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電通デジタル不正「未必の故意」はなぜ生まれたか?

電通のデジタル不正事件(記者会見の件もあってこういう呼び名になっているらしい)は、広告ビジネスの組織に関する問題が底流にあるのではないかと思ってる。

先日の大学の講義でも、このケースのことを取り上げた。後期はメディアについて突っ込んだ講義をするので、ネット広告の構造を知るのに恰好の課題だと思ったのだ。

あと、ネットに飛び交う「なんでもかんでも電通陰謀論」などに染まらないようにすることも大切だと思うし。

で、事件を報じる記事を見せて、まず学生にペーパーを回して質問を受けた。当然だけど「なぜ?」という質問が多かったので、日経ビジネスオンラインの記者会見詳報を見せた。

そして、会見の最後の言葉に注目して説明した。以下のくだりだ。

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「いま調べられている範囲のなかでは、最初から『故意にやった』ような内容は確認できていない。まず最初にミスがあり、あるいはミスとはいえなくても(社員の)力量と時間が足りず、発注いただいた通りに広告が掲載されなかった、あるいは、あとから気づいたら(発注された通りに)なっていなかった。たとえば広告主と約束した期間とズレたことを、そのまま報告せず、期間内に掲載されたかのように、事実と異なるレポートを故意にした、というケースはある。ですから報告を改ざんした、という意味での悪意は認められているが、ご質問のように最初から何かしてやろうということは現時点ではない」(太字筆者)
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読んで思ったのだが、これは、典型的な「未必の故意」ではないだろうか。この言葉の定義の細かな説明は省くけれど、「当初から明らかな犯意はないけれど、そうなるかもしれないと思って行動する」という心理状態のことをいう。

最初から誤魔化そうとか、多めに請求する意図はない。ところが約束通り出来ないことがどこかでわかっていても、「言いそびれた」ようなことではないかと推察できる。

というのは、これはデジタル分野だけでなく、広告ビジネスで起きやすいことだからだ。その原因の一つに、広告代理店の営業が「安請け合い」してしまうことがあるのではないだろうか。

「いや~この中吊り広告、いい出来だね~」

「ありがとうございます!」

「で、たとえば下の帯の色だけど『山手線は緑』『中央線はオレンジ』みたいにしたらおもしろいかなあ」

「あ、いいですね!ぜひやりましょう!」

で、この営業が戻ってデザイナーにこの話をする。

「できるわけないだろ!掲出まで1週間ないんだから!」

「え~!?“できる”って言っちゃったよ……」

みたいな話は、まあここまでひどくなくても、結構あったりする。こういう印刷だったら「すいません。できません」ということで謝るわけだが、さて今回のようなデジタル出稿ではどうなんだろうか。

競争の中で、できないことを「できます」「やります」と言って収拾がつかなくなるのは、どの業界でもあることだ。それは「専門知識が足りない割に勢いだけはある営業」によって起こることが多い。

だから、この問題を考えていくと広告代理店の職種や組織のあり方に関わる話になると思う。続きは明日。

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