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  • 2011年07月28日 21:31

中国と周辺国の関係が悪化したのはアメリカの謀略?

 『中国新聞網』に久々にこれぞプロパガンダという感じの記事「外媒:和平崛起面临挑战 中国如何“重返亚洲”」(外国メディア:平和的勃興は挑戦の時を迎えている、中国はどのように“アジアに戻る”)が掲載されており、興味深かったのでこれについて少し。

 「外国メディア」となっておりますが、元記事はシンガポールの中国語新聞『聯合早報』ですので、もとから中国語で書かれた記事を転載しているにすぎません。

 この記事は一言で言ってしまえば、南沙諸島などの領土問題から中国と東南アジア諸国の関係がおかしくなっていたり、中国脅威論が提唱されたりしているが、それらは全てアメリカの陰謀であり、中国はこういうアメリカの策略にのらないようにしなくてはいけないというものです。

 何と言っても最初の前提からして、アメリカが没落し中国が勃興してきたが、それでもアメリカは世界最強の国家である。アメリカの目的は世界のリーダーであり続けることであり、いかなる国が勃興してきても脅威と見なす。アジアの発展や一体化などはアメリカにとって受け入れがたいのであり、アフガン政策もそこそこに目標をアジア、特に中国にねらいを定めてきたとしております。

 その戦略というのが、以下のとおりとしております。(1)中国脅威論を吹聴し、アジア各国に中国の発展に対する警戒や心配感を植え付ける。(2)アメリカのアジア太平洋地位における利益と指導者地位が動揺してはいけないことを公言する。(3)同盟国などを用い、価値観に基づく外交を行い、中国を孤立させる。(4)中国と周辺国家の対立を引き起こして、地域的・歴史的問題を国際化し、中国を終わりのない紛争の中に押し込む。

 こういう見方もできるのかと思わせてくれる、なかなか興味深い意見ではあります。プロパガンダ記事を読んでいて唯一面白いのは、こういう視点はなかったということを気づかせてくれることです。

 確かに中国にしてみれば南沙諸島にしても尖閣諸島の問題にしてもアジアにおける領土問題であり、当事者間で解決すれば良いことと言うのが基本的な主張です。そのためこうした問題にアメリカが何故出てくるのだという感情はかなり根強い反感となっております。

 周辺国にしてみれば、中国のような国と1対1でやりあったら、太刀打ちできず、とんでもないことになりかねない(いいようにやられてしまう)という発想があります。だからこそASEANでまとまって交渉するか、アメリカに助けてもらうかということになっていると考えます。

 ところが、中国の前提は中国こそが平和を愛する国家であり、話し合いを重視する国家となっているので、周辺国が中国を何の理由もなしに恐れるはずがないということになります。しかし、現実問題としてベトナムで反中国デモが起こったりするなど、いろいろ東南アジア諸国との関係がおかしくなっているわけですから、こういう現実をどう説明するかということが求められます。 

 そのために用意されたのがこうしたアメリカ謀略論ですが、東南アジアと中国との関係が悪化するとよく聞かれるのはいつものことです。ただ、全く根も葉もないものかというと、全くそうとも言い難い面もあるのが興味深いところです。

 例えば、アメリカはロバート・ギルピンなどが提唱した「覇権循環論」を本気で信じているのではないかと思える行動も多く、如何にして覇権を維持する負担を減らすか(他国にその分のを負担させるか)を考えている面もなきにしもあらずかと思います。

 それに80年代の貿易摩擦の時、アメリカの批判を真っ向から受けた日本にしてみれば、アメリカ以上に発展しつつある国に対し、アメリカがどのような感情を向けてくるのかを目にしています。そのため、先に述べた「アメリカの目的は世界のリーダーであり続けることであり、いかなる国が勃興してきても脅威と見なす。」というのは全くピントはずれというわけではないかと考えます。

 確かに「火のない所に煙は立たない」との諺通り、全く根拠がない話は説得力がありません。そのため、如何にも信憑性があるように思わせることを述べるのがプロパガンダ記事の鉄則であり、興味深いところです。そういう意味でも、久々に見た典型的なプロパガンダ記事で興味深かったので紹介させていただきました。
 

 ちなみに、この記事では、如何にして中国はこうした状況に対処していくべきかということも述べられておりました。(1)アメリカの戦略を冷静に分析すること。(2)中国は世界第二位の経済大国であり、外貨保有高は世界一なのだから、こうした資源を有効に活用すること。(3)新興国やヨーロッパとの関係などもうまく利用すること。(4)力(パワー)こそが外交の基礎であり、力がなくては外交もありえない。

 如何にもいつも通りの中国の主張です。不思議なものですが、返ってこういう主張を目にする方がいつも通りと安心してしまいます。

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