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自民党長期政権の政治経済学

 日経経済図書文化賞を受賞した斉藤淳さんの『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)を紹介したいと思います。なお、菅山さんの『「就社」社会の誕生』については、以前このブログでも紹介しました。太田さんの本は、まだブログで紹介していなかったみたいですね。

 本書は、自民党長期政権が続いた理由を現代的な政治経済学のアプローチで、ゲーム理論と実証分析を駆使して明らかにしていく。長期的な関係をもとにした繰り返しゲームの枠組みで、有権者と政治家の間の利益供与の仕組みを分析する。自民党の政治家が利益誘導政策を取ることは、票の獲得に結びつくが、生産的なインフラを作って、経済成長を果たしてしまうと、有権者がもはや政治的な力を必要としなくなる。一方、非効率な公共事業を集票のために推進すると地方の財政基盤が弱体化する。自民党長期政権は、このようなジレンマを抱えていた。自民党下の長期政権の特徴を、有権者の間で自民党からの利益配分にありつくための競争をもたらし、有権者が自民党に対して支持の強さを説明するという「逆説明責任体制」がなりたっていたと著者は指摘する。

 第2章は、分析の枠組みの提供であり、基本的なゲーム理論を用いて有権者と政治家の間の利益誘導をめぐる実態をモデル化する。第3章は、経済成長と人口動態と自民党の支持率の関係を示し、都市化が自民党の基盤を弱体化させていたことを示す。第4章は、内閣支持率と総選挙のタイミングを、第5章は自民党の集票力と補助金の配分の関係を実証的に明らかにする。第6章は、高速道路と新幹線という交通インフラが開通した地域では、その後、自民党の得票率が下がるという統計的事実を示す。第7章は、その分析を受け、交通インフラができた地域の自民党政治家が離党したことが政界再編と選挙制度改革につながったことを示す。第8章は、選挙制度改革と平成の大合併が、利益誘導型の仕組みを弱体化させ、政権交代の背景になったことを示す。第9章は、長期政権の日本の公共政策にもたらした帰結を議論する。

 比較的な単純な枠組みのもとで、生産的なインフラがもたらされると自民党の支持率が下がってしまうという事実発見や政権交代への流れを実証分析している点が素晴らしい。読みやすくまとめられているという観点からも本としての完成度が高い。この本をもとにすることで、今後、政治学、経済学双方の分野で精緻な分析が進められることが十分に期待できる。

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