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香港は屈しない、雨傘精神は死なず

岡崎研究所

 9月5日に行われた香港の議会選挙で、民主派が本土寄りの法案を拒否しうるだけの議席を維持したことについて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の同日付社説が、「雨傘革命」は潰えておらず、中国政府は香港民主派への妥協を迫られる状況が続く、と述べています。要旨次の通り。

雨傘革命の精神は未だ死んでいない


 9月5日に行われた議会選挙で、香港の有権者は間違いようのないメッセージを発した。それを代表するのが23歳の大学生ネイサン・ロー(羅冠聰:Nathan Law Kwun-chung)である。今回の選挙は、雨傘革命の精神が未だ死んでいないことを見せつけるものとなった。

 ロー氏は、2014年に香港のビジネス街を75日間にわたって機能停止させた街頭抗議運動の指導者であった。裁判所は8月に、同氏に政府合同庁舎を占拠した罪で、120時間の奉仕活動を命じたが、その彼はまもなく議員としてその庁舎に戻ることとなる。

 香港議会選挙は、親中派有利の仕組みになっているにもかかわらず、今回の選挙では民主派が70議席中30を獲得し、議席を3つ伸ばした。民主派の一般得票率は58%であるから、普通の選挙をすれば過半数を得ていたことになる。過去数年と同じく、民主派議員は議事妨害を行い、法案を拒否することが可能になった。

 民主派内には、ロー氏を含む7人の反中勢力「本土派」が含まれている。本土派の中には中国からの独立を主張する者もいくらかいるが、今回の選挙で勝った7人を含めほとんどは香港の自治権を求める穏健派である。彼らは、中国政府に対して、香港返還時の約束であった民主化移行を求めている。

 しかし、香港内の親中派は、ロー氏らへの批判を止めておらず、それがかえって、彼らの勝利を際立たせている。中央政府による自由弾圧や、香港特別区行政長官を選挙で選ばせなかったことが逆効果になっているのは明らかである。

 中国は選挙の結果にどう対応するか、今決めなければならない。賢明なアプローチは、民主派にエンゲージし、彼らの要求に応じることであろう。次なる1つの試金石は、来年、強硬派の梁振英(Leung Chun-ying)行政長官に2期目(5年)の任期を与えるかどうかである。

 今回の選挙の教訓は、中国が香港にさらなる民主主義と自律性を与えるまで、ロー氏やその運動を勢いづかせた民衆の不満は収まることがないということである。

出典:‘Hong Kong’s Young Democrats’(Wall Street Journal, September 5, 2016)
http://www.wsj.com/articles/hong-kongs-young-democrats-1473100722

 9月5日に行われた香港の議会選挙において、「民主派」が70議席中、30をとり、議席を3つ伸ばしました。これにより、「民主派」が重要議案の拒否権を獲得することとなりました。このことをウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2年前の「雨傘革命」の精神は、死滅せず続いている旨論評しています。

根強い反中意識

 選挙前には、一部では「制憲派(親中派)」が圧倒的に有利であると報道されましたが、選挙結果が示すものは、香港において民主化への動きや反中意識が根強く続いていることであり、それは、本件社説の言う通りです。

 「民主派」内部のほとんどの議員が、「一国二制度」のもとで香港の自治権を求める穏健派ですが、中には明確な反中勢力(「本土派」)が7人含まれています。これら「本土派」には、「雨傘革命」に関係した若者たちが多く、彼らは香港の中国からの明確な独立を主張しています。今回の選挙が中国に与えた衝撃は、中国が香港に対しさらなる民主主義と自立性を与えるまで、香港市民の不満は容易には収まらないだろう、ということです。

 中国政府は香港の独立を断じて容認せず、との立場をとってきました。本年5月に共産党序列3位の張徳江が台湾を訪問した際には、「ごく少数の者が香港独立の旗印を公然と掲げているのは『本土』の名のもとに『分離』を目指す行為である」と非難しましたが、『分離』はこれまで、新疆ウイグルとチベット自治区の過激派にのみ使ってきた言葉です。

 香港では、昨年、書店の関係者5人が相次いで失踪した事件や、今回の選挙への介入など、「民主派」に近い人たちを締め付ける事件がいくつか起こっています。今後、中国政府が親中派の行政長官や国会議員らを使いながら、どこまで「民主派」、「本土派」を牽制することが出来るのか、緊張した不安定な状況が続くものと思われます。

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