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  • 2011年08月12日 21:06

中国のスポークスマンのあるべき姿

 天下の『人民日報』に鉄道部鉄道部の王勇平報道官が「信じるか信じないかはあなた方の自由だが、私自身は信じる」「生命の奇跡としか言いようがない」と記者会見で述べたことが話題になったことを受け、本来スポークスマンとは如何にあるべきかという論説が掲載されており、興味深かったのでこれについた少し。

 念のため上記の発言の背景などを簡単に述べると、「私は信じる」発言は、事故車両を埋めたことを記者から追求された際に、 「当時、現場の救援情況は複雑困難で、救護者が列車先頭部分を土に埋めたのは、救援作業の便宜を図るためだった」と述べた後、記者から再度つっこみを受けたのち、「私は現場からそういう報告を受けている」に続けて発せられたものです。

 下の「奇跡」発言は、中国救援活動の収束が宣言された後になって、なぜ2歳の幼児が救出されたのかと、これまた記者につっこみを受けた際に発せられたものです。どちらもネットで話題になりましたが、言うまでもなく悪い意味で話題になったもので、いろいろこうした発言を模した風刺的な書き込みも目立ちました。

 この記事は、こうした状況を受けて本来スポークスマンとは如何にあるべきかということを示すために書かれたものです。結構長い記事で、4頁に渡る記事になっており、1頁目でスポークマンについて以下のように述べております。

 彼らの1つ1つの言動がよく新聞の一面に掲載され、彼らもよく世論の渦に巻き込まれ、様々な質疑を受ける。彼らは情報の伝達者で、情報のフィルターです。彼らは消防員(消火隊)であるにもかかわず、時には逆に火に油を注ぎぐことがある。職業的に高い総合的な資質を求められるが、あまりに低級な過ちを犯すことがある。これは中国のスポークスマンだ。 

ここで覚えておいてもらいたいのは、「消火隊」「フィルター」といった言葉です。この後中国の(だめな)スポークスマンの例が型ごとに並べられていますが、私的にはあまり関心をひきませんでした。話を進めたいので、一挙に結論部分に飛びます。

 この長い長い論説の結論は中国は有能なスポークスマンを育てなくてはならないということと、かつて『人民日報』の記者を勤め、現在精華大学の副教授をしている王君超氏の以下の発言です。

 最大の原則は、真相第一、技巧第二にすること。記者発表の社会的影響は、永遠に「事実を尊重し、真相を告知する」というただ1つの原則にただ従うだけ。偽物の嘘偽りの記者発表を行うことは、包装がどんなに立派だったとしても、どんなにすぐに効果が現れるものであったとしても、すべて浮き雲(はかないもの)でしかない。 

はっきり言いますタテマエです。このブログでも何度か繰り返しておりますが、中国人はホンネとタテマエをきっちり区別して使用します。というか、この両者を区別できる者のみがいわゆる「大人」として高い評価を受け、区別できないものは相手にされません。

 この記事のホンネは先に見た、「消火隊」「フィルター」です。つまり、スポークスマンの仕事は如何に世間の世論をうまくそらすか、真実をそのまま公表するのではなく、大衆が知りたがっていること、大衆の好奇心を納得させるのに必要な情報のみを公表するか、そういう頭のきれる者がスポークスマンになるべきで、そういう人材を養成しなくてはならないというのがこの論説のホンネです。

 それを最も良く表しているのが、この論説に掲載されていたスポークスマンがいろいろな世論の指揮をとっている様を絵にしたものです。



 これを見るとよくわかりますが、これがホンネで様々な不満や好奇心に満ちた世論があり、それらを前にしてスポークスマンは悠然と指揮をとるが如く、世論を誘導していって、火消しに努めるというのが、あるべきスポークスマンの姿だと言いたいのかと思います。

 ところが、今回王勇平報道官は記者に取り囲まれ、半分やけくそのような状態でいろいろな発言をしました。その結果、それが更に火に油をそそぐ様なことになってしまったので、間違っても今後このようなことをするな、きちんと世論誘導するのが、スポークスマンの仕事だと言っているわけです。

 中国において伝統的にマスコミは「(共産)党の舌と喉」と言われています。つまり党に都合のよい宣伝をうまく行うのがマスコミというわけです。実際、高速鉄道事故の報道について、中国当局がマスコミに対し、様々な圧力(報道規制)をかけたことは日本でも大きく報道されました(『毎日新聞』「中国高速鉄道事故:強まる報道規制 当局批判トーンダウン」など)。

 ただ、どうしも報道規制は書かれた記事を見てからになるので、後手に回らざるを得ません。それに実際、こうした規制が暴露されたり、反感を示す記者がいていろいろ不都合もあったので、そうなる前にうまく処理しろというのが、この論説の本当に言いたいところかと考えました。

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