- 2016年09月25日 14:37
メディアが報じない「消費税のカラクリ」│斎藤貴男さんに聞いた(その1)
2/3消費税が「社会保障の財源になる」のは本当なのか
編集部 一方で、増税延期についての是非はともかく、増税自体や、まして消費税そのものに正面から反対する人は決して多くはないですよね。「大変だけどしょうがない」という感じで…もちろん、お話しいただいたような問題点が知られていないということもありますが、「社会保障の財源にするための増税」という認識が強いことも一つの理由ではないでしょうか。
斎藤 そこがまた厄介な点で。いわゆるリベラルといわれるような人でも、むしろ消費税増税には賛成だったりするんですよね。
僕自身は、仮に本当に全額社会保障に使われるとしても、今お話ししたような「弱い者いじめ」の税制はおかしいだろうと思うので反対ですが、もし仮にちゃんと実行されるのであれば──たとえばスウェーデンのような福祉国家を目指すから、税制もスウェーデンをマネするんだというのなら、それはそれで筋は通っていなくもないかな、とは思えます。それでも単純すぎるぐらいですけれど。
でも、税率だけはどんどん上がるのに、「スウェーデンのような高福祉国家を目指すんだ」なんて、政治家は誰も言わないでしょう?
編集部 たしかに、「スウェーデンは素晴らしい」という話はあっても、「日本もああするんだ」という話は聞いたことがないかも。
斎藤 数年前にも、読売新聞の一面に「いかにスウェーデンの福祉社会が素晴らしいか」という記事が載っていました。スウェーデンにおける消費税である「付加価値税」が非常に社会福祉に役立っており、高負担でも国民は納得している──という内容で、日本とヨーロッパ各国の消費税率を比較したグラフを示して、「それに比べて日本の税率はまだまだ低い」というんです。でも、別に政府は「スウェーデンのような社会福祉国家を目指す」なんて一言も言ってないんだから、インチキこの上ない記事ですよ。むしろ、どんどん社会保障は削られてアメリカ型の社会になっていっているのに、消費税の話をするときだけスウェーデンを持ち出すのはどう考えてもおかしいでしょう。それをいうなら、アメリカには合衆国レベルでの消費税は存在しないんですから。一見似たような税制はありますが、それは小売段階にしかかからない、しかも州単位の地方税です。
そもそも「社会保障の財源のために増税」という話にも、カラクリがあるんです。たしかに、消費税引き上げを決めた2012年の三党合意の時点では、「増税分は全額社会保障に充てる」という附則が、税制改正法に明記されていました。ところが、5%から8%への増税後、初年度(2014年)の税収は5兆円増えたにもかかわらず、社会保障費は5000億円、つまり増えた税収の1割分だけしか増額されなかったんです。
編集部 「増税分は社会保障に充てる」んじゃなかったんですか?
斎藤 ところが、これも政府に言わせれば「増税分はきちんと全額社会保障に充てた」ことになる。というのは、増えた税収5兆円のうち5000億円を除いた残りはどこに行ったかというと、それまで別の財源を充てていた社会保障施策に使われたんですね。つまり、新しく増えた分はたしかに全額社会保障に使われたけれど、一方でこれまで社会保障に使われていた分の財源を、別の用途に使っちゃったわけです。たしかに、「増税分を社会保障に充てる」とは言ったけど、「今社会保障に充ててる財源はそのままで」とは一言も言ってないから、嘘ではない、という理屈ですね。
編集部 えーっ。詐欺! と言いたくなります。
斎藤 今だって、10%への増税延期で低年金・無年金の人たちへの救済措置が先送りになるとか言われていますけど、本来なら8%に増税した時点で、それくらいどうにかするのが当たり前でしょう。もともと社会福祉に使っていた分を他に回したからいけないのであって、「年金生活者の生活」を口実にさらに増税しようというのはひどい話ですよ。
こんな与太話に騙される国民もどうかと思うし、政府の言い分をそのまま伝えたマスコミに至ってはもう、犯罪だと思いますね。ここまでお話ししてきたような話は、消費税の「イロハのイ」みたいなものなんだけど、それさえもまったく報じないんだから。



