記事

アジアと欧米で落差激しい新聞発行部数 --世界ニュースメディア大会リポート

2/2

生き残りへ社内改革を推し進めた仏ルモンド

 フランスの左派系夕刊紙「ルモンド」(1944年創刊)は、2010年、破たんの間際まで追い込まれた。メディア環境の激変に対処できず、負債が1000万ユーロ(約11億円)に膨らんだが、ラザード銀行の銀行家マチウス・ピガッセ氏、ネットビジネスで財を成したザビエル・ニール氏、イブ・サンローランの共同経営者であったピエール・ベルジェ氏が新たに投資をすることで生き延びた。

 ルモンドグループの社長となったのがルイ・ドレフュス氏だ。「イノベーションの機運を取り入れる」、「才能ある編集スタッフに投資する」、「新たなデジタル戦略を導入する」を柱として、新規まき直しを開始した。

 2011年以降、ルモンドはいくつもの新しい製品、パートナーシップ、イニシアティブを繰り出してきたが、鍵はスピードだった。かつては新たな取り組みを行うのに数年かけていたが、今は3か月単位で考えている。

 オフラインの新たな試みの1つは2014年から始めた「ルモンド・フェスティバル」。読者が編集スタッフと触れ合う場を提供する。様々なテーマについてのディベートが行われる。

 世界ニュースメディア大会で注目されたツールとして、動画、VR(バーチャル・リアリティー、仮想現実)、メッセージ・アプリがあった。

 動画活用については、最も成長度が早いウェブサイトの1つと言われるRefinery29がその実践を紹介した。

リンク先を見る
(「Refinery29」の画面)

 Refinery29は2005年に米国で発足し、現在は毎月、2000本を超える記事を掲載する。ウェブサイトへの月間ユニークビジター数は2500万人。モバイルを含めたすべてのプラットフォームでは1億7500万人。電子メールの購読者は200万人だ。

 収入源はブランド品のスポンサー広告が主だが、「ファッションブランドを売るためのサイト」という定義をはるかに超え、女性たちの意識を変えるサイトとして成長している。内容はファッションや美容以外に環境、政治、女性問題、ヘルス、スポーツ、エンタテインメントと幅広い。昨年11月には英国版、今年6月にはドイツ語版をローンチした。フランス語版の開設も視野に入れる。昨年の総収入は8000万ドルを超えた。

 ブランド情報の拡散には「インフルエンサー」を使う。これはソーシャルメディアを通じて情報を拡散する影響力がある人物のことで、Refinery29は一定の報酬を支払っている。

 動画ブームが続く中、Refinery29の動画担当者は「あまり人手もお金もかけずに取り組みたいメディアへのアドバイス」を披露した。

 「鍵はなるべく簡単に自前でやってしまうこと、既存のツールやプラットフォームがあれば、それに乗ること」。

 最初の頃の動画の1つは、スタッフがスケートボードをする様子をほかのスタッフが撮影し、アップロード。「すでにある機材を使って作った。特に品質が高いものでなくてもよかった」。動画は記事に付随した形で制作し、動画の後に記事のアドレスを付けた。フェイスブックのインスタント・アーティクルズにも参加。「特にマーケティング費用を使って宣伝しなくても、検索のアルゴリズムが宣伝してくれる」。ツイッターやメッセージ・アプリ「スナップチャット」の「ディスカバー」チャンネルにも参加している。

次はVRやメッセージ・アプリ

 VRを利用したジャーナリズムについてのワークショップやセッションに参加してみた。

 スマートフォンを段ボール製ビューアーにくっつけて360度画面を体験するワークショップでは、「ジャーナリズムにどう使えるのか、まだはっきり見えない」などの意見が出た。ワークショップのオーガナイザーによると、「VRは実験段階にあり、何をやってもよい」、「どんどんトライしてみるべきだ」という。

 メッセージ・アプリや「ニュース・ボット」(自動的にニュースを収集して配信するプログラム)の活用例も複数のセッションで取り上げられた。

 モバイル・アプリの利用が盛んなブラジルでは、メッセージ・アプリ「ワッツアップ」に対応していない新聞社はないという。

 「メッセージ・アプリを通じて読者にリーチしないと、新聞社は生き残れない」(教育プログラム「ナイト・センター・フォー・ジャーナリズム・イン・ザ・アメリカス」の創始者ローゼンタール・アルヴェス氏)。

 ソーシャルからメッセージ・アプリへ。これからのジャーナリズムの形が見えてきた。

****補足です****
メディア展望」9月号に拙稿以外に興味深い記事がたくさん掲載されています。  例えば「パナマ文書取材の舞台裏」では、この報道にかかわった共同通信の澤康臣記者の講演記録が出ています。

 掲載から1か月を少し過ぎますと、ウェブサイトからダウンロードできますので、アーカイブ号も含め、ご覧ください。

 

あわせて読みたい

「新聞」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。