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高まるトルコの反米感情 - 岡崎研究所

 トルコ国民の大半が今回のクーデター未遂事件への欧米の関与を確信し、反西側感情が高まり、トルコの西側離れが加速していると、8月20日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は以下の通りです。

CIAの工作員がクーデターを支持

 クーデター未遂事件後のトルコは陰謀説で溢れている。政府寄りの新聞は、CIA工作員がクーデターを指揮した、米退役将軍が反乱側に巨額の資金を送った、米国がエルドアン殺害を命じたなどと主張している。

 ある世論調査によると、トルコ人の84%がクーデター首謀者は外国の支援を受けていたと考え、70%以上が米国の関与を疑っている。エルドアンは、米国が、クーデターを画策したとされるギュレン師を引き渡さなければ、西側との関係は悪化すると警告した。

 こうなった責任の一端は西側にもある。西側諸国はクーデターを直ちに糾弾せず、状況を見極めようとしていたとの疑念をかき立てた。粛清が始まると、オーストリア首相はトルコのEU加盟協議の一時停止を提案し、ドイツの裁判所は在独トルコ人の集会にエルドアンが中継で参加することを禁じた。

 野党も含めトルコの政治家は、西側はクーデターに伴う大量殺戮よりも、クーデターへの政府の対応に対して批判的だと非難した。

 しかし、政府の弾圧に歯止めが利かなくなっていると欧州が批判するのも無理はない。兵士、裁判官、教師、警官、ビジネスマン等、8万人以上が逮捕、解雇、停職処分になり、ジャーナリスト100人近くが拘束され、100以上の報道機関が閉鎖された。政治犯を収容するため一般の犯罪者が釈放された。粛清された人々の多くは、ギュレン師との関係は薄弱と思われる。

 6月後半以降、エルドアンの支持率は47%から68%に急上昇し、エルドアンが開いた集会には100万人以上が集まり、野党の指導者たちも駆けつけた。

 エルドアンは、西側と違って直ちにトルコへの支援を申し出てくれたとプーチンを称賛した。こうした賛辞や、昨年のロシア戦闘機撃墜についてエルドアンが表明した遺憾の意は、プーチンの耳に心地よく響いただろう。しかし、プーチンはトルコと西側との亀裂を利用したいだろうが、ロシアとトルコはシリア問題で対立していて、両者の蜜月関係には限界がある。

 ある西側の外交官は、現時点でトルコがNATOを離れる心配はない、ただ、プーチンは今後もトルコを米国やEUと対立させようとするだろうと言う。かつて親西側だったトルコ政府は、この10年、西側から徐々に離れていったが、クーデターに対する欧米の曖昧な対応の後、この傾向は加速しつつある。

出 典:Economist ‘Duplicity coup’ (August 20, 2016)
http://www.economist.com/news/europe/21705286-turks-are-convinced-europe-and-america-had-something-do-attempted

 エコノミスト誌は、トルコでのクーデター未遂事件の後、トルコの反西側感情が高まっていると述べています。クーデターはCIA等西側の陰謀であったとの報道が広く行われていること、エルドアンがクーデターを画策したと非難しているギュレン師を米国が引き渡さないこと、多くの西側諸国がクーデター後のトルコ政府の対応を非難していること、などが原因であるといいます。

 その結果、トルコの西側離れが加速しつつあると言っていますが、現在起きているのは、主として反西側感情の高まりであり、政策の面で西側離れが加速しているとまでは言えないでしょう。

トルコはNATOの一員

 トルコと西側との関係で重要なのは、トルコがNATOの一員であることです。クーデター未遂後も、トルコがNATOから脱退すべきであるとの議論は聞きません。米国とトルコの共同空軍基地であるインジルリク基地については、バイデン米副大統領のトルコ訪問で、その安定的運用が確認されました。トルコと西側との関係の土台は揺らいでいないと見てよいでしょう。

 トルコと西側の関係で最近重要になっているのは難民問題です。去る3月、トルコからギリシャへの難民流入対策を柱とする「EU・トルコ声明」が発表されましたが、クーデター未遂後も、この合意は反故にされていません。難民問題については、今後も引き続き、トルコはEUと協力していくものと見られます。

 トルコと西側との関係で注目すべきはトルコとロシアの急接近です。エルドアンは、クーデター未遂事件でトルコ政府を応援してくれたとしてプーチンを称賛し、8月9日にロシアでプーチン大統領と会談し、昨年11月のトルコによるロシア戦闘機撃墜に遺憾の意を表明し、両国関係を正常化することで合意しました。NATOの弱体化を目指すプーチンにしてみれば、トルコの接近は絶好の機会と考え、今後とも画策を試みるでしょうが、前述のようにトルコはNATOを離脱する考えは持っていません。トルコとロシアはよりを戻したと見るべきで、両国の接近を過大評価すべきではないでしょう。

 ロシアとの関係と並んで注目すべきは、トルコと米国との関係です。一番のとげは、ギュレン師の問題ですが、米国はクーデターを画策したという証拠がなければ引き渡さないといっているので、この問題は糸を引くでしょう。

 他方でトルコと米国はシリア北部のトルコ国境近くでのISに対する攻撃で協力しています。IS掃討という点では、トルコは米国と利害を共有しています。シリア問題でも基本的立場を共有しています。トルコの反米感情はなかなか収まらないでしょうが、外交、軍事面では是々非々の関係を保っていくでしょう。

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