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米軍が考える第三相殺戦略 - 岡崎研究所

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、8月16日付同紙掲載のコラムにて、米国防総省は、ロシアと中国の軍事能力の向上を相殺するため、新しいハイテク通常兵器の開発を進めている、と解説しています。要旨、次の通り。

最新通常兵器

 ワーク国防副長官は、「第三の相殺戦略」により、中ロに対する米国の技術的優位を確保する、と述べた(第一の相殺戦略は1950年代の戦術核、第二は1970年代の精密誘導通常兵器)。その前提は中ロの軍事能力の著しい向上である。ダンフォード統合参謀本部議長は、7月の公聴会で、ロシアは今や米国の存在にかかわる脅威であると述べ、中国については最近のランド研究所の報告が、その軍事能力の向上により、かつては戦えば米国が勝利すると考えられていたのが、いまや決定的な勝利はなく、双方に多大の損害が生じるだろうと述べている。

 ワーク国防副長官は、4月ブリュッセルでの演説で、新しいドクトリンと考えを打ち出す時が来たと述べ、米国が十分な技術的優位を保たなければ、通常戦力の抑止が弱まり、危機に際して不安定が増し、米国の将来の軍事作戦のコストが大幅に高まるだろう、と警告した。

 考えられている最新通常兵器とは、空中の無人機、海中の無人潜水艦、敵の戦闘管理ネットワークを無力にする陸上の最先端システムである。国防総省によれば、過去一年に、これまで極秘であった兵器計画の一部を明らかにしたのは中ロの軍事計画を攪乱するためで、将来の戦闘の有効性を維持するため、他の計画は秘匿しているとのことである。

 米政府当局者は、中ロの軍事的台頭を相殺するこれらの計画は、大国関係を不安定化させるのではなく、安定化させる効果を持つという。世界の不安定の現状に鑑み、この問題は大統領選挙で広く議論するのに値する。

出典:David Ignatius,‘America is no longer guaranteed military victory. These weapons could change that.’(Washington Post, August 16, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/america-is-no-longer-guaranteed-military-victory-these-weapons-could-change-that/2016/08/16/004af43e-63d2-11e6-be4e-23fc4d4d12b4_story.html?utm_term=.045585fcecef

 イグネイシャスは米国の「第三の相殺戦略」に深い関心を持ち、取材を続けており、去る2月にも国防副長官と統合参謀本部議長を取材した結果を報告しています(3月30日付本欄『米国のハイテクすぎる近未来戦の全容』http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6422参照)。

 戦後の「米国の平和(パックス・アメリカーナ)」を支えてきたのは米国の軍事的優位であり、それが中ロにより脅かされるに至った今、優位を再び取り戻そうというのが「第三の相殺戦略」です。「第三の相殺戦略」に含まれる最新兵器には、論説に列挙されたもののほかに、小型レールガン(注:電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)や現在より小型の高性能爆弾などがありす。

繰り返されるいたちごっこ

 技術の優位は脅かされる宿命にあります。後発国は先発国の技術を習得しようと懸命の努力を払います。最近はサイバー攻撃による技術の窃取もあり、技術の優位を維持できる期間が以前より短くなっています。米政府当局者は、「第三の相殺戦略」は大国関係を安定化させる効果を持つと言っているとのことですが、これは「第三の相殺戦略」により、米国が再び通常戦力での優位を確立する間のことであり、中ロの必死の努力でこの優位が再び脅かされることになれば、情勢は不安定化するでしょう。

 このようないたちごっこは繰り返されるでしょうが、米国が健全な技術革新の国家的基盤を維持する限り、米国が常に優位を保つことは可能であり、それは日本を含む西側世界にとって望ましいことです。
 

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