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今、どんな「政治教育」が行われているのか?高校の先生に聞いてみた (1/3)

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■今後の政治教育はどうあるべきか?

—2022年度以降、地理歴史は「歴史総合」と「地理総合」に、公民科は「現代社会」を廃止して、今の主権者教育も盛り込んだ「公共」に科目が再編されます。今後の政治教育に求められるものは何でしょうか。

西田:「生活に政治は関係ない」という多くの生活者の認識が「合理的」でこそあれ、端的に誤った認知に基づくものであることを周知していく必要があるように思います。

国立大学の学費は、法律によって決まっているし、電車の運賃でさえ鉄道事業法という法律によって決まっていく。電車のダイヤも変更する際は国交省に届け出を出さなければならない。ビジネスで契約をするなら民法の影響を受けるし、最新のドローン・ビジネスや自動運転車、民泊事業の日本での展開も、法律との整合性がカギになっています。そう考えていくと、生活の中で政治家が無関係という領域を探す方が難しいわけですよ。愛とか友情くらいでしょうか(笑)

東京五輪後、2020年代以後の日本の社会は、投資理由も見当たらず、社会保障費が重い足かせとなり明らかにダウントレンドな社会になるでしょう。そのような局面における政治の舵取りはとてもデリケートなものになってくるはずです。右肩上がりの時代には丼勘定でいけたけれども、下り坂の時代には既得権益とのタフなネゴシエーションになります。しかし、そのような中で政治は自分達と関係ない、発言しないでいるとそこにしわ寄せがくるのは明白です。この将来像を直視すべきではないでしょうか。

先日、小学校の先生に「西田さんは暗いことばっかり言っている。子供たちが暗い気持ちになってしまう」と怒られました(笑)。でも、我々の社会が直面するのは、客観的にはそういう社会だということは認識しないといけない。認識したうえで、政治などどうでも良いというのはそれはそれで各自の選択なのでありだと思いますが、いまの日本社会ではそもそも選択の前提が自覚されていない。日本における政治教育、主権者教育はこの主題にコミットすべきではないでしょうか。

さらに言えば、最近政治参加としてよく語られる「選挙以外にも政治はある。社会を良くする、地域を良くすることが大事だ」という話は、これは行政的な問題であって、ちょっと問題がずれている、ずらされている気がします。この問題は、官庁や公務員などの行政が担うのか、NPOが担うのかという担い手の問題であって、やはり政治教育というときには、政治の本丸を見据える必要があるように思えます。つまり、結局次の選挙で、自民党なのか民進党なのか、あるいは共産党なのか、政党と候補者を選べる主体、主権者を育てるための方法ということです。ただこれを政治的中立のもとでというのは大変困難ですから、せめて政治的価値の問題を扱える場を作る必要があるのではないでしょうか。「大きい政府がいいのか、小さい政府がいいのか」。「外交はタカ派がいいのか、ハト派がいいのか」「緊縮財政がいいのか、緩和策がいいのか」といったように、多くの政治的な主題はあくまで暫定的に二項対立図式の組み合わせで考えられます。自分の認識と好みを自覚し、選択の対象、政党や候補者を分析できるようにしながら考えてみたり…などというのはどうでしょうか。

社会科教育というのは出発点が他の科目と違って、教育を通して公民的性質を身につけていくということが目的に含まれているますから、先生方も知識はもちろんのこと、議論をしていくような授業を作りたいと思ってらっしゃるのではないかと思います。政治教育、主権者教育でもぜひ新しいプログラムを開発していただきたいですね。

渡辺:学校のレベルにもよるかもしれませんが、私は以前、そうした価値の問題を扱う授業ができました。4ヶ月ぐらいかけて、日本の累積債務について調べさせ、考えさせた上で、「増税か、それとも減税するか」を最終的に判断させたのです。

例えば「増税しちゃうと、消費が減退するから、それは避けた方がいい」などの知識を前提として、数値も出して理解を深めていく。時間をかけて順番にやっていけば、できると思います。皆さん1年生でしたが、最終的には本当に素晴らしい小論文が書けました。

黒崎:これまで通りに基礎的な知識も大事にしながら、最終的には価値の問題を考えるまで取り組みたいですね。学校は、単発ではなく中長期的に教育が行える機関ですので、実社会が抱える社会課題について、“考える場”を提供することが大切です。

原田:そのような観点で、小学校からの積み上げでカリキュラムを考えている自治体もありますね。小中高のそれぞれの段階に応じて知識や経験を積み上げていく主権者教育の方法もあるでしょう。

黒崎:今、主権者教育がいわば”外付けのハードディスク”になってしまっていることがそもそもの問題点です。しかし、そもそも公教育の本来的な意義を考えれば、主権者教育は学校教育の中核に位置づくべきものです。今後、主権者教育を“内部化”し、学校教育の中核にきちんと位置付けていくことが重要です。

西田:戦後間もないころに使われていた教科書『民主主義』を編纂した法哲学者の尾高朝雄が、後年、政治と教育について面白いことを書いています。少し乱暴にまとめると、「教育が中立でなければいけないというのは当たり前だ。だけど、政治と教育を比較すると、政治について批判的な眼差しを持った、批判能力を持っている主権者を教育において作らなければいけないんだから、教育の方が尊重されるのが当然だ」という趣旨です。

現状の課題を踏まえると、まず教育の現場を守るためのルール作りが必要だと思います。基本的にはノイズから隔離しつつ、きちんと管理職がマネジメントしつつ、最終的には現場の先生方が創意工夫と試行錯誤をこらせる環境を擁護する具体的な仕組みを規定しなければいけません。

原田:本当に必要なことですから、きちんと法令やカリキュラムで定めていくべきですよね。

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