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今、どんな「政治教育」が行われているのか?高校の先生に聞いてみた (1/3)

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■政治の現場と教育の現場の「遠い距離」

-先ほど、弁護士が授業をサポートするという話が出ましたが、政治家と一緒に授業を作るという考え方はいかがでしょうか。

渡辺:今回、お話ししたかったことの一つに、”学校と政治がすごく離れてしまっている”という問題があります。「政治的中立」という言葉が一人歩きし、「先生たちが偏向しているんじゃないか?」という社会の目もあり、学校自体が非常に及び腰です。

まさに、今日来ることが出来なかった先生がいらっしゃるのも、この傾向の現れだと思います。ですから、政治家を学校に呼ぶのも、まずムリです。

-でも、政治家にインタビューすると、学校で現実の政治や議員の話をしないとダメだと皆さんおっしゃいます。(笑)。

原田氏
原田:一度だけ、ある私立高校で政治家を呼んで授業をさせてもらったことがあります。自民党と民主党(当時)の地方議員を1人ずつ招いて、生徒が質問をしまくるというものでした。質問を生徒ができるように事前に2回授業を行ってから、議員を招いた授業に臨みました。

理想としてはそういう授業がもっとできるようになればいいのですが、現状はその手前の段階です。教育と政治が離れすぎた結果、そもそも政治家が学校のことをあまりにもご存じない。1コマでもいいので、まず授業を見ていただきたいという思いもあります。

実は僕のところにも、「主権者教育の現場を見に行きたい」という政治家からの問い合わせが結構あります。でも、それを学校側に伝えると「ちょっと政治家の視察はリスクがあるから、ご遠慮願いたい…」となってしまいます。

渡辺:保護者から何か言われる可能性もありますからね…。

―先生方の間に、政治家を巻き込むことが学習の上で良い材料になるという認識はあるのでしょうか?

黒崎:メディアを通したものではない、リアルな姿を見てもらう必要があります。やはり、政治家の熱意や切実感を生徒たちに見せることが「不信感」を払拭することにつながると思います。

西田:政治について批判的な眼差しを持つというのは基本的なスタンスであるべきです。それが政治史の教えではないでしょうか。政治家に「有権者は常にチェックしているんだ」と常に緊張感を与えることができる、そういう意味での「不信感」は根幹にあるべきです。

原田:ただ、やはりメディアを通した情報だけで「なんか政治家、お金の問題ばっかりだよね」みたいなところで止まっている部分も大きいと感じています。

渡辺:自治体の首長であっても学校に呼ぶのは、難しいと思います。

西田:たとえば東京から近い政令指定市の千葉市を例に挙げると、市の広報広聴事業のなかに市長の出前講座というものがあります。一定の人数が集まっている場に呼ばれたら出席を検討するというものです。ですから自治体にもよりますが、首長が自ら出て行くのは微妙ですが、学校から声をかければ可能性はあるのではないでしょうか。

原田:せめて、政治家が身分を生徒に伝えない状態でも良いので、後ろのほうで授業を見学できるような環境は整えていかないといけません。

—つい先日も、自民党が公式サイトに「学校教育における政治的中立性についての実態調査」という投稿フォームを設置し、”密告”の奨励ではないのかという非難を浴びました。神奈川県では、県警が「投票率の高さの理由が知りたい」と高校に電話をかけていたことも、異例なこととして報じられましたね。

西田:政治はいざとなったら、軽々と教育にプレッシャーをかけるということがよくわかります。しかし学校の現場の先生方がそれに対抗していくのはとても難しい。電話をかけて「今から見に行くんで、よろしくお願いします」というだけでも現場には十分なプレッシャーがかかりますよ。教育と政治の昭和史を紐解いてみても、たしかに教員が家庭訪問で政治活動をした事例があったり、いろいろややこしいのも事実です。ただし、今日の座談会にも、急遽管理職から参加を拒否された先生がいらっしゃったり、政治教育は「ややこしい」と思われてしまっているだけに、擁護する具体的な仕組みが必要です。幾つかの、直接的な禁止事項を定め、それ以外は原則として、教育現場に委ねる仕組みづくりが必須です。

原田:あの投稿フォームを作った方々は「いいことをやっている」と思っているのではないでしょうか。「真っ当なことやっているのであれば、何もプレッシャーに感じることはないだろう」と。ですから、批判を受けた理由も分かっていないのかもしれません。

西田:保守系議員の中には、”学校現場を日教組が牛耳っている”という言説を信じている人も結構いるのではないかと思います。

原田:結局、保護者やマスコミ、周囲の大人たちが自分が受けていた頃の知識で教育を語ってしまいますからね。議論に参加するためには、僕たち自身も常に情報をアップデートしていかなければいけません。

■授業でマニフェストが使えない

—原田さんの模擬授業を見せていただいた時に、架空の候補者のマニフェストを作成し、教材として使っていらっしゃいましたね。実際のマニフェストや、特に自分が住んでいる自治体のイシューを扱うことができれば、生徒たちも”自分事”として考えられるのではないでしょうか。

模擬授業を行う原田氏
西田:選挙期間中の場合は特に公職選挙法に抵触してしまう可能性があります。細かなガイドラインは自治体ごと、教育委員会ごとの判断ということになるのでしょうか。

黒崎:神奈川県の場合、政治的中立性を担保するという観点から、マニフェストは使用できません。

渡辺:学校側が配るのはダメなんです(笑)。

原田:選挙期間外や、過去の資料など、グレーゾーンの中で上手く活用しているケースもありますが、公職選挙法の「文書図画の頒布」、つまり選挙活動とみなされてしまう可能性がありますからね。「全生徒に、全候補のものを等しく配ったのか?」という話になってしまいますね(笑)。新聞の記事も複数提示するなど、“中立性”への配慮が求められます。

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