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地域再生のカギは『よそ者』 - 安部尚登

私は東京の西部で生まれ、育ちました。中学生のある日、都心から引っ越してきた転校生から、この中学校のヤツはみんな『俺』の発音がおかしい、と言われました。彼の発音する『オレ』と私たちの発音する『オレ』は、確かにアクセントの違いがありました。テレビやラジオを注意深く聞いていると、彼と同じアクセントで『オレ』と言っています。生まれて初めて、自分たちの中にある『方言』に気が付いた瞬間でした。

 大学生になって、高校生まで他の都道府県で暮らしていた友人が増えました。中国地方のある県出身の友人とファミリーレストランに入った時、普段は朗らかな友人の顔が妙に緊張しているのでどうしたのかと尋ねると、実はファミリーレストランという場所に今日初めて来たのだ、と打ち明けてくれました。家の近くにはなかったし、大阪に行ったときに見たことはあるけど、中には入らなかった、と。とても驚きました。

 先日、自分たちの住む街を、これからどんな街にしたいかを話し合う集まりに参加しました。テーマについて話し合う前段階として、今、この街がどんな特徴を持っているかを出し合ったのですが、私のような、大人になってからこの街にやってきた人たちがどんどん特徴を語るのに比べて、ずっとこの街に住んでいる、いわゆる地元の人ほど、具体的な特徴が出せずにいました。

 『オレ』のアクセントに地域性があることに気付かなかったように、ファミリーレストランが日本中どこにでもあるわけではないことを知らなかったように、地元から出たことのない人は、それが当たり前のことだから、地元の特徴に気付きにくい。『よそ』に行ったことがあれば、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではないことに気付き、『よそ』にはない地元らしさに気付く事もできます。

 北海道各地で、地域再生のための試みがなされています。「新しい○○町はどうあるべきか、その未来像をみんなで考えよう」というようなスローガンもよく見かけます。しかしその『みんな』が、昔からずっとそこに住んでいる住民を差しているなら、新しい街の姿をイメージするのは、甚だ困難なのではないでしょうか。何が『新しい』のか、何が『古い』のか、『○○町らしさ』とは何か、ずっとその町に住んでいるということはつまり、それを判断する基準、比較対象を持たないということですから。では一体誰が、地域再生の担い手になり得るのか。

 それは、他地域からその地域に移り住んできた人です。特に、転勤など自らの意志と無関係にやってきたのではなく、その地域が好きで、住みたいと思って移住してきた人は、他地域にはない、その地域の魅力を知っています。知っているからこそ、その地域を選んでやってきたのです。本気で地域を新しく再生したいなら、彼らの意見を真っ先に聞くべきです。一方で、新しく移り住んできた人たちは地域の事情には疎いので、たとえば移住後1年未満の人、移住後1年以上5年以下の人、移住後10年以上経過している人など、移住時期の異なる人たちから意見を求めれば、以前から住んでいる人と新しく来た人の意識のギャップを埋めることがより容易にできるでしょう。

 好んでその地域にやってきた人たちは、地域への参加意識も高いはずです。その『よそ者』たちに、まさに『よそ者』でなくては果たせない役割を与えるなら、彼らは喜んで地域のために働くでしょう。そして地域のために働く『よそ者』の姿は、長くその地域に住んでいる人たちにも、改めて郷土愛を思い起こさせ、真の意味で地域が活性化するに違いありません。

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