記事

ジョブズ逝く

日本企業のカンボジア視察の同行や、地方有力者に潰されそうだったNGOの救援や、カンボジア政府との色々な折衝やらでバタバタしていまして、しばらくブログを更新できませんでした。



このブログの更新が滞った時には、「後藤はきっとまた、人のためになる何か良い事をやっているんだろうな。」くらいに思って頂けると助かりますです。はい(笑)。

そんなバタバタの中、AppleCEOだったスティーブ・ジョブズ氏の訃報を目にし、私なりに思う所がありましたので少し書かせて頂きたいと思います。

彼の業績は、私なんぞが語るまでも無く強烈に偉大なものです。「コンピュータをすべての人のものに」という彼の思想を基に、昔は一部の人にしか仕えなかったコンピュータにGUIという概念を導入して本当に全ての人がコンピュータを使える様にしてしまいました

その後も、完成度と利便性の高い製品を次々と出して、世界中の人たちのライフスタイルと世の中の仕組みを大きく変えてしまいました。彼はどこをどう取っても誰もが認めざるを得ない偉人で、70年代から連綿と続く情報・デジタル革命の寵児でありカリスマであり、更には最も偉大な起業家で企業家だと思います。

毎日、彼の名前が出ない日は無かったかと思います。



実は私はApple製品の積極的なユーザーではありませんが、以前から彼の話題や言動を聞くにつけ、色々なインスピレーションを頂いていました。よくよく考えてみると、私の考え方に少なからぬ影響を与えてくれていた人物だったんだなと、今頃になって気が付きました。

随分前の事ですが、彼の言動を眺めていて、彼には日本的な所とアメリカ的な所が混在している事に気が付いて非常に興味を持ちました。

例えば…「ジョブズは全部他人の考えたものを持ってきて真似するだけだ」とか、「Apple製品はモノマネ製品だ」という人が結構います。「Appleは日本企業みたいだ」という人もかなりいますが、そんな事は本質には全く関係の無い、表面だけのどうでもいい事です。

最も重要な事は、誰かが最初に考えたものであっても、それを組み合わせたり更に改良したりしてレベルの高い製品作りが出来て、しかも多くの人に喜ばれて世界中で使われている、という事実です。

これは多くの日本製品にも共通する事で、例えば自動車や家電なども日本企業発祥のものではありませんが、世界中で愛され、市場を席巻しています(最近はかなり危ういですが)。



私は日本でコンサル経験が長く、新製品の企画や新規事業の立ち上げやら新しいビジネスモデルの構築などを多く手掛けていたので良く分かるのですが、全くの新しいものというのは滅多に無く、世の中の多くの事物は、様々なものを組み合わせ、創意工夫して高いレベルのものにする、という作業の繰り返しです。これは日本人の得意技でお家芸みたいなもので、この点で言えばジョブズは極めて日本的です。

なお、彼&Appleが多くの日本企業より優れている点を挙げますと、Apple製品は日本企業よりもデザインと使い勝手が洗練されている、という所でしょうか。



シンプルで美しいデザイン、説明書を見なくても直感で使える、遊び心があちこちに散りばめられている、というのがApple製品の最大の特徴ですが、この、『デザインをシンプルかつおしゃれに』『使い勝手を簡素かつ高機能にする』『使っていて楽しい、飽きない』という事を全て満たすのは、私みたいな企画系のコンサルの目から見ますと、これはもう途方も無い大変な作業なのです

これを高い次元で、しかも次々と完成させるジョブズには、驚きを通り越して神懸かっているとしか言えず、思わず畏敬の念すら持ってしまいます。

もちろん、そのジョブズの考えを実現させるAppleの技術力に凄まじいものがある事は言うまでもありません。

何事もそうですが、物事を複雑にしたり難しくするのは馬鹿でも出来ます。むしろ、程度の低い人ほど何でも話を難しくして偉そうにしますよね(笑)。

一方、アメリカ的な点を挙げますと、

Appleは桁違いに高収益を上げる大企業です。保有資産も相当で財務的にも大変豊かなのですが、すぐにお金にならない基礎研究にはほとんど投資しません。

私は以前に外資系の金融機関に勤めていた関係で、Appleの株主総会を見たり、ウォールストリートでの評判を見聞きしていたのでよく分かるのですが、ジョブズとApple社は株主価値を上げる事に大変力を入れていましたね。費用は極力掛けずに最大利益を追求する。アメリカ企業の中でも少し極端な方ですが、これはアメリカの企業としては極めて正しい姿勢です。

以前Apple社は、創業者であるジョブズを追い出し、その後潰れかかった際に株主の圧力でジョブズを再度迎え入れたという経緯がありますので、株価には敏感になってしまったのかもしれません。

もうひとつアメリカ的な点を挙げますと、

ジョブスは取引相手の弱みを見つけると、容赦無く攻めて自社に有利な条件を獲得します。

これも有名な話で、アメリカ人以上にアメリカ的だと言われています。
ジョブスやApple社に日本的&アメリカ的な両方の特徴があるのも興味深い所なのですが、ジョブス本人のビジネスマンとしての能力にも驚異的なものがあり、素直に尊敬し、人として憧れます。
ジョブスのデザインセンス、徹底的なこだわりリーダーシップ、人を引き付ける魅力、倒産寸前だったAppleをライバルのMicrosoftから資金を引き出して立て直したという超絶的な交渉能力(これには世界中が驚きました)、誰もが不可能だと言っていた音楽のネット販売を、抵抗する音楽業界をまとめて踏み切ったという行動力、やる事なす事全てが人間離れしていますが、ビジネスマンとして、僭越を承知で言わせてもらえれば、男として生まれて来たからには少しでも彼に近づきたいと思っていたりするのです。

彼は長年に渡り、ガンとの壮絶な闘いを続けていました。最後の最後までビジネスの前線に立ちながら…。

その苦痛は想像を絶するものがあります。本当に苦しかったかと思います。心から御冥福をお祈り致します。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。