだけれど、自分のスマホから意見を打たせたほうが、自己開示が図られるということが明らかになったんです。生徒にとって最も身近な端末であるスマホは、自分の一部だと思ってますからね。もっと利用が進めば、今やった授業が理解できたかどうかを1コマ終わるごとにスマホで評価することもできると思います。

私はもともと、日本の義務教育はもっと開いたほうがいいと思っていました。和田中(東京都杉並区)時代に広めたのは、地域社会の人たちを学校に入れて、地域の人と職員室とが共同経営する姿、学校支援地域本部というコミュニティ・スクールのようなもので、今は全国1万校くらいに広がっています。学校を教師だけに任せていてはダメで、いいときも悪いときも共同責任なんだ、と。悪いときというのは、いじめが起こったり、暴力行為があったりするとき。こういうことがあるとすぐ“先生が悪い、学校が悪い”とマスコミは叩くでしょ。でも、いじめも暴力も、たいていは学校が原因で起こるんじゃない。だから、家庭を含めてコミュニティがもっと主体的に関わる必要があるんです。

寺子屋だって、もともとそうだったでしょ。はじめからコミュニティスクールだったんですよ。学校を先生だけに押しつけてはいけない。それが私の義務教育改革の主眼だった。文科省が予算をつけたこともあって、かなり広まりました。学校支援地域本部は、私がやっていた杉並区では全小・中学校に置かれ、それが飛び火して奈良の全中学校区にも普及しました。今では「地域学校協働本部」という呼び名に変わっているようですが。

みんなの介護 教育を画期的に変えるために、「もっとここを改善したほうがいい」と感じることはありますか?

藤原 教員の質の向上のためには研修を充実させて…とか、現場を知らない官僚はすぐ決めちゃうわけです。10年に1回の免許更新とか、私はほとんど意味がないと思ってるんだけどね。免許更新研修のために自分が免許を取った大学に行くわけですよ。大学の先生も現場をほとんど知らないから、学校の先生が免許の更新で来てくれるのが嬉しいなんて言っているんです。これ、どっかおかしくないですか?「現場から来てくれるから嬉しい」だなんて。大学の教員をわざわざ行って、元気づけるみたいなことになってしまっています。

ITだとかいじめの対処といった研修はたしかに大事なんだけどね。それより私は、いらない研修をするより、全小中高校にWi-Fiを設置してスマホを授業に取り入れていったほうが、つまり教室を開いて、子どもたちを世の中に開かれた存在にする方が早いと思っているんです。だって、本当はもうすべての知識にタダでアクセス可能なのに、なぜ学校の中に閉じ込めて支配下に置く必要があるのか?

みんなの介護 徹底した管理教育では誰のための教育なのか、わからなくなってしまいますね。

藤原 もちろん理解が早い子と遅い子では、やり方を変える必要があります。自分でどんどんできる子は、スタディサプリのようなオンライン動画を見せることで十分知識を、身につけるでしょう。全教科、全単元ごとに、教えるのが最も優秀な先生の映像さえあれば、それによって一人で学べてしまう。学校に登校してきて、例えば、一日のうち午前中の時間は全部自分でやってもいい、と言えば、できると思う。ただし、半分くらいの子はそれだけじゃできないんです。偏差値で言うと50~60以下の子って、勉強に対する動機づけが習慣化できていないから、そこはやっぱり何かしら別の動機づけをしないと。

その役割は相変わらず、学校の先生でしょう。知識がどんなにGoogleの中に集約されたとしても、かなり最後まで残る仕事じゃないかと私は思います。今の中学・高校の先生が一生懸命やっているのは、部活ですよね。例えば、サッカーにしか興味がない子がいたとして、部活で徹底的に体力を使わせてヘトヘトにさせるんだけれど、「俺の教科は数学だから、数学だけはとにかく赤点取るなよ(笑)」みたいな感じで勉強させる。そういうアナログな人間関係によって勉強させる技術は2030年になっても残るかも。こういうことって現実にあるでしょ。人間としての動機づけは、Googleにはできない。

小学校の先生なんかによくあるんだけれど、何かが好きっていう先生は、“そのことが好き”というオーラを放ってますよね。教育って伝染・感染によって広まっていくものだから、その“好き”というオーラも最後まで残ると思うんです。たとえ全知識がGoogleの向こう側にいったとしても。Googleから“学ぶのが好きオーラ”というのは出ないでしょ、あくまでシステムだから。

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