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  • ヒロ
  • 2011年07月08日 10:00

狡猾なアメリカ

5月2日をピークに6月24日までアメリカの株式市場は7%近い下落を見ました。市場関係者はその理由をギリシャのせいにし、アメリカの債務上限問題にし、住宅問題にし、雇用問題にしました。まぁ、どれも正しいと思いますが、最大の懸念はQE2が6月末に終わることで市場が「終末」を迎えるのではないか、という恐れがあったことは事実です。

しかもバーナンキ議長はQE3について目先否定していましたのでいわゆるアメリカ国債の買い手不在を起こすのではないかという懸念も沸きあがりました。

が、市場はそれに反し、6月24日から急速な反騰となり、10日あまりで6.6%近い上昇となりました。これについて十分な理由を示した解説はあまりないと思います。

僕には気になる二つの理由があります。

まず、ムーディーズのポルトガル国債の4段階格下げ。何故この時期に4段階も下げたのでしょうか?アメリカならやりかねない理由があります。それはギリシャの延命策がひとまず完了したことでユーロ圏ではほっとしたムードが出ています。そこを叩いた、としたらどうでしょう?これでユーロ安、ドル高のシナリオを作り出せます。

二つ目に本国送金の減税策。アメリカはご承知の通り海外で稼ぐ企業が多く、その稼ぎを本国に送金するとしかるべき税金がかかります。それを減税するということはどうなるでしょう?ドル資金の本国送金であるレパトリ(Repatriation)が進むことでドル買いが進みドル防衛に繋がるということです。

この二つの策はお互いに連動することでよりパワフルになります。レパトリを進めるには本国の為替が強いほうが有利です。よって、ドルを他通貨に対して相対的に強くし、本国送金を減税という餌で進めるのです。

本国に還流された資金はアメリカ国内で投資に向かいますから株式などの買いに入りやすい、という構図がここで完成します。

多分、アメリカの大口投資家はこのシナリオを事前に察知した上でアメリカの株式が上がることを見越した、と考えれば本来あるはずのないアメリカの株高の説明はつくのです。

QE3は行わない、が、QE3に見合うものを出さねばアメリカの景気を浮上させられないという焦りが連銀にあったのは明白です。そして一部連銀の委員からもQE3を完全否定しないコメントがあったことから何らかの対策が出るのではないかと市場関係者が期待していた向きはあります。

僕はこれが一つの答えかもしれないと思っています。が、そうだとすればかなり狡猾な手段だといわざるを得ません。逆に言うと相当手詰まり感があるともいえるでしょう。アメリカ議会は日本と同様ねじれてしまっているため、法案は通常の1/3程度しか通らず、しかも重要なものが通らない状況になっています。

ならば中央銀行による金融政策のみで市場をドライブしなくてはいけない状況が当面続くわけで「手の駒」の状況を考えればかなり厳しいと言わざるを得ません。この数日ニューヨークでは金価格が大幅に上昇しています。この意味が何を意味するのか、これはマーケットと向き合っている人への重要なクイズといえるのではないでしょうか?

市場を政策で読んでいくと面白いドラマを見ているような気がするのは僕だけでしょうか?

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